「一帯一路」の民心交流 〜梁振英氏に聞く〜

「一帯一路」の民心交流
〜梁振英氏に聞く〜

 

 梁振英・前行政長官は、カンボジアでの「一帯一路白内障患者サポート活動」の開幕式典から戻ってきた2日目の5月19日、『鏡報』のインタビューに応じ、「一帯一路」構想における民心交流の重要性などを語った。(インタビュー:徐新英・鏡報社長、呉歴山・策画総監)


 5月17日、カンボジア衛生部長、「一帯一路」国際協力香港センター(以下、センター)会長の梁振英氏らの立ち合いの下、「一帯一路白内障サポート活動」がカンボジアのコンポンチャムで正式に始まった。同活動は、センターが発起し、亜州防盲基金会、広西チワン族自治区政府、新家園協会、カンボジア香港商会が協力。カンボジアのコンポンチャムで白内障で目が見えなくなった人に無料で手術を提供することで、コンポンチャムでの白内障患者の減少につなげる。同時に、この活動は、「一帯一路」の国際協力構想における民心交流プロジェクトの一環でもある。

民心交流

 「一帯一路」はアジア、欧州、アフリカの60以上の国をまたぎ、40億人以上の人口を擁し、様々な国、民族、宗教が集まるエリアである。こうした多様な文化により、宗教的な矛盾や文化的な衝突は避けられず、「一帯一路」建設においても、解決しなければならない課題である。

 梁振英氏は、「一帯一路」戦略の重点協力5分野(政策、インフラ施設、資金、貿易、民心)のうち、「インフラ施設、資金、貿易に関しては経済効果が現れやすいが、民心に関しては直ちに経済効果が目に見えにくい。だからこそ、民心の連携は「一帯一路」の長期にわたる基盤になる」との考えを示している。

 梁振英氏のこの見解は、多くの賛同を得ている。新家園協会会長の許栄茂氏は、「利得のみで付き合うと、利がなくなれば別れ、権力のみで付き合うと、権力がなくなれば別れ、情のみで付き合うと、情が切れれば傷つく。心からの付き合いのみが長きにわたる付き合いになる」との古人の言葉を引用し、梁氏の見解に賛同。香港の民間組織や社会福祉団体は各機関との豊富な交流経験という利点を発揮することで、「一帯一路」の長期的な発展につなげることができるとの考えを示した。

 またインタビューの中で、梁氏は次のような例を挙げた。梁氏が現地で一人の老人を見かけた。その老人は白内障で目が見えなくなったため、4歳になる孫の顔を一度も見たことがなかった。しかし、老人は白内障の手術後、目が見えるようになり、「この喜びは言葉では表せないほど」と語り、医療関係者に感謝の意を表明したという。

 「こうした活動は、カンボジアの国民に実際の効果を見せることができ、中国とカンボジアの両国の民間交流をより深めることができる。また、香港にとっては「一帯一路」での「スーパーコネクター」としての役割を体現するものとなろう。香港は、資金、技術、ネットワークという優位性を発揮すると同時に、中国本土と連携し、広西チワン自治区から医療チームを派遣。カンボジアでのプロジェクト交渉ではカンボジアの香港商界が協力し、共同でプロジェクト実施している」と述べている。

プロジェクトの準備期間はわずか9カ月

 今回の人道主義的な医療支援プロジェクトは、準備から正式に開始するまでの期間がわずか9カ月。プロジェクト始動の式典で、駐カンボジア中国大使は、このプロジェクトの進展スピードについて、「驚異的」と形容している。

 梁氏によると、プロジェクトの始まりは、亜州防盲基金会医務総督を務めていた眼科医の周伯と梁氏が2017年9月、盲目防止医療のサポートプロジェクトを提起したことである。その後、「一帯一路」沿線国で、このプロジェクトを展開することで民間交流を進め、「一帯一路」の民心交流を推進することを決めた。

 同月、梁氏を筆頭にした香港側はカンボジアの衛生部長を訪問。プロジェクトの実行可能性を話し合い、カンボジア側の支援を獲得。梁氏は直ちに香港に戻り、プロジェクトの実行可能性の研究報告を作成すると同時に、資金や医療関係者を募集。同年11月、カンボジアの衛生部長が香港を訪問し、香港で協力の覚書を締結した。

 カンボジアの香港商会はカンボジアの文化やビジネス手続きなどを熟知していたため、医療チームのカンボジアでの医療ライセンス申請などにおいて重要な役割を果たした。また、香港商会は業務用車両の寄付や患者の送り迎えもサポートした。さらに、新家園協会が資金支援、広西チワン族自治区が医療チームをサポートした。

 このプロジェクトの目的は、当地の白内障で目が見えなくなった患者をサポートすることで、最大の特徴は、回復するまでサポートすることである。当地の試算によると、約8000人の患者が恩恵を受ける見込みで、医療チームは1日当たり約3040人の患者の手術を行う。

 今回のカンボジアの「一帯一路白内障患者サポート活動」はセンターが展開する初めての「一帯一路」民心交流プロジェクトである。

 このプロジェクトの発起人は、香港の「一帯一路」国際協力香港センターで、香港の企業家である許栄茂氏が会長を務める公益団体、新家園協会が2台の移動手術車、医療器材などを寄付。亜州防盲基金会が移動手術車および医療チームの技術指導の責任を負い、カンボジアの香港商会が業務用車両を寄付、患者の送り迎えを行う。また、医療チームは主に広西チワン族自治区が請け負う。

 梁氏は「このプロジェクトは民間が発起し、社会が参加し、より多くの中国の機関の対外進出を促すもの」と述べている。また、新家園協会の許会長は、協会の今回のプロジェクトへの参加は、「一帯一路」構想の国際責任を負うことを示しているものであると同時に、「民心交流」という目的を果たし、中国とカンボジア両国人民の交流を促し、カンボジアの白内障患者サポートに寄与することができたと述べている。

(月刊『鏡報』2018年6月号より。このシリーズは2カ月に1回掲載)

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