麦難民
貧富の差が拡大する香港で、「マック難民(麦難民)」と呼ばれるホームレスが急増している。
昨年末、香港社区組織協会が香港島、九龍東、九龍西、葵青荃の24時間営業のマクドナルド78店を対象に行ったホームレスの実態調査によると、2013年には57人だったマック難民が、2017年には384人と6・7倍に増加していた。マック難民が最多だったのは九龍西で、225人と全体の6割近くを占めた。
香港のホームレス人口は今年5月に発表された社会福利署の最新統計でも、依然として増加傾向にあることが分かっており、路上生活者は2013/14年度の746人から17/18年度は1126人と、5年間で51%増加している。うち女性は13/14年度の35人から17/18年度には104人へと倍増。17/18年度の年齢別では、50〜69歳が56%と最も多く、次いで30〜49歳の32・4%だった。中でも70歳以上はこの5年間で2・8倍も増え、ホームレスの高齢化が顕著となっている。野宿の場所は、公園や運動場、駐車場が最も多く56%を占め、これに歩道橋の下の13・8%が次いだが、女性のホームレスの増加は、24時間営業のファストフード店などの出現で路上生活の安全性が高まったことが一因とみられる。
だが、2015年にマック難民の50代女性が店内で突然死し、10時間以上誰にも気付かれずに放置されたまま営業が続けられるという異常な事態も起きている。発見された時、女性の所持金は4ドル30セントの残額が入った八達通(オクトパス)と現金2ドル60セントのみだったという。
また、マック難民の特徴の一つとして、比較的就労者が多いことも挙げられる。2016年に香港城市大学、社会組織協会などが、街頭や24時間営業のマクドナルド、保護シェルターなど香港内240カ所で行った調査で確認した1614人の路上生活者のうちマック難民は256人で、うちアンケートに応じた55人中44人が職に就いていた。マクドナルドで寝泊まりする理由については、ほぼ大半が、家賃が高過ぎるためと回答した。
マック難民の増加は香港だけではなく、世界的な現象ではあるが、香港の場合は近年の不動産価格の高騰が背景にあると考えられる。社会福祉関係者は「公共住宅に入居したくても待機期間が長期で、かつ単身者では後回しにされる。単身者のホームレス用の居住施設も6カ月で退去させられるため、生活の建て直しも不可能」と行政の不備を批判している。
炸弾
湾仔でまた「炸弾(不発弾)」が発見された。香港ではこれまでにも、戦時中に投下された不発弾が各地で発見されている。
不発弾が発見されたのは湾仔のMTR沙中線の工事現場で、会議道と杜老誌道の交差点付近で見つかった。警察では現場周辺の道路を封鎖し、周辺住民やホテルの宿泊客ら数百人を避難させ、湾仔発着のフェリーも運行停止となった。不発弾は香港警察爆炸品処理課(EOD)が徹夜で処理に当たり除去した。
湾仔で不発弾が発見されたのはこれで三度目。いずれも今年に入って沙中線の工事現場で見つかっており、爆弾はともにAN―M65という種類だった。この不発弾は第2次世界大戦中に米軍が当時湾仔の海岸にあった日本軍の海軍基地と軍艦を攻撃するために投下されたものとみられている。
不発弾は近年では2012年6月にノースポイント、2014年2月にハッピーバレー、2015年10月に香港島西部の薄扶林道に位置するクイーン・メリー・ホスピタルの敷地内、2017年1月にやはり薄扶林道の香港大学付近、同年12月には馬鞍山の梅子林路に面する排水路で見つかっている。うちノースポイントとクイーン・メリー・ホスピタルの不発弾は第2次世界大戦中に日本軍が使用したものである可能性が高いという。
(この連載は月1回掲載)