大閘蟹/劏房

大閘蟹
秋の味覚の代表格、上海ガニ(大閘蟹)だが、昨年の「毒ガニ」問題で安全性が疑問視されている。しかも台湾産にも問題が…

ショーウィンドウに上海ガニがずらりと並ぶ光景は香港の秋の風物詩だが、今年は市場に届くのが遅れている

 いよいよ上海ガニのシーズンが到来した。上海ガニの濃厚なみそは冬が近づくほどにうま味を増す。主な産地は中国本土の江蘇省で、中でも太湖産は有名だ。

 しかし昨年、食物環境衛生署が行ったサンプル検査で、この太湖産のカニの一部検体から発がん性物質のダイオキシンが見つかるというショッキングなニュースが流れた。問題のサンプルは呉江万頃太湖蟹養殖有限公司と江蘇太湖水産有限公司から提供されたカニで、前者のダイオキシン含有量は基準値の6倍、後者は倍近かった。

 香港の政府食物安全中心(CFS)は急きょ、問題となった2つの養殖場からの輸入および香港での販売を一時的に禁止する措置を取った。香港の輸入販売業者15社はいずれもこの2つの養殖場のカニを扱っているため、香港市場に供給されるカニの7割から8割を占めた。CFSは、太湖は面積が非常に広く、今回のサンプルの中には合格品もあり、太湖産のカニすべてに問題があるわけではないと強調したが、高級食材、上海ガニのイメージダウンは免れなかった。

 この問題を受け、今年は中国当局が輸出審査基準を引き締めているため、香港での流通は例年よりも遅れている。しかし、本来ならばまだ市場に出回るはずのない本土産の上海ガニが、一部商店で太湖産と銘打ってすでに売られていた。香港食物環境衛生署が販売を停止するよう店側に通達したが、これらのカニは並行輸入品とみられ、正規の検疫を経ていない可能性が高い。

 さらに今度は、台湾から輸入された上海ガニのサンプルから基準値を超える発がん性物質などが検出された。中にはダイオキシンとポリ塩化ビフェニルの100グラム当たりの総含有量が9・86ピコグラムに達しているサンプルもあり、CFSが定める安全基準の100グラム当たり6・5ピコグラムを大幅に上回っていた。

 問題のサンプルは台湾の私営の水産養殖場「桃園市中أc区上嶺段536号溜池(B—29)」で養殖されており、ここは未登記の違法養殖場だった。香港には計150キロが輸入されていたが、すぐに販売を停止しており、市場には流通していないという。

劏房
狭い部屋に家族でひしめくように暮らす。世界でも一二を争うほど住宅事情の悪い香港だが、改善の兆しが見え始めた。

劏房は繁華街に多く、狭い割に家賃が高い

 今年9月、特区政府と香港社会服務連会(社連)は清潔で適切な価格の良心的な「劏房」を供給する構想「社会房屋共享計画」を発表した。積年の課題だった住宅事情の改善に、政府がやっと本腰を入れ始めた。

 「劏房」は単一のフラットを複数の部屋に小分けして賃貸している集合住宅の総称。人口が密集する香港では、公共住宅が不足しており、このような極狭アパートに家族数人が暮らしている世帯が少なくない。「劏房」はいわば香港の劣悪な住環境の代名詞であり、良心的な価格で適正な広さを提供する「劏房」はこれまでごく一部しかなかった。

 劏房は一般的な住居よりも狭い上に空気が滞留し、加えて家電から発生する熱がこもるため室内が高温になりがちだ。その上、家主が電気代に30%程度を上乗せして徴収していることが多く、政府の光熱費補助の恩恵が届かない家庭も多い。ある住人は「子供は暑さで集中力を欠き、寝付けず勉強にも影響が出ている。電気代を節約するため、クーラーはつけずモールで涼んでいる」と話す。

 「社会房屋共享計画」ではまず、試行期間3年、空室となっている住宅物件500フラットを集めて1000世帯に住居を供給することを目標にしている。公共住宅の入居待ちが3年を越えていたり、現在の住居が家族構成などに対して不適当だったり、低所得で早急に住居が必要な世帯が対象。家賃は公共住宅並みか公的な家賃援助を参考として入居者の収入の25%を超えず、賃貸期間は2年以上、1人当たりの平均面積は7平方メートル以上とする。現在のところデベロッパーをはじめとする物件オーナー26名が計332フラットを提供。年内に少なくとも34フラットを放出できる見込みだ。

 香港では5年前から民間企業が老朽化した建物などを改装し、3年を期限に母子家庭に適正価格で提供して自立を助ける「光房計画」が行われ、賛同する家主が徐々に増えている。「社会房屋共享計画」ではこのような民間レベルの取り組みも推し進め、協力していく予定だ。

(この連載は月1回掲載)

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