課文232 ココナツと海塩でおいしく健康に
香港製造のキャンディー
アラフォー以降の香港人は、「椰子糖(ココナツキャンディー)」と聞くと、甄沾記の椰子糖の包み紙とともに、濃厚な香りと甘さを体で思い出してしまう! と言います。幼少期の思い出のひとコマになってしまっているくらいの、昔ながらの香港ブランドが「甄沾記」。時代の波に飲み込まれて、大変な時期もありましたが、しっかりと復活し、お菓子屋さんやスーパーなどでも手に入るようになりました。そして、ただ椰子糖が復活しただけでなく、新しくココナツを使ったおやつも加わっていたのです。
見つけたのは、台湾系の「誠品書店」。本の量が半端でないだけでなく、いろんな欲しいもの、面白いものがたくさんあるので、時間が経つのを忘れてしまいそうになったときに、一緒に行った香港人の夫がうれしそうにわたしの名前を呼んで、手を引かれていったのが「甄沾記」のショップでした。
「小さいときにお小遣いをもらって椰子糖を買いに行くのが楽しみだったんだよ」と夫。お店の人が、「ちょっとこれ試してみませんか?」と出してきたのが、ココナツの中の白いところを乾かしたみたいにしか見えなかった「椰子海鹽糖」だったんです。実はわたし、ココナツキャンディーは大好きだけど、ココナツの中の白いところだけを乾かしたものっていうのは、独特の味があるのでちょっと……、だったのですが、お店の人の笑顔につられて食べてみたところ、びっくりするほどおいしかったんです。独特のえぐみが消えている上に、塩の味が本来のおいしさを引き出してくれていました。そして、歯ごたえもしっかりあるのでゆっくりかみしめて食べることができ、ちょっとでかなりの満足感。
ココナツの白い部分って、栄養素的には、脂肪を燃焼させてくれる中鎖脂肪酸や、骨や歯を強くし、イライラも抑えてくれるマグネシウムなどのミネラルが豊富です。また、中医学的には、「腎を補い、気力を得る」という働き、つまり、保湿とむくみ改善、不安やイライラ解消効果があります。
いろんな大きさがあったのですが、わたしが大人買いしたのは、手のひらサイズ=写真。小さい1袋でかなり満足感があるところに惹かれました。非常食としてバッグに潜ませておいたら、外出時、小腹が空いたときにこそっと食べることが出来るんです。
香港老舗ブランドの、おいしくて体に良くってダイエットにも働くものだから、女子受けするばらまき土産にもピッタリですよね。
(このコーナーは月1回掲載)
筆者・楊さちこ
1961年大阪生まれ(国籍:日本)
南京中医薬大学・中医美容学教授・中医学博士
日本と香港・中国のアジアンコスメブームに火をつけた第一人者。大学では「高木祐子奨学金基金」を設立し、中医学の社会的地位の向上に尽力。「いつまでも美しく」 をモットーに美に関する商品開発をはじめとするトータルプロデュースを手がけている。著書は『肌がつるんと若返る「ガーゼ洗顔」』(マキノ出版)、『綺麗なひとは、やめている。』(幻冬舎文庫)、『昨日よりも綺麗になる魔法の習慣』(光文社知恵の森文庫)、『72時間で自分を変える旅 香港』(幻冬舎)のほか、2016年には香港の健康長寿に着目した『世界一の養生ごはん』(小学館)、『香港美人が教えてくれた美しさが永遠に続く6つの法則』(光文社)を上梓。郵便局だけで買える、おいしい家庭料理の本『dancyuクッキング』(プレジデント社)=写真=に長寿世界一「香港」の、おいしい養生ごはんを連載中。