#119
東莞市
本部企業に対する新たな優遇策を発表
「華南ビジネス最前線」では、お客様からのご質問・ご相談が多い事項について、理論と実務の両方を踏まえながら、できるだけ分かりやすく解説します。
(三菱UFJ銀行 香港支店 業務開発室 アドバイザリーチーム)
今月の質問
東莞市が、新しい本部企業優遇策を発表したようですが、その内容について教えてください。
2018年7月5日、広東省東莞市政府は「東莞市本部企業経済発展の促進に関する意見」(東府発[2018]80号、以下「本意見」)を発表した。本意見は、これまでに発表された東莞市における一連の本部企業奨励政策を最適化し、さらに多くの企業の本部設置を誘致する目的で発表されたものである。本稿では、その政策について、簡単に紹介したい。
⒈背景
東莞市は広東省における工業集積地であるが、近隣の広州、深圳とともに、経済発展に伴い産業構造の転換を進めている。その一環として、東莞市は、2009年に初めて本部企業誘致策を公布、2010年にその改善策を発表し、本部企業の設置を支援してきた。
本部企業誘致策を発表してから8年を経て、現在では、南城国際商務区、松山湖高新区、および濱海湾新区等の地区に、華為技術(ファーウェイ)、大疆科技(DJI)、OPPO(オッポ)等、多数の本部企業が集積している。東莞市政府は、東莞エリアの持続的な発展を目指し、今後より多くの投資を誘致すると同時に、地場企業のレベルアップを重視する姿勢を示し、今回、従来の本部設立奨励政策を調整し、本意見を発表した。
⒉政策の内容
①本部企業の認定条件
本部企業は総合型本部と機能型本部の2種類に分けられる。本意見では、従来の区分政策と比べ、認定における一般基準や業種別・機能別の基準が整理・明確化された。業種別に関しては、製造業、サービス業等における認定条件基準が厳しくなり、東莞市が推進している新興産業、情報通信およびコンピューター等の産業に対する条件が新たに付け加えられた。また、従来、別途設定されていた最低登録資本金額や純資産額の条件は一律撤廃されている。なお、一定の基準を満たすトップランク企業については、一般基準や業種別・機能別条件に制限されず直接本部企業と認められるとしている。
②奨励政策
本意見では、転入を含め東莞での本部企業新規設立に対する最高奨励金額は従来の1000万元から1億元まで大幅に引き上げた。なお、企業育成のため、地場市内企業が本部企業へ昇格することに対する奨励も追加された。その他、増益達成度やオフィス賃貸・購入等の補助金も、従来に比べ大幅に増加した。また、本部企業の人材登用、出入国手続き、融資の面においても充実した優遇政策を設けている。特に、融資面では、具体的な補助と奨励が明確化された。
⒊まとめ
本通知からは、企業誘致をさらに促進すると共に、地場企業の育成に注力する方向性が窺える。一方で、業種別による認定基準からみると、全体的に年間売上額や納税額が引き上げられていることから、東莞市が従来より比較的規模の大きい企業を誘致したい意向であることが分かる。しかしながら、各種奨励面は、周辺都市と比べ手厚く設定されており、企業にとっては、今後本部設置を検討する際の有力な候補地となり得よう。なお、今後、本意見の優遇措置の具体的な申請方法や実施細則の発表が見込まれる。
(執筆担当:張 小萍)
(このシリーズは月1回掲載します)
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