経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)
福八海洋有限公司
副総経理 廣瀬貴彦さん
【プロフィール】
1981年大分県生まれ。2004年に西南学院大学を卒業後、同年に(株)ふくやに入社。通信販売部門・販売促進課を経て16年より関連会社福八海洋有限公司の副総経理に就任。同社が運営する日本食レストラン「鱈卵屋」は14年3月に開業した。
——御社が運営する「鱈卵屋」は海外一号店として福岡から進出した初の明太子専門レストランですね。
弊店は明太子を日本で初めて製造・販売した株式会社ふくやの関連会社が運営しているもので、オープンして5年目になります。明太子とその食文化を世界に広げ、おいしさを知っていただく啓蒙活動の一環として立ち上げました。当店はアンテナショップとして明太子の様々な魅力を発信しております。メニューの8割を明太料理で構成しており、また明太子のおいしい食べ方、汎用性をお客さまにお伝えるために様々な小売品も販売しています。今でこそ多くの方にお越しいただいていますが、オープン当初は大変でした。
——例えばどのように?
オープン前に市場調査として様々な食の展示会に出展したのですが、その時は明太子そのものの反応が悪かったんですよ。当時は流通が今ほど大きくなく、さらに地方都市に行く外国人は多くなかったこともあり、明太子そのものが知られていなかったんですね。明太子の見た目、生臭さ、塩辛さなどについて辛辣なご意見をいただいたこともありました。一方で明太子パスタ、明太子パンなど調理用の食材として提供すると大きな反響をいただきました。まずは明太子の食べ方を発信する必要があると考え、レストラン開業につながりました。今では明太子好きの香港のお客さまが8割近く来店くださるほどになりました。メニューに使用している明太子は様々なバリエーションがあります。明太子の風味や辛さをしっかり感じられるものから、素材の味を引き立てる調味料のような役割のものまで、多くの食材と非常に相性が良く幅広い用途に使用しています。
——店内で販売する加工食品は気軽に明太子を味わえる商品ばかりですね。
共働きが多い家庭でも気軽に楽しんでもらえるように、時短クッキングで明太子を使ってもらえるよう、およそ10種類の小売品を販売しております。例えばチューブ型の「明太子」、「明太マヨネーズ」や「明太子入りのツナ缶」などは、ちょっとした手間でおいしい料理が作れると好評です。
——日本食レストランの激戦区ですが御社の強味は何なのでしょうか。
香港にひとつしかない「明太子専門レストラン」という点が大きいですが、親会社「ふくや」の厳しい基準を通過した高品質の原料を使っているという点でも自信があります。明太子の原料(スケトウダラの卵巣)は冬から春にかけてロシア、アラスカの海で漁獲されます。獲れる時期によって卵の成熟度が大きく変わり、早熟・晩成の卵は明太子づくりには不向きです。当社は卵に張りがあり程よい粒子感がある、まさに明太子づくりに最適な状態の「真子」という原料を使用しています。良い原料だからこそ、余計な成分は入れずに明太子をつくることができ、安心・安全な商品を提供しています。
——海外での事業展開について教えてください。
海外でのレストランは香港島1店舗のみですが、早い段階で九龍半島へ2店舗目をオープンしたいと考えています。また卸売りは台湾、シンガポールでも展開しており、香港までとは言いませんが、両国・地域ともに日本食に対する関心は非常に強く、また試食販売などを通しても明太子の味はご支持を頂いています。加えて外食の頻度が非常に高い国・地域なので飲食店への業務用商品の販売が増えてきています。同じアジアでも国・地域によって食文化は大きく異なるので、日本の明太子がどのように参入できるか、受け入れられるか、新たな挑戦となります。
——日本政府は2020年に訪日外国人4000万人の達成を目指しています。こうしたなか御社はどのような取り組みを考えていますか。
福岡に観光旅行などで行かれる人は増えており、現地でふくやの明太子を購入された方が香港の「鱈卵屋」にたどり着くことが少しずつながら増えています。現在は香港エクスプレスにご協力頂きながら、様々なイベント、プロモーションを検討しております。「福岡の代表的な食=明太子」のイメージが海外でも定着するよう取り組んでいきます。
(この連載は月1回掲載します)
【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/