《125》巣をのぞき見した後は…
ブルブルちゃん、赤ちゃんを産む
ここ数週間でとても興奮する出来事が起きた。軒先にぶら下げてある飾り用の 鳥かごの上に小鳥が巣を作った。最近、鳥がやけに棒切れを嘴にくわえて飛んでいるなと思っていたが、まさかうちに巣を作っているとは思ってもみなかった。ちなみにその鳥は「Red-whiskered Bulbul」(赤いほほヒゲのヒヨドリ)で、日本語ではコウラウンと呼ばれるそう。その名の通り、ほっぺたとお尻に朱色の模様があり、頭がツンっと立っている。そこらへんにいつも飛んでいて群れで行動している。鳴き声は甲高く美しい。 そして、 ブルちゃんの巣篭りが始まった。
やがて予想通りに卵を3個産んだ。見てはいけないとは分かっていたが欲望に負けてはしごに登って中をのぞいた。ブルちゃんご夫妻がいない束の間を狙った。すると、うずらの卵より少し小さめの卵が! 小鳥は怖いものの、感動した。しかし、私はこの時ブルちゃんに見られていた。視線を感じたため、はっと隣のビルを見ると、ブルちゃんがジーっとこちらを見ていたのだ。しまった、と思ったが時遅し。今後は巣の中をのぞいたりするのはやめようと心に誓うのだった。
それから数日、旦那さんと奥さんと交代で卵を温めている様子だった。というのは、卵を温めていた親鳥が去ると次の鳥が巣に来て卵を抱えていたからだ。その後2日ほど、親鳥はピーチク鳴き、行ったり来たりと忙しそうだった。そして、ある朝、親鳥がいなかったので、あれだけ巣を見ない、と誓った筆者はいとも簡単にその誓いを破り、また巣をのぞいた。すると、1羽のヒナがうずくまっていた。卵が産まれてあっという間にヒナがかえっていたのだ。そしてその翌日、残りの卵2個もかえっていた。目も口も開いていないが羽はビクビクと動いている。鳥は怖いけれど感動の嵐。これからは親が餌を与え、ピーピーなく小鳥の声が聞けるのだな、とウキウキしていた。その夜も私はブルちゃん家族をそっと影から見ていた。
しかし、翌朝なんだか巣に活気がまるで見られない。思い切って中を見ると、ヒナは消えていた。跡形もなく、まるで誰もいなかったかのようだった。ヒナが死んだのか? それとも親がヒナを安全な場所に移したのか? ブルちゃんのヒナが飛べるようになるには2週間くらいかかるらしい。ネットで調べると、同じようにブルちゃん一家が夜逃げ同然に消えたケースがあることが分かった。猫のように子供を安全な場所に移したりはしないという意見が多かったが、犬や人間がちょろちょろしているわが家を危険と感じ、ブルちゃんは子供を連れて移動したのだと信じている。