刑事逮捕の対策(2)

刑事逮捕の対策(2

 弁護士は身柄の開放に向けて最大限働きかけ、早期の身柄釈放を目指します。

 軽犯罪であれば、弁護士の働きかけにより、当局が逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断した場合には、保釈金を収めれば早期に釈放されることになります。場合によっては、次の呼び出しまで香港外へ出国することも可能です。

 『99・9刑事専門弁護士』と言う日本のドラマにあったように、日本では刑事事件において、起訴された被疑者は、99・9%有罪となっているようです。一方、香港では、実感としてはそこまで高い有罪率ではありません。実際に、私が手がけた案件でも起訴内容に関し、不起訴処分となったことが何度もあります。とはいえ、起訴されずにすめばそれにこしたことがありません。逮捕時の段階から弁護士を付け、その後も弁護士が検察と交渉することで、前科がつかない弁護が極めて重要であると考えています。

バリスター

 香港は、英国同様、日本の弁護士に相当する職業としてバリスター(barrister)とソリシター(solicitor)の2種類あります。バリスターは、法廷での弁論技術に特化した資格で、ソリシターから依頼を受けて、法廷での弁護を担う。他方、ソリシターは、直接クライアントから依頼を受け、法律アドバイスや法廷外での訴訟活動を行う仕事と分業化されています。刑事裁判の場合は、ソリシターのみならず、ほぼ全てバリスターまで雇い裁判をしているのが香港の現状です。

陪審員制度

 香港は陪審員制を採用していて、これは香港の法制度の中で最も重要な特色の1つです。非常に重い刑事事件、例えば、殺人、強姦、商業詐欺や強盗などは、1名の裁判官および7人(裁判官の命令で9人まで陪審員が増えることもある。)の陪審員で陪審が行われます。陪審員には21歳以上65歳未満の香港住民の中から抽選で選ばれます。選ばれた場合は、正当な理由があると認められない限り拒否できません。万が一、選ばれたにも関わらず出席しない場合は、5000香港ドルの罰金、雇用者が従業員の陪審員への参加に協力する必要があり、違反した場合は最高2万5000香港ドルの罰金および3カ月の禁固刑に処されます。陪審員は、刑事事件や民事事件の審理に立ち会った後、陪審員のみで評議を行い、判決を下します。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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