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ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人 たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。
第16回 乾物問屋
上環にある乾物街。フカヒレ、アワビ、ホタテ、ナマコなどさまざまな干物がところ狭しと店頭に並べられている。香港特区政府が観光客向けにわざわざ標識を作るほど有名なところだ。この小売店の元卸の最大手の1つが創業1909年という1世紀以上の歴史を持つ「兆豊行」だ。同社の関定忠セールスマネジャーに乾物業界について語ってもらった。 創業時は漢方薬なども扱っていたが、1949年の中華人民共和国の成立に伴い交易が中断。海産物の干物を中心としたビジネスにウェートを置いて事業を展開してきた。日本産の乾物は1960年代から扱っている。「日本産の商品で言いますと、アワビ、ホタテ、カキ、昆布などです」
貿易の拠点を担う香港には世界中の海鮮干物が入ってくるが、イベリコハムならスペイン、高麗人参なら韓国というように、海鮮の干物は日本というのが世界の印象。日本で生産される干しアワビの25%を同社が扱うほどで、世界の干しアワビの価格は香港で決まるといっても過言ではない。世界と日本産の違いについて聞いてみると「日本の天然モノは魚介類の生息環境が良いため、さまざまな面で質が高い」と市場における日本産の評価の高さを語る。
元卸ということで基本的には上環などにある乾物の店が顧客だ。「とにかく信頼関係の構築が一番大事です。小売店も2世代目、3世代目となってきましたが、それだけは変わりません。競合卸と同じ価格になった場合、信頼関係があれば私たちを選んでくれますから」と話す。信頼関係の構築の秘訣とは「レストランに行ったり、麻雀を一緒にしたりすることですね。店先では話してくれないことも、お酒が入ると話してくれるのですよ。他社の情報を含めてね(笑)」。それって日本的ですね?と話を振ると「そうですよ。まあ、東アジアの風習がそうなんだと思います」と笑った。信頼関係が強固なため、商品の売買関係のみならず、小売店側で問題が発生したときの相談相手になるそうだ。 今は円安だが、輸入に大きな影響を与える為替について聞いてみた。「商品によっても対応がわかります。例えば、乾燥アワビはワインのように何年も寝かしているほうがいいのです。ですから、まずは倉庫に長く置いています。また、いつでも供給する態勢を整えてないといけないので在庫を大量に確保しています。その都度、輸入するということはないので為替の影響は少ないのです。逆にホタテは長期保存は避けたい商品なので輸入頻度が増えますから、アワビよりは為替の影響は出ます」 商品は乾物だから気を使うのは湿気だ。「ご存じのように香港は湿度が高いですから、商品が湿気を含んでいないか、カビが生えていないかどうかなどの確認を頻繁に行います。そして、コンディションが良くない兆候があればすぐに天日に干します。日光は殺菌作用もありますから、このやり方が一番ですね」
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