旅行見本市 ITE&MICE Hong Kong


 香港最大の旅行見本市「第31回ITE(レジャー)&第12回MICE Hong Kong」が6月15日〜18日に開催された。(15、16日は業界関係者向け、17日、18日は一般公開)。今回は、52カ国・地域から604企業・団体が出展した。

期間中は香港と中国本土マーケットを中心に旅行業界、メディア、MICE関係者や企業・団体、そして1万2000人近くのバイヤーが訪れ、活発な商談が繰り広げられた。また17、18日の一般入場可能日(17日は30ドル、18日は25ドル)には、個人旅行者や富裕層などを中心に、期間中は8万7000人近くが来場し、セミナーや会場ディスプレイでもラグジュアリーでトレンディーなテーマ性をもったものなど、大盛況だった。主催はTKSエキシビション・サービス(TKS Exhibition Services Ltd)、後援は中国国家観光局 (China National Tourism Administration)、香港政府観光局 (Hong Kong Tourism Board)、マカオ観光局(Macao Government Tourist Office)、香港の観光産業協議会 (Travel Industry Council of Hong Kong)などアジア各国・地域の政府観光機関など。

にぎわう会場の様子

今、香港からの訪日者数は年間180万人を超えている。香港からの空路出境者数の伸び率を訪日は大きく上回っており、日本は定番旅行目的地としてのブランド定着、香港からの海外旅行先として2年連続(2015、16年)でトップを維持している。JNTO香港事務所の調べによると2016年の訪日は183万9189人、2位の台湾は161万4803人と約22万人差。韓国は4位で65万676人。旅行のトレンドは何といっても個人旅行(FIT)だ。キャセイパシフィック航空や香港エクスプレスなどがこぞって個人旅行(FIT)キャンペーンを実施しており、従来の航空券とホテルをあわせて旅行会社で購入するというスタイルは減少、個性のでる「オリジナルの旅」を楽しむFIT化のさらなる加速が予想される。

こうしたなか、人気が高まりつつあるのが四国、山陰山陽地方だ。2015年に広島空港、2016年3月には岡山空港、7月には四国初の就航路線が高松に、さらに9月に米子空港に就航している。これまで直行便が無かった中国四国地方に就航することで、リピーター層のアーリーアダプターを中心に訪日が増加している。イベント期間中は日本国内各地域から出展している企業、団体が多い中、地方都市への関心を高める人が目立っていた。一般来場した香港人30代女性は「地方都市は文化歴史が古い町並みが多く、毎回新しい発見があって楽しい。その土地の人たちと交流するのも楽しみの一つ」と話した。

インタビュー①
岡山県産業労働部観光課 海外誘客班
副参事 藤原 憲明さん

岡山県産業労働部 藤原 憲明さん

2016年3月に香港航空により岡山—香港間の直行便が就航。これを機に外国人観光客が以前にも増して倍以上になっている四国・山陰山陽地方。観光庁・宿泊旅行統計調査によると就航以前に比べ増加率は55%にのぼり、岡山県への宿泊者数も就航以前の倍以上になっている。岡山県が2008年10月に策定した「岡山県観光立県戦略」により、2007年に約6万人だった外国人宿泊者数を、2013年に12万人に増加させる目標を立て、海外での観光展の出展や、現地の旅行社やマスコミを実際に岡山県に招いて視察を行うなど、県をあげて取り組んできた。さらに「おかやま観光コンベンション協会」では、観光スポットやグルメ、宿泊施設情報などを日本語・英語・簡体字・繁体字・韓国語の多言語で配信することで海外に精力的なPRをしている。人気の観光地は日本三名園のひとつとして知られる「後楽園」「岡山城」、そして「湯原温泉」に「蒜山高原」。なかでも人気のアクティビティは「果物狩り」と藤原氏は話す。「『晴れの岡山』といわれるだけあって、降水量が少なく日照時間が長く、朝晩の気温の差がある環境下では、より甘みの増した果物ができるんですよ」。岡山県は日本国内でも有数の果物の産地だ。桃のほか、マスカット、種無しの濃厚な甘みが特徴のニューピオーネ、シャインマスカットなど全国一の生産量を誇る「ぶどう」は様々な品種が揃う。こうした岡山産の果物を買いに来るだけでなく直接もぎ取ることで土に触れ、自然に触れる機会を増やしたいと思う海外からの観光客が後をたたない。

人気が高まる四国、山陰山陽地方

「果物狩りを好む傾向にあるのは香港人。台湾、中国本土、韓国からの観光客も多いが、地元の人たちと交流しながら地元の食文化を楽しみたいという人は圧倒的に香港の人が多い」と藤原氏。

それだけではない。香港人の特色のひとつとしてレンタカーを使って関西方面から来る人も少なくないのだそうだ。「岡山をよくリサーチしてこられる人が多いのが香港人の特徴。こちらでフェースブックで発信したものに素早く反応してくれるのも圧倒的に香港の人たち。日本人以上に日本の知識を持っている人が多く驚く」と舌を巻く。

今年に入って問い合わせが増えているのが「農家民泊」だ。少子化に伴う人口減少により空き家も増えている中、地域の活性化を何かできないかと考えたうえで始めたのが古民家の一棟貸しをして農家体験をしてもらう。地元の農家の人たちが協力し合い、昼間は農業を観光客に教えて、夜はその田畑で収穫した食材を使った食事を提供する農業体験だ。今世界各国からの問い合わせが増えており、過疎化が進んでいた地域に、少しずつだが活気が戻ってきた。2016年には、「岡山 創生総合戦略」を策定した岡山県。人口減少を克服し、持続的な地域の発展のためにも、岡山の魅力や特性を生かし、海外からの観光誘致に取り組んでいく。

(このシリーズは月1回掲載します)

 

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

 

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