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インタビュー① 株式会社宇治園 専務取締役 重村桜子さん
5月26〜27日に開催された「G7 伊勢志摩サミット」の7カ国首脳の宿泊部屋に、ワインボトルに入った高級日本茶「ボトリングティー(宇治園 ゴッタス デ 日本茶 エスペシアル 玉露)」を提供した、株式会社宇治園。明治2年創業の老舗茶舗であり、フードエキスポは今回が初出展だ。「ボトリングティという新しいカテゴリーを作りたいという思いと、新たな日本茶の愉しみ方を提供したいという思いから今回の商品の開発に至った」と語る、同社専務取締役 重村桜子氏。ペットボトルで気軽にお茶を飲める今、日本国内の茶の消費量は年々減少の一途を辿る。「茶葉を買い、急須で淹れるという作業が面倒と感じる人も少なくなく、敬遠され気味。急須で淹れるお茶は、香り高く深みのある味わいを愉しめるということを、世の中にもっと広げていきたい」。こうしたなか同社は、海外に目を向け、日本の「本物の味」を伝えていこうと試行錯誤を繰り返し、商品開発に3年かけた。「ボトリングティ」は、厳選された宇治玉露を使用、限りなく急須で淹れた状態と質を再現している。世界発信を前提としているため、常温保存可能で、年間通して保存がきく商品を作るという点が一番苦労したと重村氏は振り返る。「G7 伊勢志摩サミット」の主要人の各部屋に「ウェルカムドリンク」として置かせてもらうことが決まった時は、「感無量だった。日本のお茶を世界に発信する大きなきっかけと自信につながった」。
多様化が進むライフスタイルで、日本茶をワイングラスで飲むという新しい飲み方も提案。ラグジュアリーなシーンやギフトとして購入される方も増えているという。今回のフードエキスポの出展した感想を伺うと「香港市場は、関税の問題、多国籍の人々の多さ、さらに親日的な人が多く、親しみやすさが特に魅力的。ここに来て、日本茶のファンが多くいることを実感し、励みになった。関心をもってくれる企業が予想以上に多いこともうれしい」と、驚きと同時に手ごたえを感じている。高級日本茶を通した「ラグジュアリーな時間」を楽しめる空間を香港で提供していきたいと、今後の可能性に期待をかける。
インタビュー② 青森県県土整備部港湾空港課ロジスティックス推進グループマネージャー 主幹 屋崎雪絵さん
青森県総合流通プラットフォーム輸送サービス「A!Premium」は、2014年7月にできた青森県とヤマト運輸株式会社が締結した連携協定に基づく取り組み。輸送時間の短縮と鮮度・品質を保持した付加価値の高い物流を実現することで、国内外への流通拡大を目的としたものだ。最大の特徴は、「スピード輸送と保冷一貫輸送」。この輸送サービスにより、東北地域に限られる翌日午前配達エリアが、本州及び四国の全域と福岡県まで拡大、さらに株式会社ANA Cargoとの連携により、24時間運営されている沖縄国際物流ハブを活用し、香港、台湾へ最短翌日、シンガポール、マレーシアへは最短翌々日の配達が可能となった。今回フードエキスポに出展し、さらなる青森県の農林水産物の輸出拡大を狙う。
こうした取り組みのきっかけとなったのが5年前に起こった東日本大震災だった。東北エリアでは岩手、宮城、福島が特に甚大な被害を受け、東北の物流が全てストップしたが、陸奥湾は津波もなく被害がなかった。「青森の港を使うことで東北の復興を目指そう、と考えたのがきっかけだった」と、青森県県土整備部港湾空港課ロジスティックス推進グループマネージャー屋崎雪絵氏は話す。日本だけでなく海外でも「A!Premium」という仕組みを使って沖縄のハブを使って香港など近いアジア各国に青森県の素晴らしい農林水産物を知ってもらいたいという思いで今回出展した。「フードエキスポに参加したことで、現地の人たちと話をし、情報交換をし、新しい発見が多く大変勉強になった。(青森で)聞いているだけでなく、実際に現地に出向くことの大切さを感じている。青森に戻って今回のエキスポの素晴らしさを伝えることで、さらに海外に出展を考える企業が増えてくれたらと思う。良い商品、農産物を作っても外に発信できていない企業は多くある。「A!Premium」をきっかけに海外に目を向け、青森のいいものをもっと世の中にだしていく動きを広げていきたい」。現在契約している企業はおよそ100社だが、今回のエキスポでの商談で前向きに検討する企業も増加、さらなる輸出拡大を狙う。
インタビュー③ 千古乃岩酒造株式会社 代表取締役 中島大蔵さん
千古乃岩酒造会社は、明治42年創業。現在は4代目の大蔵さんが酒造りをしている。 岐阜県の立山連峰を水源とする地下45メートルの地下水が長い間地中に蓄えられており、日本酒製造に最適の硬度が0・4以下の超軟水によって作られている。最大の特徴は、日本の棚田100選に選ばれている「坂折棚田米」の減農薬米を使用していること。ここで造る「純米吟醸酒」は口当たりがスッキリとし、飲みやすいという点も人気の一つ。今回は2回目の出展となる。取材時も商談が絶えない様子だった。同社代表取締役 中島大蔵氏は「食中にアルコールを楽しむ機会がまだ多くない香港だが、今回の出展でも地元バイヤーらとの商談の感触が良く、自信がある。中華と相性の良い銘柄も多くあるので、ワイン感覚で楽しめられる。日本の文化、伝統を守りつつ、新しい日本酒の飲み方を提案していきたい」と語る。人気・競争率ともに高い香港の飲食市場に、自信をもって参入していく。
(このシリーズは月1回掲載します)
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。 |
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