譚仔米線の買収で注目浴びる

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)


株式会社トリドール
取締役経営企画室長 小林寛之さん

【プロフィール】
大学院在学中に公認会計士試験に合格。修士課程を修了後、大手監査法人にて監査業務に従事。その後、国内証券会社系のプライベートエクイティファンドにおいて電子機器メーカー、外食企業等のバイアウト投資およびその後のハンズオンでの経営改革を経験。2014年に株式会社トリドールへ入社。16年に執行役員に昇格し、17年に取締役に就任。

——本格讃岐釜揚げうどん「丸亀製麺」をはじめとした多数の飲食ブランドを展開している御社ですが、香港市場の魅力について教えてください。

 人口密度が高くどの通りにも人が溢れているエネルギッシュな街ですね。隣に中国本土という巨大なマーケットを抱え、アジアのハブとして世界中の人々が行き交う場所は大変魅力的です。とはいえ不動産価格の高騰が続いている香港は賃貸料が高くビジネスをする上で苦戦を強いられる厳しい面もあります。有難いことに進出して以来、香港での売上高は順調です。

——どのような点が売り上げを伸ばしているのでしょうか。

 海外展開する際に常に留意している点は「価格帯」です。香港で展開しているのは「丸亀製麺」であり、日常的に食していただきたい食べ物です。気軽にリーズナブルな値段で食べていただける、現地の人に愛される商品を目指しています。こうしたことが売り上げにつながっていると思いますね。できる限り現地調達をするようにして、コストを抑えたうえで日本の味に近づけるように努めています。とはいえ地元の人たちになじみのある味も大切にしたローカライズしたメニューも開発しているんですよ。

——香港で受ける味とはどんなものでしょうか。

 日本の方はシンプルな味や、かけうどんを好みますが、香港や中国本土の方は「味がはっきりしたもの」「肉がのっているもの」などを好む傾向がありますね。また豚骨スープ、トマトベースのスープなど中華圏ならではの人気の味はそのままメニュー化しています。こうしたメニューは日本では提供しておらず中華圏限定のもの。まさに現地のニーズに合ったものを提供しています。日本から来られる方も丸亀うどんでは現地限定のメニューを楽しむことができますよ。

——2017年5月に「譚仔雲南米線」のグループ化発表に加え、同年11月には「譚仔三哥米線」もグループ化すると発表し、両社とも18年1月末に株を取得しています。理由と経緯について教えてください。

 米線という中国独自の食文化は日本では馴染みがないため、「譚仔雲南米線」「譚仔三哥米線」についてあまり把握しておりませんでした。実際に両店に出向き、香港の皆さんにどれほど支持されているのか実感し、非常にポテンシャルの高さを感じたので今回の話が実現しました。「丸亀製麺」は今後も展開はしていきますが、香港の皆さんとってより日常的に食べられるのは米線ですよね。

——今後は「譚仔雲南米線」「譚仔三哥米線」ではメニューを変える予定はありますか。

 基本的には何も変えません。両店とも価格もメニュー内容もシステムも、これまでと変わらず維持していくつもりです。価格、味はさることながら、トッピングや辛さを選べる、カスタマイズする楽しさにあると思うのですね。さらにサイドメニューが豊富ということも若年層を中心に人気が高い理由だと思います。食べる楽しさ、面白さを知った人に受け入れられたのが成功につながっていると思います。

——日系企業の地場ブランドの買収は珍しいかと思いますがその点はいかがでしょうか。

 過去にもオランダとマレーシアの麺専門店を買収しており、今後も魅力的な店舗があれば積極的に事業拡大をしていきます。香港では「譚仔雲南米線」「譚仔三哥米線」の両ブランド合わせて年間10店舗程度の出店を見込んでいます。

——中国本土での展開はいかがでしょうか。

 香港の隣に位置する深圳や広州などを考えると、「広深港高速鉄路」が今年開通すれば香港を中心としたその一帯地域が大きな経済圏になるので期待しています。また東南アジアなどでも中華圏の方は多く住んでいるので、こうしたエリアを中心に展開を検討しています。弊社は現状、国内外に1500店舗以上展開しており、将来的には2025年に売り上げ5000億円、世界の外食業界でトップ10に入る目標を掲げています。この目標を実現するためにも、現地でしっかりしたパートナーが見つけられるかどうかが重要なポイントですね。

(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

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