債券通/商品説明条例

債券通
香港と中国本土の証券市場の相互乗り入れに続き、今度は債券市場相互乗り入れ「債券通」の開始が具体化してきた。

 中国人民銀行と香港金融管理局(HKMA)は5月16日、香港と中国本土の債券市場相互乗り入れとなる「債券通」について香港から本土に投資する「北向通(北上ルート)」を先行実施すると発表した。まず海外の資金を香港を通じて北上させ、次の段階で本土の資金を南下させるとみられる。

香港と本土の経済的結びつきが今まで以上に強まることで、さらなる相互発展が期待されている

 債券通の概要によると、北上ルートでは投資上限は設けず、投資者は海外の中央銀行、通貨当局、政府系ファンド、国際金融機関、年金基金など機関投資家に限られる。投資可能な範囲は本土の銀行間債券市場(CIBM)で取引されるすべての債券。投資者は人民元だけでなく外貨を人民元に両替して本土で債券投資を行うことも認められる。開始時期は未定だが、北上ルートは早ければ7月1日の香港返還20周年に合わせて行われるもようだ。将来的には本土から香港市場への投資も検討する。

 香港と本土は、証券市場の相互乗り入れが2014年に香港—上海間、16年に香港—深圳間で始まった。今年3月15日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)閉幕後の記者会見で李克強・首相が「債券通」の年内開始を発表したことで、さらなる市場開放に内外の投資家の注目が集まっていた。

 李首相は発表の席で、「中央は香港の発展に有利な措置を引き続き打ち出す」と述べた後で「債券通」の年内実施を宣言し、「域外の資金が域外で本土の債券を購入するのを認める」と説明。北上ルートの先行実施をにおわせる発言をしていた。これについて業界では、香港には相応の規模を持つ公の債券プラットホームがないため南下ルートはまだ難しいと分析されている。

 現在、債券市場の規模は香港が約3兆ドル、本土 が約70兆ドル。南下ルートが開通すれば香港取引所は約70兆ドル市場の海外総代理となる。また北上ルートは人民元建て債券に海外からの投資を呼び込み、 モルガンスタンレーは2500億〜3000億米ドルの資金が中国の債券市場に流入すると予測している。

 HKMAの陳徳霖(ノーマン・チャン)総裁は、CIBMの規模は65兆元で世界第3位の債券市場だが、外資の割合は2%に過ぎないとして、債権通によって海外の投資家が本土債券市場に投資する窓口を提供できるため「香港が国際金融センターや本土との資金移動の仲介役としての機能を発揮できる」と述べている。

 債券通の始動により、香港と本土の市場の相互補完はさらに強化され、本土の市場開放が一段と進むとみられている。

商品説明条例
香港税関が4年前に改訂した「商品説明条例」の施行の手引書の内容に、今もなお市民から矛盾を指摘する声が上がっている。

 「菠蘿包(パイナップルパン」にパイナップルが入ってなくても、ハンバーガーがハンブルグ産でなくても、条例に違反しない。香港税関は2013年7月に改訂した「商品説明条例」の施行の手引書の中で、商品説明がわずかに誤解を招く程度、またはわずかな誤差がある程度であれば罪には当たらず、検挙対象かどうかは、その商品の説明が購入の決め手となるレベルに達し、購入に際してそのことが購入者に大きな影響を与えるかどうかによるとして、前述のパイナップルパンやハンバーガーは違反ではないと説明した。

 また、香港ではポピュラーな軽食「碗仔翅(フカヒレもどき春雨スープ)」の価格帯は1椀8〜10ドルであり、通常の消費者はこの値段でスープに本当にフカヒレが入っているとは考えないのでこれは虚偽の商品説明には当たらず、スマートフォンの広告で5・55インチの画面サイズとうたっていて、実際は5・54インチしかなくても、0・01インチの差が誤解を招く虚偽表示とはみなさないとしている。

 香港税関が条例を改定した背景には、中国本土からの観光客が香港で買い物をした際に、商品名や商品説明からイメージした物と実際の商品やサービスが違うといった苦情が多く寄せられていたことがある。

 香港人はパイナップルパンにパイナップルが入っていないことも、その形がパイナップルに似ているからその名が付いたことも知っている。しかし、それを知らない本土観光客が商品名からパイナップルが入っていると思って購入し、食べた後でだまされたと感じて店側に苦情を言ったとしても、税関の指南書では商品条例違反にはならないことになる。

 その一方、税関側は口頭や文章による商品説明はすべて誤りのないようにと販売者側に注意を促しており、違反かどうかは表現方法が消費者の購入に影響を及ぼしたかどうか、消費者の期待に沿っているかどうかによるとしている。このため、条例改訂から今に至るまで、説明の矛盾を指摘する声が絶えない状況が続いている。
(この連載は月1回掲載します)

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