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香港労務② 2015年5月より香港の最低賃金は、時給32・5香港ドルとなり2011年5月に法定最低工資制度が制定された時給28香港ドルから4・5ドルアップとなった。一般的には月給制だが、営業職やサービス業、金融・不動産業では基本給+コミッション制を取り入れている企業が多く見受けられる。香港では「ダブルペイ」と呼ばれる年末手当の慣習があり、旧暦の正月前後に給与の1カ月分に相当する一時金を支給する企業が多い。ダブルペイはボーナスとは異なり雇用契約上で支給保証を明記した場合は、香港の雇用条例に従い支給義務が生じるため留意が必要である。
2015年第一四半期の男女の学歴別給与中間値は、男性のDegree(大卒学士)の3万香港ドルに対し女性は2万2800香港ドル、男性のPost - Secondary(専門学校卒・副学士)1万7000香港ドルに対し、女性は1万4000香港ドルであった。香港の義務教育は1978年から施行されており、2009年以前は、初等教育6年、前期中等教育3年、後期中等課程2年または4年、大学3年であったが、2009年度から「新教育制度」が実施された。義務教育の9年間に変更はないが、後期中等課程3年、大学を4年とする「六三三四制」となり、2012年9月に最初の「4年生大学」の入学者が誕生した。(資料¨香港政府統計処)
香港政府労工処は、2015年9月1日から中高年失業者の就労促進のため「中高年就業計画制度」の対象範囲を拡大した。同制度を利用し従業員を採用した場合、従業員一人に最大で3〜6カ月間、月3000香港ドルの研修手当が政府より雇用者に支給される。今までの制度は、労働時間が週に30時間以上の正社員が対象だったが、今後は週に18時間以上のパートタイムの従業員も対象となった。また、同制度の利用を促すため、中高年向けの就職フェアも開催予定である。 2015年第一四半期は、男性全体の平均が1万6000香港ドル、女性は1万1000香港ドルであったのに対して大卒者の男性平均は3万香港ドル、女性は2万2800香港ドルと全体の平均と大差が出ている。 2014年12月末の大学新卒者平均年収は21万香港ドルとなり2008年同時期より2万9000香港ドル上昇している。(図表参照)
傷病休暇(Sick Leave) Sick Leaveは、香港の雇用条例で定められている傷病手当(Sickness Allowance)とは異なるため各企業が任意で設定でき、制度の有無、および休暇日数を裁量で決めることが可能である。同制度を社内規定として取り入れるにあたり、ほとんどの企業が「登録医の診断証明書」の提出を求めているが、診断証明書に替わる領収書だけで認める企業も一部ある。今も多くの企業が同制度を維持・継続しているが、最近では、乱用防止のために、年次有給休暇日数を増やすことで同制度を廃止した企業もある。一方で同制度がない事を理由に求人への応募を見送る候補者も見受けられる。
傷病手当(Sickness Allowance) 有給傷病手当は、継続的に雇用されている雇用者の権利として雇用条例で定められている。雇用開始からの12カ月は1カ月間雇用されるごとに2日、13カ月目以降は月ごとに4日の割合で積立てられ、最高で120日まで累積される。 受給可能な条件
①雇用者が傷病手当を受託する権利日数を有していること 受給不可能な条件
①正当な理由なく、被雇用者が指定された医師による治療を拒否した場合、あるいは医師の指示に従わない場合(雇用主が医療機関を認定している場合でも、その機関が専門分野以外の場合は、登録医、登録中医、登録歯科医の治療の選択が可能である) 傷病手当の支給、雇用の保護、違反、罰則 傷病手当は、休暇初日以前の12カ月間、または休暇当日の平均日給額の5分の4に相当する額とする。傷病手当の支給は、通常の賃金支払日と定められている。 有給傷病休暇中の被雇用者の解雇は、不正行為などによる懲戒解雇の場合を除き禁じられている。 傷病手当の支払い義務を怠った雇用者は、最高で5万香港ドルの罰金を命ぜられる。 傷病日の区分
有給傷病休暇は、第一区分の36日までと第二区分の84日までが第一区分に累積され、合計で120日間が最高である。 傷病日記録 雇用者は以下を記録、保管しなければならない。
①被雇用者の雇用開始日・雇用契約解除日 雇用者は、被雇用者が有給傷病休暇を終え職場復帰後7日以内に、傷病日記録へ当該被雇用者の署名を受領しなければならない。また、被雇用者は傷病日記録を確認する権利を有する。 (このシリーズは月1回掲載します)
関根慎介(せきね・しんすけ) 日本大学法学部卒業後、専門商社に入社。2005年、香港系人材紹介会社日本支社へ転職し、2006年、香港本社へ転籍。2011年より現職。
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