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第1回竹製品・蒸篭職人
ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。(取材・編集部/月1回掲載)
今も手作りを続ける老舗
中華料理には欠かせない蒸篭。香港の著名レストランなどで使う蒸篭を作っているのが、西営盤にある竹製品専門店「徳昌森記」だ。同店は広州市で創業してから100年を超える。香港に本拠地を移してからも60年以上の歴史を持つ。
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西営盤にある林さんの店は工場も兼ねている。蒸篭のほか、竹ざる、はし、しゃもじなども販売しており、蒸篭は小さなものから大きなものまでさまざまなサイズがあるが、中~大サイズはふたは別売りとなる。よく売れるのは20ドルくらいのものだそう
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現在、香港で流通する竹製品はほとんどが中国本土産で、香港で手作りできる職人は今ではほとんどいないという。徳昌森記は4代目店主である林鉅森さんとその息子の植鴻さん、応鴻さんが今も手作りを続ける業界では希少な存在だ。
兄弟2人が蒸篭作りを始めたのは十代前半。物心ついたころから父親の仕事を見て育ち、家業を継ぐことに抵抗はなかったそうだ。父も強要はしなかったが、自然に3人で仕事をこなすようになっていった。
徳昌森記では手に乗るほどの小さなものから、人の胴回りをはるかに超えるものなど、あらゆる蒸篭を作る。蒸篭は「丹竹」という中国産の天然素材を使うため材料費は日々、上昇している。大きいサイズの蒸篭を作るのには丈が必要とされるが、長く成長した竹は手に入りにくい。幸い、商売は上向き。中国人の海外移住が増える中、華僑が住む欧米への輸出品は年々増えているのだそう。しかも昨今の健康ブームが追い風になっているという。
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同店の製品は手作業ならではの繊細な仕上がりだ
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小さめの蒸篭なら1個45分くらいで出来上がる
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「海外に中華料理店が増えて輸出も増えた。でもそれ以上に欧米人のナチュラル志向が影響している。グリルやフライを避け、蒸し物が人気らしい」
また1980年代初めには蒸篭の意外な使い道で在庫が一掃するほどの売り上げを記録した。その用途とは、チョコレートなどの西洋菓子のパッケージ。米の有名デパート「Macy's」もその取引先の一つ。小さな蒸篭に入ったスイーツはその後、各地で流行し、バレンタインデーにはおなじみのギフトとして定着した。
「僕らのどっちが5代目なのかって? それを聞かれると困るなあ」と笑う兄の植鴻さん。取材には弟の応鴻さんが率先して対応してくれたので、跡継ぎなのかと聞けばこの返事。2人の間では役割分担があるわけではなく、自称・話し下手の兄が弟に花を持たせたようだ。そんな息子たちと一緒に手作業を進める鉅森さんの笑顔が印象的だった。
【徳昌森記 蒸籠進出口】
(Tuk Chong Sum Kee Bamboo Steamer Co.)
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所在地:香港西営盤西辺街12号 電話:2548-8201 |