香港貿易発展局だより《特別編》
ハウスウェア・フェア
ギフト&プレミアムフェア リポート
毎年4月、香港では大きな展示会が目白押しとなる。香港貿易発展局でも4月6日からのインターナショナルライティングフェアに始まり、13日〜16日のエレクトロニクスフェア、インターナショナルICTエキスポ、そして20日〜23日はハウスウェア・フェアとインターナショナルテキスタイル・フェアと続き、最後は27日〜30日のギフト&プレミアムフェア、印刷包装展で幕を閉じるまで計7本の展示会を主催している。この中で、エレクトロニクスフェアとハウスウェア・フェアがアジア最大規模、ギフト&プレミアムフェアが世界最大規模となる。これら7本の展示会に、今年は176の国と地域より23万名を超えるバイヤーが来場した。今回はハウスウェア・フェアとギフト&プレミアムフェアを紹介する。(写真提供・香港貿易発展局/構成・編集部)
■出品カテゴリー
両フェアとも非常に多くの出品カテゴリーがあるため、どちらに出展しようかという相談もよく受ける。その際はまずご自身で視察に行くことをお勧めしているが、概要では以下の通り。
ハウスウェア・フェアではL.I.F.Eの頭文字に則り展示ゾーンは大きくLifestyle、Interior、Feast、Enrichの4つのカテゴリーに分かれている。ライフスタイル提案、インテリア、調理器具、生活雑貨、ペット用品、収納雑貨、掃除器具、家具、建材等、実用性が重視された生活用品に重点が置かれているのが特徴だ。
一方ギフト&プレミアムフェアでは、ギフト用商材が多く、また趣味や遊び心の有る商品が多いのが特徴と言えるだろう。このフェアには多様なギフトアイテムやギフトアイデアの他、旅行用品、時計、キャンプ用品等の商品も目立つ。
■ネットワーキングの機会
展示会会期中にはバイヤーと出展者のさまざまな交流の機会が設けられている。例えば初日の夕方に行われるレセプション、毎日各所であるハッピーアワーのイベント、そのほかあらかじめバイヤーの意向を聞いた上で、マッチングした企業のブースまでバイヤーをお連れして商談をするカスタマイズド・ビジネスミーティングも行っている。
《第33回ハウスウェア・フェア》
今回33回目となるハウスウェア・フェアでは、世界27の国と地域より15の団体パビリオンを含む、2280社の出展があり、来場したバイヤーは111の国と地域より2万9000名を越えた。
最も多い商品カテゴリーは調理器具や食器、テーブルウェア。また、来場バイヤーの内訳は、地元バイヤーが約半数、日本を含むアジアのバイヤーが35%ほど、ヨーロッパのバイヤーが5%ほど、北米、南米、オセアニア、中東、アフリカがそれに続く。出展では、最も多いのは中国本土の企業で1000社を超え、省ごとのパビリオンが展開されている。台湾、香港がそれぞれ300社強、インドや韓国、マカオ、トルコも個別の出展者に加え、パビリオンでの展開が毎年続いている。
今回は日本からの団体出展はなかったものの、4社の日本企業と現地法人や代理店を経由した出展もあり、それぞれのブースでも活発な商談が行われていた。この展示会の出展者は、アイデアの詰まった生活雑貨、ペットボトルのリサイクルによって生まれたエコ商品、陶磁器など、リピーターの企業が多いのも特徴のひとつである。長年の出展によってマーケットをつくってきたという自負も見られ、またそれを証明するように多国籍のバイヤーがブースを訪れていた。
それらの出展者に話を聞くと、日本ならではのアイデア商品、伝統的な技術を現在のライフスタイルに適応させた商品、エコ商品に引き合いが多かったようである。数年前まではいかにデザインが優れていても値段で折り合いが付かなかったものの、今は香港のみならずアジアの経済成長が著しいので、アジアのバイヤーからも引き合いが来るという話が印象的だった。
■展示会場内でのセミナー
展示会会期中には多くのイベントが開催される。特筆すべきはトレンドスペシャリストによる2つのトレンドセミナーだろう。まずパリを拠点とするファッション、インテリアのトレンド予測機関NellyRodiのシニアクリエーティブプロジェクトマネジャーLea Czermak氏により、需要を生み出す4つの消費者グループが紹介された。
彼女が定義する、需要を生み出す消費者グループとは以下の4タイプのようだ。(1)シンプルでナチュラル、環境への意識が高い人々 (2)イノベーション、ハイテク技術に高い意識がある人々 (3)伝統的な物やライフスタイルを上手く生活に取り入れる人々(往々にしてソーシャルネットワークで生活スタイルを発信しがちである) (4)カスタマイズして独自のアイテムを取り入れる人々(最近のトレンドは、民族のデザイン、海のモチーフ、リサイクル材等)——ということだった。
次に、WGSNシニアエディターのAnupreet Bhui氏が製品におけるトレンドの4つのキーワードを紹介した。そのトレンドのキーワードは、人とシェアをして連携を深めることが出来る、高い柔軟性、本物志向、そして快適である、ということだった。
展示会場では2019年のトレンドカラーに沿ってL.I.F.Eのテーマゾーンを分けるなど、変化の激しい業界においてトレンド発信に一役買っている。以前日本からのバイヤーが話していた、ハウスウェア・フェアに参加したら今年のトレンドが分かる、という言葉が思い出された。
■団体パビリオン
この展示会では前述のとおり15の団体パビリオンが展開されている。国ごとに特色のある商品がまとまっているパビリオンもあり、例えばアセアンパビリオンやバングラデシュ・パビリオンなど、素朴で現地の生活感の感じられる生活雑貨がまとまって出展しているエリアに足を踏み入れると、現地の街角に来てしまったような感覚に陥る。
アセアン・パビリオンでは、木や竹、籐でできた器、バスケット、ランチョンマット、カラフルな漆器などが山のように積まれたブースもあり、宝探しのように目当てのものを見つけては、それを床に広げて話し込むバイヤーが目につく。一方のバングラデシュのパビリオンでは麻ひもやジュードを使った大小さまざまなバスケット、マットやインテリアが並び、手仕事の温かみが伝わってくる。
4年前から毎年顔を合わせるバングラデシュの出展者の女性に話を聞くと、政府の補助金のおかげで香港まで来られると話していた。なかなかバングラデシュまで買い付けに来るバイヤーはいないようだが、香港に出展をしたら世界中のバイヤーとつながり、ちゃんと販路が広がる手ごたえを感じているようだ。
ちなみに、日本のバイヤーは品質管理がとても厳しく、今まではまとまった取引に繋がらなかったようだが、技術や品質の意識も少しずつ変わってきているので、日本のバイヤーにもぜひ商品を見てほしいと力強く語っていた。
ほかも多くの企業が出展をしている台湾パビリオン、韓国パビリオンも必見だ。台湾からは331社、韓国からは54社の出展があるため、パビリオン自体も広く、センスの光る商品群は存在感を発揮している。この国・地域のパビリオンの中では、新しい技術や新しい素材で商品を紹介するほか、流行を捉えた幅広いカテゴリーの商品が目立ち、日本人バイヤーの姿もよく見かけた。
《第33回ギフト&プレミアムフェア》
4月27日から4日間開催されたギフト&プレミアムフェアでは、35の国と地域より4360社の出展があり、139の国と地域から4万8 000名を超えるバイヤーが参加した。
ハウスウェア・フェア、ギフト&プレミアムフェアともに、毎年開催日が決まっており、今年は金、土、日、月での開催となった。2日も休日を含むため、バイヤーの来場者数に影響を与えることが懸念されていたのだが、実際に開催されると両フェアとも昨年より3%増の来場者を記録することとなった。
特にギフト&プレミアムフェアでは、ロシア、インド、中国本土、アセアンなど新興国からのバイヤーの増加が目立った。具体的には香港の地元バイヤーと、日本を含むアジアのバイヤーがそれぞれ40%ほど、欧州のバイヤーが8%弱、そして北米、オセアニア、南米、中東、アフリカと続く。
出展者の内訳は、中国本土の企業が全体の約半数を占め、香港企業は1000社強、台湾432社、韓国107社、タイ100社、インド77社、日本からは5社だが、香港法人を経由した出展もあった。
日本企業はパビリオンではなく、個別に出展をしていたのだが、「ゆるふわ」のぬいぐるみ、ロリータファッションの衣装、おもしろ雑貨、ハーバリウムなどのハイセンスなインテリア、そしてカラフルなタオル製品、幅広いラインアップのライセンス商品など、どれも日本のこだわりのつまった、デザイン性とクオリティーの高い商品が、周りに埋もれることなく展開されているのが印象的だった。
■団体パビリオン
開催前から噂で聞いていたのは、かの有名な焼き物の産地、景徳鎮パビリオンだ。ハウスウェア・フェアには日本の美濃焼や信楽焼が出展しているので、私たちは遠慮してギフト&プレミアムフェアに出ます、と言ったとか言わないとか。
江西省景徳鎮市から来た14社が、門構えから立派なパビリオンを展開していた。現地では、大ぶりの壺に繊細な絵付けが施された数百万円の最高級の芸術品から、数千円のアクセサリーや茶器、食器まで展開されており、さながら美術館とギャラリーショップに来たかのようである。
日本語を勉強したことがあるので少し話せる、という若い窯元の女性に、「こんにちは」と声をかけられて話を聞くと、香港ではブランドショップ、ホテルのほか、有名人の個人宅にも納めたことがあるとのこと。まだ展示会場での契約数は多くないようだが、景徳鎮のブランド名は知られているので、今後は物を広めていきたいという。
■日本からのミッション団
今回は日本から、買い付けに訪港する団体が目立った。複数名で参加した大手小売企業、地方の小売業者が集まった団体、また副業で貿易をしている個人の団体等である。
インターネットやネット環境の普及により、簡単に自分でお店が持てるため、日本でもサイドビジネスはよく耳にするようになった。実際にサイドビジネスの買い付けのために来られた方は、真剣に商品を探し、会場でも積極的に商談する様子が見受けられた。小ロットの取引に対応してくれる企業も多いため、個人でも買い付けがしやすい環境となっているようだ。
また、香港貿易発展局では、より多くのバイヤーが参加しやすいよう、さまざまなインセンティブプログラムを用意している。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
■筆者紹介
浜口夏帆(はまぐち・なつほ)
HKTDCマーケティング・アシスタント。2011年12月より、香港貿易発展局大阪事務所で勤務。主に食品、ギフト、家庭用品、玩具に関する産業を担当。2006年立教大学経済学部卒業後、ホームファニッシングの企業で国内4店舗の立ち上げ、売り場運営に携わる。2010年香港に渡り、サービス業を経験後帰国。香港を活用したビジネスチャンスを日本企業に広めるべく、日々邁進している。