海外先行販売で香港にレア商品


経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

ぺんてる(香港)有限公司
董事長 石村晴之さん

【プロフィール】
1973年生まれ、京都府出身。立命館大学 産業社会学部卒後、98年ぺんてる株式会社入社。中国本土、英国、香港の各現地法人を計16年間歴任。工場管理、経理と管理系での海外業務を勤めながら現場業務経験を積み、2013年からぺんてる香港現地法人の総経理・董事長。趣味は休日にトレイルなどのトレッキング。好きな言葉は「今を生きる」「社業を通じて国家社会への貢献」。

——1946年に創業され、64年には海外展開が開始されましたね。

 シカゴ、香港をほぼ同時期に展開させたのが海外進出の始まりでした。日本から海外に進出する企業がほとんどなかった時代です。当時は画材(クレヨン、絵具、画用紙など)を背負って出張販売をしてきたことが始まりで、駐在事務所を作りました。創業者である堀江幸夫は早期に海外での事業展開をしたいという思いが強かったと聞いています。現在香港では、画材・ボールペン・シャープペンなど文具専業で販売させて頂いております。

——香港のほとんどの学校で御社の文房具が使われているほど人気ですね。

 画材に関しては香港の文房具市場においては弊社が1位と、多くの香港の子供たちに愛用されるまでになりました。修正液も画材と同じくらいロングセラーですね。とはいえ香港も日本同様少子化が進んでいるので学校そのものが減っています。こうした状況のなか私たちは、画材だけではなく、ボールペン、筆なども展開しており、ここ5年で特に強化しています。

——地場企業とは異なる御社の強みは?

 「日本製」ですね。少子化が進んでいますが、有難いことに、会社としてはここ10年間は増収が続いています。特に文房具などを好む、いわゆる趣向品として購入する20代女性を対象にしたビジネス展開です。絵を描く、カードを書くなど、趣味として楽しまれている方向けのコンテスを行うなど、文房具を身近に感じる機会を作ることが売り上げにつながっていると思います。日本でも文房具市場が一時落ちていたのですがこの5年でまた伸びています。長期不況による企業の備品カットと共に文具も個々人が揃えなければならなくなりました。その際、せっかく自分で購入するのであれば、良いものや興味の持てるものを購入しようという動きになったのです。女性中心に文具に興味を持たれる層が増えてきた事と、高機能・品質の需要増大により、製品単価の引き上げが伸びにつながっているのだと考えられます。

——御社の細やかな色を生み出せるペンの技術はまさに日本の品質の高さを感じますね。

 日本独特の器用さは世界に負けない技術力、そして独自性があります。今香港でも売れ行きが伸びているのが、「エナジェル」と言うボールペン。自然にある原色に近いその色味が特徴で、それを好まれ購入頂くお客様も多いです。見る角度によって色が変わるボールペンなどもあるんですよ。こういった商品の内「海外先行販売」のものも多いので、注意して見て頂ければ、日本では販売されていないレア商品を見つけられるかもしれませんね。

——ということは香港でも早々と販売を?

 香港は世界21拠点、120以上の国・地域で販売しているなかで、最先行の地域の一つなんです。流行り廃れのスピードが速い香港は、移り変わりが目まぐるしい環境ですが、同時に顧客の物事に対する反応もとてもスピーディ。これはほかのどの地域と比べてもダントツです。また「市場調査」という位置づけでは香港は大変有意義な場所です。たとえば新製品は、香港で販売して世界展開が可能かの参考にもなります。うまくいかなければ半年程度で早々に打ち切りするなど、新たに販売する上での目安の市場になっています。

——過去には香港で予想を超えた大ヒット商品も誕生してますね。

 「カラーブラッシュ」という、多色展開の筆ペンです。16年7月に発売、販売開始から4カ月で3万本以上の売り上げとなりました。ここ数年、特にアート関連などのイベントが香港で今増えています。絵を描く人が増えてきているなか、流れにうまく乗れたと思います。ちなみにカラーブラッシュは単品ですと日本円で500円近くするので、5年前に一度販売していたのですがあまり売れませんでした。それが時代の流れと変化とともにこうして売り上げがこれまでにないほど爆発的なヒットにつながりました。常に市場ニーズのある商品を発信し続けること、そして飽きのことない、ワクワクする新しいものを生み出せるよう、愚直に取り組んでいきたいですね。

(この連載は月1回掲載します)


【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログhttp://nararisa.blog.jp/

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