オンデマンドの物流サービス

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)


オンデマンドの物流サービス

株式会社オープンロジ
代表取締役CEO  伊藤秀嗣さん
【プロフィール】
1978年東京都生まれ。明治大学卒業後、株式会社ネットエイジにて雑誌の定期購読ECサイト富士山マガジンサービス創業メンバーとして成長に貢献。レガシーな物流領域をもっとオープンに革新したいという思いから201312月株式会社オープンロジを設立。

——事業内容を教えてください。

 物流プラットフォームサービスを行っており、2013年に設立しました。「物流をもっと簡単、シンプルに。」をコンセプトに、現在の物流サービスの複雑な料金体系、見積もりや問い合わせなどを省き、オンライン上でスムーズに物流業務(入庫・保管・発送業務など)をアウトソーシングできるオンデマンドの物流サービスを行っています。当社は自前で倉庫を持たずに既存の倉庫会社をネットワーク化しているところが特徴です。現在、中小規模のEC事業者を中心に現在3500社以上の事業者様に導入いただいてます。インターネットによって情報がボーダレスにやりとりできる時代ではありますが、未だ物流においては国と国の間の輸出入、通関などが手軽に処理できる環境ではありません。こうした問題を払拭するため、ITによって個人レベルでも気軽に倉庫を利用でき、また越境の配送会社に依頼できるなど「フラットな物流サービス」を提供したいと思います。

——8月にはJETROによる「2018年日本発知的財産活用ビジネス化支援事業」の中国・深圳プログラムにおいて物流業界では初採択となりましたね。

 これはJETROが深圳に進出する日系ベンチャー企業を支援するもので、投資家など関連企業前でプレゼンして採択された企業がビジネス支援を受けられるというものです。物流業界からのスタートアップ企業がまだまだ少ないなか、現地の事業会社などと実際にいくつかMTGができて感触を得てきたので今後の事業展開が楽しみです。

——物流業界において新たなビジネスモデルや技術革新は大きな可能性を秘めていますね。

 中国の市場はECの成長が著しいのですが、中国国内のEC同士の競争がとても激しく、中国から海外への越境ECが注目されてきています。これは日本においても同様です。その海外の拠点展開を我々が支援をしていきたいと思います。また、中小事業者が倉庫に対して物流業務をアウトソースをしようとしても、小規模だと相手にされないのが現状ですし、まとまった売り上げにならないと倉庫会社も消極的です。これは日本だけでなく中国もインドネシアも同じ現状です。EC市場の伸びに比例し物流市場は各国で伸びていますが、EC事業者は圧倒的に中小企業が多いです。出荷作業、梱包作業、宛名ラベル書きなど細かな作業は皆、自分たちでやっているのが現状です。弊社は物流業務をアウトソースしたい中小事業者と物流業務を受託する倉庫会社を結ぶプラットフォーム「オープンロジ」をリリースして約4年間、様々なノウハウやシステムを培ってきました。今後このビジネスモデルを海外市場で展開していきたいと思っています。

——アジア圏で事業を強化していくなか、今後注力するのはどこでしょうか。

 インドネシアと中国本土です。インドネシアも今伸びていてEC化率は1%、中国本土では15%、日本は7%です。インドネシアは日本の人口の2倍で大きく成長しています。中小企業の物流業務はまだ解決されていない問題が多くありますが、日本と同じような課題があるとみています。もちろん香港市場も大変魅力的です。

——11月に深圳で開催される「チャイナハイテクフェア」は今年20回目の開催となり、今回初出展されますね。

 中国のシリコンバレーであり、イノベーティブなスタートアップ企業が多く生まれている深圳に多くの企業が集結するということで、今回の出展は大変喜ばしく思います。海外展開をするうえでネットワークを広げ、お客様を獲得したいと思います。まずは来年に香港にオフィスを設け、その後深圳、広州、上海に支店を設立していきます。物流そのものはモノの流れがグローバルに展開しているので、非常に面白い分野だと思いますね。注文を受けるEC業者、物流業務、配送業者をITでつなげることで再配達などを減らす仕組みをつくったり、横のつながりを強めることで効率的な物流ネットワークが構築し、それぞれが3方良しになるモデルを構築していきたいと思います。

(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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