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最新号の内容 -20130125 No:1375
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心も体も暖まろう
冬の風物詩・火鍋


 

 亜熱帯気候に属する香港の短い冬を代表する味覚のひとつが中華風しゃぶしゃぶ「火鍋」だ。ひとくちに火鍋と言っても、その種類はさまざまで広い中国各地の特徴が表れている。今回はグルメの都・香港で堪能できる各地の火鍋を紹介する。鍋を囲むと心も体も暖まるのは万国共通。今夜は仲間や家族と火鍋を食べて盛り上がろう。 
(文と一部撮影•森沢雅子/一部写真・馮耀威、Elite Concepts)

 


注文のコツを覚えてトライ

 香港の冬の名物で「火鍋」と呼ばれる中華式鍋は、広東語の俗語で「打邊爐」とも呼ばれ、本来は「いろりの周りでみんなでしゃぶしゃぶを食べる」という意味がある。 

 広大な中国だけあって火鍋と言っても、広東式、北京式、四川式、台湾式と種類はさまざま。香港の主流は広東式火鍋で、2つの種類のダシが楽しめるように鍋が2つに仕切られた「鴛鴦鍋」。ベースとなるスープは「湯底」と呼ばれ、「清湯」(チキンスープ)などのあっさり風味と「沙●湯」(サテー味辛味スープ)などの辛いスープの組み合わせがある。また、最近では漢方薬材を入れた「薬膳スープ」も人気という。

大勢集まればたくさんの種類の具材が楽しめる

 注文の仕方はまず初めに「湯底(スープ)」を決め、その後、具を用紙に記入して店員に渡す。最近では各自で具を取りに行くビュッフェスタイルや時間制食べ放題の店も増えた。火鍋は具もかなりバラエティーに富んでいてダイナミックだ(主な具の種類は下表参照)。

 食べ方はスープが沸騰したら好みの具を入れる。牛肉などは各自が穴開きのお玉に入れ、しゃぶしゃぶと同じ要領で火を通して食べる。イカボールやギョーザ、内臓類は煮えているかどうか確認してから食べよう。
 

 

北京スタイルの老舗レストラン

  1961年創業の「泰豊楼」は香港ではめずらしい伝統的北京スタイルの火鍋店。長い煙突が付いた独特な鍋と炭火を使っていることもこだわりのポイントだ。この北京スタイルの鍋は中央にある煙突の中に炭を入れて燃料にし、上部に付いているふたを開閉して温度を調節するというもの。

火鍋には欠かせないたれの調合は自由に自分スタイルで 煙突が特徴的な伝統的北京スタイルの鍋


 スープは雪菜(高菜のような中国野菜の漬け物)と干しえびで軽くだしを取ったあっさりしたもので、あくまで具の味を引き立てるべくほとんど味がつけられていない、日本の水炊きのような感じだ。酢、醤油、紹興酒、南乳(豆腐を醗酵させた調味料)、ごまソースなど12種類の調味料と薬味を自分好みに調合するたれをつけて味わう。
 

スープはあくまであっさりと、具の持ち味を生かす


 具は肉類、きのこ、野菜、豆腐、ゆば、ギョーザ、肉団子などさまざまだが、やはり北京スタイルに羊肉は欠かせない。羊肉はたんぱく質、鉄分、カルシウムを豊富に含むため体を温め、冷え性や貧血に効果的といわれている。まさに寒い季節にはぴったりだ。
 

羊肉は寒い冬に体を暖めるのに最適

 火鍋と共にいただきたいのが「酸梅湯」という梅やサンザシで作られた甘酸っぱいジュース。消化を促進する働きもあるのでぜひ試そう。

 

 ■泰豊楼

広い店内は長い歴史と風格を感じさせる

所在地: 29-31 Chatham Road, Windsor Mansion, Tsim Sha Tsui, Kowloon
電話 : 2366-2494

 

 

火鍋の本場・四川のしびれる味

洗練されたモダンなインテリアは改まった会食にもぴったり

 

 スパイシー好きなら四川風火鍋はどうだろう? 湾仔のコスモポリタンホテル内にある「合江小鎮」は四川料理の店だが、この冬から期間限定の火鍋メニューが加わった。火鍋の発祥といわれる重慶のとにかく辛い火鍋に比べて「麻」と「辛」の絶妙なバランスと独特の香りを重視している成都の火鍋は四川の食文化の結晶とも言えるのだ。
 

四川省ならではの具材もそろっている。お得なセットメニュ−はうれしい2人用から


 自慢のスープは「四川藤椒」「大紅袍花山椒」「四川乾辣椒」など数種の四川特有の香辛料を入れて5時間煮込んだもの。辛いだけではない、しびれるような複雑な味は後を引くおいしさだ。四川省出身のシェフ趙氏が吟味した、ほかではなかなかお目にかかれない地元ならではの具もそろっている。大人数が基本の火鍋だが、2人用、4人用のセットメニューもあるので、少人数から楽しめるのもうれしい点だ。


■合江小鎮

所在地: 1/F., Cosmopolitan Hotel Hong Kong, 387-397 Queen's Road East, Hong Kong
電話 : 3167-7833





シーフードが自慢の鍋専門店
 

店員お薦めのスープの1つ「正斗豚骨鍋」


 旺角にあり、地元の人たちでにぎわう「正斗海鮮火鍋店」はその名の通りシーフードが自慢の店。看板メニューの魚介のほかに、米国産の上質牛肉、4つの味の練り物「四宝丸(牛肉、いか、さば、豚肉ボール)」など、具のバリエーションも豊富だ。
 

店内に設置された大きい水槽にはエビ、貝、シャコなど新鮮魚介がいっぱい 

  スープは四川麻辛鍋(四川風の辛いスープ)、香”‭}‬皮蛋鍋(香草とピータンのスープ)、羅宋鮮茄薯仔豚骨鍋(トマトとじゃがいも入り豚骨スープ)、海鮮蟹鍋、正斗魚湯鍋など、肉ベースから魚ベースまで取りそろえている。中でもお薦めスープの1つ「正斗豚骨鍋」は、豚骨を使ってじっくりだしを取ったしっかりした味わいだ。スープの中にはだいこん、にんじん、とうもろこしなど野菜が入っており、豚骨スープの味わいをさらに引き立てている。
 

海鮮火鍋では魚も試してみよう にんにく、ねぎ、ごまだれ、唐辛子などの薬味

 鍋の最後はめんやごはんでしめたい。うどんもいいが、ラーメン好きの香港人にならって公仔麺(インスタント麺)を注文するのが通。また店内に設けられた水槽には新鮮な魚介類が並んでおり、火鍋と共に刺し身など海鮮料理も注文できる。
 

米国産牛肉、四宝丸、野菜のセットなどの具材は注文用紙に記入してオーダーしよう

■正斗海鮮火鍋店

所在地: G/F., Hing Wha Commercial Bldg., 450-454 Shanghai Street, Kowloon
電話 : 2771-5711

 


 

火鍋の主な具

〈肉類〉
肥牛肉…ロース肉
西冷片…サーロイン
牛肝片…牛レバー
牛栢葉…牛の胃袋
〈練り物類〉
魚蛋…フィッシュボール
猪肉丸…ポークボール
〈魚介類〉
墨魚…コブシメ(大型のイカ)
吊片…スルメイカ
鮑魚…トコブシ
蝦片…エビ
象抜…ミルガイ
帯子…ホタテ
〈野菜〉
生菜…レタス
津菜…ハクサイ
唐生菜…中国レタス
白菜…チンゲンサイ
西洋菜…クレソン
〈めん類〉
烏冬麺…うどん
米粉…ビーフン
公仔麺…即席めん
 

 

九肚魚(ウナギ科の魚) 生腸(ガチョウの腸) 粉腸(ブタの腸) 生根(揚げボール)
獅子狗(ちくわ) 猪皮(ブタの皮) 冬菇(シイタケ) 魚頭(ウグイの頭)