6.4集会は過去10年で最低規模
米国で新たな組織も
香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は6月4日、1989年の天安門事件を追悼する6・4キャンドル集会をビクトリア公園で行った。米国では同日、天安門事件当時の学生リーダーだった王丹氏が新たな組織を設立し、2014年の「セントラル占拠行動」の学生リーダーである香港衆志の黄之鋒・秘書長も幹部に名を連ねた。(編集部・江藤和輝)
29周年を迎えた今年の6・4集会の参加者数は主催者発表で11万5000人、警察の推計ではピーク時に1万7000人。主催者発表では昨年よりわずかに増えて2015年から続く減少に歯止めがかかったが、警察発表では昨年より減少し過去10年で最低となった。支連会が綱領に掲げる「一党独裁の終結」を叫ぶ者は選挙に立候補できなくなると全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員の譚耀宗氏が指摘していたが、集会では引き続きスローガンとして掲げられた。香港専上学生連会(学連)が16年に支連会を脱退したため今年も多くの大学・専門学校の学生会が動員を拒否。香港大学学生会の黄程鋒・会長は「民主中国の建設はわれわれの責任ではない」、香港中文大学学生会の陳偉霖・副会長は「われわれの世代に事件追悼の感情はない」と不参加の理由を説明した。
集会に先駆けた5月27日には追悼デモ行進が行われた。参加者数は主催者発表で1100人となり、昨年の1000人からわずかに増加。警察の推計ではピーク時に610人で、やはり昨年の450人から増加したが、歴代ではともに3番目に少ない。学生代表の参加はバプテスト大学社工系の学生数人だけだった。支連会の何俊仁・主席は出発前に「民主中国を実現するためには一党独裁の終結が必要。支連会は引き続きスローガンを叫ぶ」と強調。選挙への出馬資格が得られないといわれたことへの反発から集会に多くの市民が参加すると予想していた。
香港大学民意研究計画は5月21~25日、天安門事件に関する世論調査を実施(対象1009人)。天安門事件の再評価については「支持する」が54%で前年比1ポイント低下、「支持しない」は同3ポイント低下の24%となった。当時の北京の学生のやり方に対しては「正しい」が同4ポイント上昇の50%、「間違っている」が同5ポイント低下の17%。中国の民主化推進に対し香港市民は「責任がある」との見方は同2ポイント低下の56%、「責任はない」は同1ポイント上昇の31%で93年の調査開始以降で最高となった。
6・4集会では参加をボイコットした学連も会場周辺で募金活動を行っていたことが物議を醸した。募金活動では主催者の支連会が昨年より7万ドル多い148万ドルを集め、集会の経費を差し引いた残りの50万ドルを常設の「6・4記念館」設置に充てるという。ほかに募金活動を行った政党・団体では香港衆志が33万ドル、社会民主連線と小麗民主教室が32万3000ドルを集めた。一方、学連は8000ドルしか集まらず、政界では「6・4集会を支持しないのに現場で募金活動を行っているため、参加者らの支持が得られなかった」と指摘されている。
各地の独立勢力が連携
香港社会で天安門事件にかかわる活動が下火となる中、米ワシントンでは4日、王丹氏を筆頭とするシンクタンク「対話中国」が設立された。シンクタンクは「中国の民主化、自由化への転換推進」を趣旨とし、王氏が所長、同じく元学生リーダーの項小吉氏が副所長、王軍涛氏が理事会召集人、香港衆志の黄之鋒・秘書長や台湾の「ヒマワリ学生運動」リーダーの林飛帆氏ら14人が理事を務める。ただし黄氏は保釈中の身であるため香港衆志常務委員の敖卓軒氏が設立式典に出席した。
このシンクタンク設立に対し全人代香港代表で新界社団連会の陳勇・理事長は「『自決』『香港独立』を鼓吹する黄氏は明らかに外国の反中・分裂勢力と結託し、シンクタンクを利用して海外の資金を使って分裂活動を行い、香港と国家の安全を脅かしている」と批判。民主建港協進連盟の葛珮帆・議員は同シンクタンクが「中国をおとしめるリポートを発表し、メディアが大きく報道して中国の国際的イメージを損なう」との予想を示した。
続く6日には香港衆志の敖氏と民間人権陣線の楊政賢・元召集人がワシントンで開催された第2回「チベット・香港・台湾円卓会議」に参加した。同会議はチベット独立組織「自由西藏学生運動」が主催し、チベット、台湾、香港の各独立勢力がいかに統一行動によって中国に対抗するかを討論するもの。林飛帆氏や新疆ウイグル自治区の独立勢力も出席した。敖氏は海外メディアの取材を受け「香港は他の反中勢力と連携しなければならない」と主張した。中国和平統一促進会香港総会の盧文瑞・理事長は「香港衆志と他の社会運動家は公然とチベット独立組織の活動に参加し、海外の独立勢力と結託して国家主権に挑戦している。市民は彼らの『香港独立』の本質を見極めなければならない」と呼び掛け、それらの者が外国勢力の駒にならないよう望むと述べた。
米国では一部勢力が占拠行動の学生リーダーをノーベル平和賞候補に推薦する動きなどがあるが、香港の民主派にも積極的に米英に干渉を求める動きがある。公民党の梁家傑・主席と楊岳橋・代表は5月7日、米国に赴きアジア協会政策研究所が主催した円卓会議に出席。梁氏は「1国2制度白書」や「一地両検」、占拠行動の学生リーダーが有罪となったことなどを挙げ「中央は基本法と中英共同声明を履行せず、香港人に民主と普通選挙を与えない」などと指摘し、米国がより香港に関心を注ぐよう訴えた。翌8日にはスーザン・ソーントン国務次官補、下院議員で民主党のナンシー・ペロシ氏とそれぞれ会談した。2人の訪米に対し全人代香港代表の呉亮星氏は「返還から20年になるが、いわゆる民主派の中には英国統治時代に執着し、米英の代弁者を担うことを望み、香港をおとしめている者がいる」と非難した。だが、こうした外国勢力への依存もすでに限界が見えているだろう。