現代人の多くが腰痛を経験したことがあると思います。ギックリ腰のような急性かつ激しい痛みを伴うものから鈍痛やうずくような痛みなど、さまざまなタイプがあります。ほとんどのケースでは整形外科などに行き、レントゲンを撮ってみたものの問題なしと診断され、痛み止めの薬を処方してもらい、1週間から2週間様子を見て、それでも痛みがひかない場合は理学療法を始め電気をかけられる、というパターンではないでしょうか。
☆痛む場所とは違うところが原因
ここでひとつ考えてみたいことは、痛みがある場所に本当に原因があるのでしょうか? 当然、滑って転んでお尻を打って以来腰が痛いというケースならば原因は腰にある可能性は高いです。しかし、毎日のデスクワークによってだんだんと少しずつ痛くなってきたというケースでは、痛みを感じている場所とは違うところに原因があるケースが多々あります。
最も多く問題が見られる個所としては、背中の上部と下部頸椎。頚部から背部への移行部です。多くの人がここに問題を持つ原因としては、デスクワークをはじめとして、最近ではスマートフォンやタブレットを使用することにより問題を持ち始める年齢が早くなってきています。スマートフォンを見るために下を向いている状態では下部頚椎から背中の上部にかけて背骨が後湾することになります。これを毎日長時間続けることによって少しずつ背骨の前湾の可動域が知らず知らずのうちに少なくなって、猫背の状態になっていきます。
☆気付かぬうちに進む変形
では、下部頚椎と背中の上部が前湾できなくなることがなぜ腰痛につながるかを説明します。本来、人間は正面を見るとき、頚部は前湾しています。逆に頚部を後湾させたまま(下を向いた状態で固定したまま)正面を見ようとすると、どうしなければいけないでしょうか? 腰部を通常より反らして上体を起こしてくる以外は方法がありません。
これは少しずつ年月をかけて変形してくるものですので自分では気付きません。自分では気付かないうちにずっと腰部を反らして生活することになります。ずっと反らせているということは、背骨の後部または椎間板の後部に継続的に異常な圧力をかけていることになります。それにより脊椎間狭窄症やヘルニアが出てきます。
これは自分自身が体のバランスを崩しているにもかかわらず、それに気付くことができなくなっていることが問題です。このような状態にならないようにするには、常に自分で自分の体の状態を認識する感覚を失わないよう努力することが必要になってきます。それにはストレッチや体操など、適度な運動を継続して行うことが大切といえるでしょう。
(この連載は2カ月に1回掲載)
ドクター青(あお):D.C.(ドクターオブカイロプラクティック)パーマー・カイロプラクティック医科大学卒業。米国政府公認カイロプラクティックドクター、香港特区政府カイロプラクティックドクター免許取得。「Millennium Chiropractic Centre」勤務