香港民族党の活動禁止、独立宣揚は収縮

香港民族党の活動禁止
独立宣揚は収縮

今後は香港民族党のメンバーを名乗る者は違法とみなされる

特区政府は9月24日、社団条例に基づき独立派「香港民族党」の活動を即時禁止すると官報に掲載した。同日から民族党は非合法社団となり、民族党の集会への参加、民族党に対する献金や援助はみな違法とみなされる。これによって「香港独立」の動きは沈静化が見込まれている。(編集部・江藤和輝)


集会参加や献金は違法に

特区政府保安局が社団条例に基づき民族党の活動禁止を検討していた中、民族党の書面による釈明期間が9月14日で期限切れとなった。期限は14日午後5時だったが、民族党の陳浩天・召集人は午後9時近くにようやく釈明書類を提出。保安局は釈明書類を受け取ったと発表したが、現時点ではコメントを控えると述べた。保安局はすでに3回にわたり釈明期限を延長していた。

社団条例第8条に基づくと、保安局の李家超・局長が民族党の釈明を受け入れなかった場合は同党の活動禁止が官報に掲載され、命令発効日から民族党は非合法社団となる。民族党は命令発効日から30日以内に行政長官と行政会議に上訴することができるが、上訴期間に引き続き活動した場合、メンバーや活動参加者には法的リスクが伴う。

李局長は24日の記者会見で「民族党は成立から2年あまり一貫して実質的な行動を取って『香港独立』の綱領を実現し、何度にもわたり武力行使を含む手段で『香港独立』を求めることを公に表明し、公の場で香港にいる中国本土市民への差別と憎しみを宣揚した」と指摘し、国家の安全、公衆の安全と秩序を維持し、他人の権利と自由を守る必要から禁止令を出す決定を下したと発表した。民族党の陳氏は同日、現段階でのコメントは避け、弁護士に意見を仰ぐと述べた。民族党のオフィシャルサイトはすでにアクセスできなくなっており、フェースブックについては警察が米国本社に民族党のページを削除するよう連絡したという。

翌25日には米国のマイク・ポンペオ国務長官が「民族党の活動が禁止されたことを注視し、特区政府に言論、平和集会、結社の自由を容認することを要求する」との声明を発表。英外務省も「英国側は香港独立を支持しないが、香港が享受する高度な自治と自由は香港市民の核心的生活方式で、全面的に尊重すべき」として事態を注視するとの声明を出した。

これに対し国務院外交部報道官は25日の定例会見で「特区政府が民族党の活動禁止を決定したことに対し個別の国家や機関がでたらめなコメントをすることに中国側は強い不満と反対を表明する。国家分裂活動を行う組織と行為はすべて容認できない。関連国家と機関は言論と結社の自由を盾に香港事務と中国内政に干渉するのをやめるよう要求する」と述べた。

外国勢力の干渉を警戒する点では、陳氏が8月18日に米国のトランプ大統領に公開書簡を送ったことも物議を醸していた。陳氏は米政府に「米国—香港政策法」の下での香港の特殊な地位を取り消すとともに香港と中国の世界貿易機関(WTO)からの除名を推進することを要求した。同様の書簡は昨年の2月と8月にも送っていた。これに対し国務院外交部は8月21日、「公開書簡は事実を歪曲し、外部勢力と結託して中国に敵対し香港を混乱させる狙いを十分露呈した」と強く批判した。林鄭月娥・行政長官も同日の記者会見で「陳氏の行為は不適切で、おそらく大衆の強烈な不満や怒りが分かっていない。1国2制度を支持するかしないかにかかわらず、香港に居住するいかなる者も香港の利益を念頭に置くべき。理性的な香港人はみなこのような行為に同意するとは思えない」とコメントした。


一部の学生代表が独立言及

9月に入った前後、8大学で入学式が行われたが、うち2校では学生代表による「香港独立」につながる発言が見られた。8月29日に行われた香港教育大学の入学式で学生会臨時委員会会長が「香港は独立して初めて香港人の利益をよりどころとする場所がつくれる」とスピーチした。これに続き香港中文大学学生会の区倬僖・会長は9月3日のスピーチで「香港の政治体制は崩壊し、主権は隣国の脅威を受けている」と述べ、スピーチ後に「隣国とは中国を指す」と説明した。ただし自身は「香港独立」を推進していないと強調したほか、スピーチは入学式のプログラムには含まれていなかった。

昨年9月には8大学に公開大学と樹仁大学を合わせた10校の学長が共同声明を発表し「言論の自由を乱用する行為を譴責するとともに香港独立を支持しない」と表明。政界や大学関係者の間では、こうした学長らの「香港独立」反対表明や、香港大学学生会の前会長らが有罪判決を受けたことなどから、入学式での「香港独立」宣揚問題は昨年に比べ大幅に収縮したと分析している。

立法会議員資格を喪失した青年新政の游؟٧禎氏は9月、米紙『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿し「香港独立」を宣揚した。寄稿は「香港民主の死」と題し、「中国は国家安全ツールを通じて香港の各階層でコントロールを強化し、多くの社会運動家が収監されている」と指摘。自身も立法会の会議場に突入して宣誓を強行しようとしたため禁固4週間となったことを挙げた。さらに「香港は中国から離脱して初めて真の民主と自由を享受できる」と主張した。

一方、3月に台湾のフォーラムに出席した際の「香港独立」を鼓吹する言行が問題視された「セントラル占拠行動」の戴耀廷・発起人(香港大学副教授)は9月21日、商業電台の番組に出演し「香港独立」を問う住民投票の実施を提唱した。戴氏は「香港独立」について「弾圧すればするほど反逆心を刺激する」として住民投票の実施を提案。「『香港独立』に反対する人が支持する人より絶対に多いはず」と述べ、英スコットランドとカナダ・ケベック州の例を挙げて両地では住民投票を行った後に独立運動が収束したため、住民投票が「香港独立」を封じ込める最も有効な方法と指摘した。

全国香港マカオ研究会の劉兆佳・副会長は游氏の寄稿について「米国のある政治勢力がこの機に乗じて香港問題で行動を起こし、1国2制度の正常な運営に干渉するかもしれない」と懸念するものの国際社会で「香港独立」を支持する国はないと指摘。戴氏の提案については「住民投票は一般的に法的手続きを通じて政府が実施するが、香港には法的根拠がないため実施は不可能」と説明。さらに「『香港独立』支持は社会の大多数の民意でないことがはっきりしており、住民投票で確認する必要はない」と述べた。戴氏が住民投票を提唱した真意は不明だが、「香港独立」への肯定的な意見を控えるようになったことは確かである。

 

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