第55回 アトラクション整備師

第55回
アトラクション整備師

ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人 たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。
( 取材と撮影・武田信晃/月1回掲載)

この道13年の経験を持つ萬建豪さん

専門技術で安全性をより高める

テーマパークの花形、アトラクション。しかし、事故を起こせば大惨事につながりかねないため日々のメンテナンスは欠かせない。香港海洋公園(Ocean Park)の萬建豪さんは「瘋狂過山車(The Dragon)」というジェットコースターを中心とした山側にある6つの乗り物のメンテナンス業務に携わっている。

香港特区政府は「機動遊戯機(安全)(操作及保養)規例」(第449B章)という乗り物についての法律を定めており、萬さんは「主管人員 (competent person)」という公的な資格を持つ。「ライド系の担当者は60〜70人くらいです。チームごとに分かれて担当アトラクションが決まっています。その後は、他のチームにいくことはあまりないですね」と話す。理由は、同じアトラクションを担当することで真の専門技術を身につけ安全性がより高まるからだ。

The Dragonの最高速度は時速77キロに達する

シフトを組んで対応しており、朝6時からメンテナンス作業に入ることも。「乗り物を動かしてみて、変な振動はないか、変な音はしないか、ヒビが入っていないか、タイヤはすり減っていないかなどを確認します。チェック項目は100くらいありますね」と平然と答える。オーバーホールは18カ月ごとに行い、トラブル発生時のバックアッププランだけではなく、バックアップのバックアッププランまで用意していると、安全対策に万全を期している。

開園中も、動かしていない乗り物のメンテナンス組と何かあったときのためにスタンバイ組に分かれる。「私が担当しているアトラクションは山側にあるので雷が一番怖いです。電源をやられると大変ですから。また、潮風で機器が錆びやすいです」と通常のアトラクションよりも気を使うことが多い。

1つひとつ丁寧に確認する

連絡ノートによる引き継ぎのほか、週1回のミーティング、SNSでグループを組んで、気になる点をメッセージしておくなど、あらゆる面で不安な点がないようにしている。また「当たり前のことだから言わないのではなく、あえて言うことも大事です」とチームとしてのコミュニケーションが大事と指摘する。

ジェットコースターは命を預かるという大きな責任も伴う。「正しい知識を持つと自信が生まれます。これがある程度のプレッシャーの解消につながっています。常に勉強をし続けていくことが肝要です」

空気圧のチェックなども行う

航空会社のメンテナンス業務を行う香港飛機工程(HAECO)と人材交流を行ったこともある。「内容は全く違いますが、刺激を受けました。安全に対してより真摯な態度で仕事ができるようになった気がします」と笑顔で交流の効果を話す。

小さいころから乗り物やメカが好きだったと言う萬さん。「(求人数も多くないため)こういう職業にはなかなか就けないのでラッキーです。好きであることが仕事をする上で一番大事で、それが安全につながっていくと思います」と話してくれた。

Share