香港コスメ市場に新風吹き込む

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)


香港コスメ市場に新風吹き込む

istyle Retail (Hong Kong) Co., Ltd.@cosme store
マネジングディレクター 山本佑樹さん
【プロフィール】
1981年愛知県生まれ。立教大学理学部生命理学科卒業後、株式会社イマージュ・ネットに入社。広告事業のメディアプランナー、新規事業の立上げを経て、アパレル事業の中国展開、化粧品事業の香港展開に従事。2016年1月株式会社アイスタイルに入社後、@cosme storeの海外展開を推進し、2018年1月より現職となり香港事業を担っている。

——日本国内を中心に事業展開するコスメセレクトショップ「@cosme store」の香港1号店「@cosme store Star House 店」が6月にオープンしましたね。

 「試せる・出会える・運命コスメ」をテーマにしたもので、@cosmeのクチコミデータベースやユーザーの行動履歴などを分析し「お客様が何を求めているのか」を追求したMDや売り場づくり、売り場オペレーションのIT化 や来店頻度や来店客数などを重視するウェブサービスのKPIの考え方を導入したコスメセレクトショップとなります。店舗事業は2007年に「ルミネエスト新宿店」のオープンを皮切りに国内25店舗、海外4店舗(台湾)を展開しており、このお店は海外2拠点目、ちょうど30店舗目のお店となります。日本同様、流通チャネルの垣根を超えた商品ラインナップとなり、香港ではおよそ5000種類の商品がならび、香港初上陸のブランドは約90種類です。さらに店内では肌の悩みやメイクの悩みに応えるカウンセリングコーナーや肌診断スペースを設け、日本同様の教育を受けたスタッフがカウンセリングを行い、ブランドを横断した商品提案を行っています。

——オープンして2カ月(8月取材)の今、いかがですか。

 想像以上に多くの方がお越しくださり、ほっとしました。週末となると1日5000人、月間では10万人にのぼります。オープン当初は9割が香港市民でしたが、今は中国本土住民も増えてきており半々くらいです。我々が入居しているフロアの上には誠品書店があり、またハーバーシティにも隣接しているため、お買い物ついでにふらりと立ち寄るお客様も多く、良い循環ができていると思います。実は中国では全くプロモーションをしていないので、本土のお客様は口コミなどでご来店くださる方か、あるいは地上にある複数の巨大な看板を見てふらりとお立ち寄りになるお客様がメーンです。

——店内でほとんど全ての商品を試供することができる点は魅力的ですね。

 香港のコスメ市場においてもここまで多くのテスターを自由に試せる環境はなかなか見ないと思います。実はこの点は我々がこだわっている点です。自由に試せる、自分で実感する、情報が欲しいときにわかりやすく目で見えるようにするなど、いるだけで楽しくなるような空間、新たに発見できる喜びの場づくりを提供しています。スタッフはあくまでもお客様目線で情報を伝える立場であり、押し付けることなくお客様の意思で気に入った商品をご購入していただくということを大事にしています。

——新規参入するうえで差別化を図ることは大きいですね。

 テスターもさることながら、香港のコスメ市場では日系商品が多く入っているように見えて実はフルラインで導入されていなかったり、他の商品に埋もれてしまっていたりと、よくよく見ると実はそれほど目に入ってくる情報量としては多くはありません。こうしたなか少しでも多くの商品を情報発信できる場として盛り上げていくために、店内には約25坪のイベントスペースを設置し、商品情報の発信などを行っております。世界全店舗のなかで、このような広いイベントスペースを持つお店は香港店のみです。またこのスペースでは香港、本土のKOL(キーオピニオンリーダー)を呼び、新商品の発表会や商品体験のイベントも行っています。

——今後の展開について教えてください。

 尖沙咀・広東道に面した1号店は様々な国・地域の人が行き交う場所でもあります。週末になると特に本土からの観光客が増え利用客の比率が逆転するのもこの場所ならではかもしれません。本土ではECを展開しており現時点では店舗展開はありませんが、より多くの本土のお客様にもご利用していただきやすいよう、本土に隣接している香港内の「上水」に今年10月に出店します。今後、香港内で展開を考えている店舗も複数ありますが、それぞれのエリアのターゲット層、好まれるものなどを吟味しながら、その土地に根差した長く愛されるショップづくりを目指します。

(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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