#118 広東省 新エネルギー自動車産業の発展促進策を発表


#118
広東省
新エネルギー自動車産業の発展促進策を発表

 「華南ビジネス最前線」では、お客様からのご質問・ご相談が多い事項について、理論と実務の両方を踏まえながら、できるだけ分かりやすく解説します。
(三菱UFJ銀行 香港支店 業務開発室 アドバイザリーチーム)


今月の質問

 広東省においては、新エネルギー自動車産業に関する発展促進策が発表されたようですが、その内容について教えてください。


 2018年6月14日、広東省政府は「新エネルギー自動車産業の発展・促進に関する意見」(粤府[2018]46号、以下「本意見」)を発表した。本政策は自動車産業の電動化やスマート化へのモデルチェンジを促進するための方策であり、本稿では、その内容を紹介したい。

⒈背景

 中国政府は、環境問題の改善と自動車産業の持続的発展、新エネルギー自動車(以下、「新エネ車」)分野における国際競争力強化のため、2010年から新エネ車産業を戦略的新興産業として育成する方針を打ち出し、2012年6月に発表された「新エネ車産業発展計画」では、2020年までに新エネ車の生産能力を200万台とする目標が掲げられた。さらに去年9月、工業・情報化部がガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止に関する法案に着手していることが公表され、中国自動車産業の発展モデルが新エネ車に方向転換していくことが明確になった。

 自動車産業は広東省の柱産業であり、2017年の生産量は約321万台で全国1位となっている。国家の「新エネ車産業発展計画」に基づき、広東省は「新エネ車産業発展計画2013—2020年」を策定し、産業規模・イノベーション能力において世界トップレベルの新エネ車生産基地になるという目標を掲げている。現在では、広東省の新エネ車産業は広州・深圳を中心に、広汽グループとBYDグループを重点企業とする珠江デルタ地域産業エリアが形成されている。

 しかし、全国各地で新エネ車産業に注力する中、広東省新エネ車の生産能力・投資規模は他地域の後塵を拝している。報道によれば、2017年の広東省における新エネ車の生産台数は4・7万台で生産台数全国第1位の北京市の10・7万台の半分にも届かず、投資規模では、広東省は575億元(計画生産台数152万台)、第1位の浙江省の842億元(計画生産台数187万台)の約7割にとどまる。さらに、広東省では、電池などの新エネ車コア技術が発達しておらず、一部の新エネ車企業は、電池を他地域から調達している状況である。

 こうした状況に鑑み、広東省政府は新エネ車産業の発展促進のため本政策を打ち出し、新エネ車産業規模の拡大・イノベーション能力向上などにおける大幅な進展を目指している。

⒉主な内容

 本意見には、新エネ車の生産拡大・R&D能力向上・インフラ施設建設の加速・使用拡大を重点とする8つの面における方策が盛り込まれた。その主な内容は表の通り。

【表】新エネ車産業発展促進策の主要内容(一部抜粋)

⒊まとめ

 2017年、中国では約78万台の新エネ車が販売され、全世界の5割以上を占め世界最大の新エネ車市場である。一方、同年の新車販売台数約2888万台に対する新エネ車の割合は約3%にすぎない。これからガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止が具体化していくのに伴い、中国における新エネ車市場はさらに拡大していくと予想される。

 従来、外資系企業が中国現地企業と合弁会社を作って自動車製造を行う場合、外資系企業は50%までしか出資できなかったが、今年4月、国家発展改革委員会は今年中に新エネ車産業における外資出資制限を撤廃することを発表した。この規制緩和により中国における新エネ車事業の自由度が高まり、日系を含む外資系自動車メーカーにとって、産業参入や事業拡大のチャンスになるとみられる。

 広東省においては、基幹産業である自動車産業の関連産業が集積しており、企業間の情報交換・人材育成・技術協力などの連携も盛んであることから、新エネ車産業発展の基礎は整っていると言える。さらに政府が新エネ車産業の参入許可取得を支援することや一定規模以上の投資に対して土地確保・財政補助をすることは、中国新エネ車産業への参入や事業拡大を行う立地としての魅力向上に資すると考えられる。

 本意見には、各責任部門に32件の任務が与えられ、その達成期限も明確に定められている。これから各部門による具体措置が次々と出されると想定されるため、弊室では引き続き関連政策の動向に注視していきたい。
(執筆担当:何 薇波)

(このシリーズは月1回掲載します)

三菱UFJ銀行
アジア法人営業統括部 アドバイザリー室
 日・中・英対応可能な専門チームにより、東アジアのお客様向けに事業スキーム構築から各種規制への実務対応まで、日・中・港・ASEAN各地制度を活用したオーダーメイドのアドバイスを実施しています。新規展開や事業再編など幅広くご相談を承っておりますので、お気軽に弊行営業担当者までお問い合わせください。

Share