香港は日本企業のビジネスパートナー
香港貿易発展局(HKTDC)主催の国際シンポジウム「Think Global, Think Hong Kong(国際化へのパートナー:香港)」が11月1日に東京で開催される。日本企業が世界の様々な地域、特に中国本土と東南アジア諸国連合(ASEAN)に進出するにあたり、香港の優位性をどのように活用できるかを実証する大規模なキャンペーンで、東京では2012年5月以来6年ぶりの開催となる。開催を目前に控え、HKTDCのマーガレット・フォン総裁に同シンポジウムと香港から見る日本企業と日本市場の魅力について伺った。
インタビュー
香港貿易発展局総裁 マーガレット・フォンさん
——HKTDC主催の国際シンポジウム「Think Global, Think Hong Kong」が11月1日に東京で開催されます。今回は林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官も初来日でシンポジウムに参加しますが、具体的にどのような内容なのでしょうか。
「Think Global, Think Hong Kong(国際化へのパートナー・香港)」(TGTHK)は、日本企業が香港の優位性を、中国本土やASEANをはじめとした地域でのビジネスにどういかすのかを紹介する大規模なプロモーション事業です。2012年5月に日本で初のTGTHKを開催し、東京と大阪で3700人以上が参加。以後、福岡(2013年10月)、大阪(2015年1月)、名古屋(2015年11月)でフォローアップイベントを開催してきました。
中国が推進する「一帯一路」経済圏構想、2019年に日本で開催されるラグビー・ワールド杯(W杯)、2020年東京五輪・パラリンピックなどによってもたらされるビジネスチャンスに期待が高まる中、香港が日本企業のビジネスパートナーに成り得ることを、改めてアピールするよい機会だと考えています。
本事業では、日本企業の海外展開に関連したダイナミックな市場動向について、香港と日本のビジネスコミュニティーが共同で討議することを目指しています。メインシンポジウムやテーマ別分科会、豪華なガラディナーの他、香港から集まったビジネスパーソンとの相談・商談会や投資ミッションとの交流イベントも実施します。
テーマ別分科会のひとつは、中国とASEANへのビジネス拡大のために香港のビジネスプラットフォームをどのように活用するかをテーマにしたものです。 これらの地域の経済成長は、質の高い製品とサービスを市場に送り出すための潜在力となっています。このセッションのスピーカーであり、特別協賛者である香港政府投資推進局(インベスト香港)は、日本企業が新たなビジネスチャンスを獲得し、香港の資金調達力、専門サービス、イノベーションにおける強みを活用する方法についてお話しします。一方、香港から参加する講演者が、税制や法的手続き、リスク管理、企業マーケティングなどの業務上の問題を扱い、香港の設立に関する実践的なヒントをご紹介するセッションもあります。
——香港からみる日本市場、日本企業の魅力について聞かせてください。
香港の企業にとって、日本は世界で3番目に大きな経済体です。多くの分野で先進的な技術を有し、活気に満ちた消費市場であるという点が魅力です。日本と提携し、香港、中国本土、ASEANのニーズに応えるための高齢化やスマートシティに適した技術を手に入れることは、香港企業の間で高い関心事項になっています。また、 日本の観光と不動産セクターも、香港の投資家を引き付ける分野です。
——日本から香港への投資を今後どのように促進していくのでしょうか。
消費力の旺盛な成熟市場である香港にとって、日本は高品質な商品やサービスを創り出す魅力ある国です。特に日本の農産物、真珠や高級ジュエリーなどの市場は世界最先端と認められています。一方、日本の映画やテレビ番組などのエンターテインメント分野、自動車、家電製品、化粧品、ファッションなども、香港市場に適した分野です。
香港は世界の他の地域と、総人口20億人に上る中国本土・ASEAN市場をつなぐビジネスと投資の中心地です。拡大を続ける20億人規模の強力な消費市場に日本の製品やサービスが浸透する上で、香港は重要な役割を果たすことができます。スマートシティ、フィンテック、環境技術、バイオテクノロジー、高齢者介護、デジタルコンテンツ、eスポーツ、人工知能(AI)、ロボットなどの分野で、中国本土とASEANの市場を開拓するために日本企業と提携できることを、心から楽しみにしています。
——「一帯一路」構想や「粤港澳大湾区」の建設において、日本企業には香港でどのようなビジネスチャンスが期待できますか。
インフラ、貿易、投資、文化交流のつながりを強化することで経済成長を目指すこれらの構想では、生産能力の拡充をはじめとして、さまざま分野での進化が求められています。資金調達、銀行業、インフラ開発、物流、環境技術、スマートシティ、ロボティクス、オートメーションなどの分野に対する需要は膨大で、日本企業にとってあらゆる可能性があると言えます。
——香港のインフラ開発に日本企業の参入を求めていますが、具体的なプロジェクトは何でしょうか。
日本企業は長年にわたり、橋りょうや高速道路、不動産などを含む香港のインフラプロジェクトの開発に携わってきました。政府は2018〜2019年にインフラ整備に90億香港ドルを費やす予定です。 これには、道路や鉄道、水道や廃棄物処理施設、病院や文化・スポーツ施設などの社会施設の建設まで、幅広いプロジェクトが含まれます。私たちは日本企業の協力を必要としており、プロジェクトの参加を歓迎します。
——日本の農林水産物の香港への輸出量は13年連続首位ですが、どう見ていますか。
香港は日本の農林水産物・食品の輸出先として、国・地域別で13年連続で首位を占めています。2017年の日本から香港への農林水産物・食品の輸出額は1877億円と、この分野の日本の輸出総額の23・3%を占めました。香港と日本はお互いの文化を高く評価し、香港の人々は日本製品の品質に強い信頼を寄せています。日本食は香港で大人気です。日本の食材は香港の人々にすっかり浸透し、いまや日常生活の一部となっています。多くの日本産の食品が地元住民と観光客からともに愛されています。 日本料理以外にも、中華やフランス料理の高級レストランで、日本の食材が使われることは珍しくありません。HKTDCでは、「フード・エキスポ」や「香港インターナショナル・ワイン&スピリッツ・フェア」などの展示会を主催することで、これらの製品の香港への輸出を引き続き後押ししていきます。
(このシリーズは月1回掲載します)
【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/