第60回 洗濯屋(ランドリー)経営

第60回
洗濯屋(ランドリー)経営

 ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人 たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。
( 取材と撮影・武田信晃/月1回掲載)

事業意欲にあふれた2代目

邸さんはまだ24歳。この店はあと40年は後継ぎの心配なし

家に洗濯機がない場合、日本や米国などではコインランドリーに行くのが一般的だが、香港にコインランドリーはあまりない。その代わり、洗濯屋に通う人が多い。その理由の1つとして、唐楼を中心とした古い香港の建物は設計の段階から洗濯機の設置や排水を考慮していないことが挙げられる。そんな市民が通う洗濯屋を西営盤で営んでいるのが「白雪乾洗(Snow White)」の2代目、邸凱熙(Harry Yau)さんだ。

ドライクリーニング専用の大きな機械

「1980年に両親がこのビジネスを始めました。多くの常連さんに支えてもらっています。引っ越しをしてもわざわざ通ってくれるお客さんがいるほどで、ありがたいです」と邸さん。「元々は建築関係のエンジニアでしたが、60歳代後半になった両親を助けたいという思いから、今年から店を手伝い始めました」と話す。この連載では何度となく「後継ぎがいないので自分の代で最後」というプロフェッショナルを紹介してきたが、今回は事業が引き継がれた貴重な例だ。

西営盤は今でも築数十年の古い建物が多く、周辺にも競合店がひしめくランドリーの激戦区。新しい住宅がどんどん建設され洗濯機を買う人が増える中、同店の近くには香港では非常に珍しい24時間営業のコインランドリーがオープンするなど、このエリアでは依然として洗濯需要は高い。つまり現状維持では他店に負けてしまう。そこで「新しいチラシを作り5000戸に投函しました」と、2代目として新規の顧客開拓にも意欲的だ。

香港のランドリーはドライクリーニングのほか、量り売りならぬ「量り洗い」サービスがあり、水洗いされた洗濯物はちゃんと折りたたまれて戻ってくる。もちろん下着も靴下も。同店はドライバーが集配・配達もしていて、忙しい人にとっては非常にありがたい。こうしたサービスと確かな技術などが評価され、「フォーシンズ・ホテルからクリーニングの委託業務も請け負っています」。

店内では業務用の巨大洗濯機5台、ドライクリーニング用の機械3台がフル稼働。アイロン台は4つありスタッフが手際よくアイロンをかけている。エアコンや扇風機をつけているがそれでも店の中は暑い。「もう慣れましたけどね」と邸さんは笑う。

服の下から出る湯気からもわかるように水蒸気で一気にしわを取る

客は1日80〜90人。取材中もひっきりなしに客が来ていた印象だ。同店は英語も通じるので外国人客も利用している。料金は、いわゆる普通の洗濯は重さ1〜7ポンド(約450グラム〜3キロ)が35ドルで、それ以降は1ポンドごとに5ドルかかる。ドライクリーニングは、スーツ(2着からで71ドル)が多いが、女性がパーティーで着用するようなイブニングドレス(65ドル〜)の依頼も少なくないそう。

「エンジニア時代と違って休みが少ないのは大変ですけど」と苦笑いしながらも「やっぱり店を大きくしていきたいですよね」と若者らしく事業意欲にあふれていた。

店の外観

【白雪乾洗(Snow White)】
所在地:香港西営盤皇后大道西314号地下
電話:2546-3668
営業時間:8:30〜20:00(日曜定休)

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