「北海道への投資誘致セミナー」
開催
北海道庁、香港総商会とジェトロ共催による「北海道への投資誘致セミナー」が1月15日、香港総商会で開催された。北海道からは高橋はるみ知事らが登壇した。会場には投資家、航空会社、金融など関係者らおよそ100名が参加。セミナー後に高橋知事に話を伺った。
香港から北海道への観光客は過去5年で3倍に増加、2016年度には17万人を突破している。リゾート地として人気のあるニセコ町は、特に海外資本による投資が盛んで全体の約6割は香港資本によるものだ。セミナーで講演した北海道知事の高橋はるみ氏は「北海道と香港の経済交流は成熟段階。さらに次のステージに進めていく必要がある」と述べ、観光産業と食関連産業の分野への投資を呼びかけた。
2016年の北海道の食の輸出額は702億円で、ナマコ、ホタテなどの水産品が約8割を占めるなど、香港は第2位のシェアを誇る。道では一層の食の輸出拡大に努めており、2025年までに年間の食の輸出額1500億円の達成を目標に掲げている。
高橋知事は1月14~16日に香港を訪問した。アジアのゲートウェイである香港の重要性を踏まえ、食、観光、投資などの交流をさらに加速させるため、道経済界とともに香港を訪問。滞在中は投資関係者との意見交換および投資誘致セミナーを実施し、北海道への投資誘致に向けたPRを行った。また香港貿易発展局と覚書を締結し、経済交流の促進に向けた協力体制を構築した。
キャセイパシフィック航空ではロナルド・ラム取締役ら、香港航空ではヴィトー・ジャン副総裁らと、既存路線の増便、道内地方空港の活用、路線拡大などについて意見交換した。このなかでキャセイパシフィック航空は春節(旧正月)あたりで旭川空港へのチャーター便を運航する計画を明らかにした。キャセイパシフィック航空は札幌/千歳〜香港線を1日2便、香港航空は札幌/千歳〜香港線を週11便運航している。
インタビュー
北海道知事 高橋はるみ氏
——今回は香港への視察訪問が短期間(1月14〜16日)ではあるが、手ごたえは感じているか。
短い滞在ではあるが、大変有意義な時間となった。今回実施した「北海道投資誘致セミナー」のなかでも触れたが、香港からの来道者数は5年で3倍に増え、2016年度には17万人を超えた。人口当たりの来道者数では世界一であり、リピーター率が高いのも香港の特徴。海外資本による投資が盛んな場所であるが、直近3年間では全体の約6割が香港資本によるもの。香港の活況は地場資本が牽引している。
セミナー会場には、投資家、航空会社、金融などの関係者らが多く来られ、皆さんの意見を聞くことができ大変有意義な時間となった。今後さらに関心が高まってくるのではないかという手ごたえを感じている。
——食関連産業については。
観光だけでなく、北海道の食材の輸出先としても、香港は多くのウェートを占めている。道産品の輸出では、香港は第2位のシェアを誇っている。主にナマコ、ホタテなどの水産品が約8割を占めているが、近年は菓子等の割合も増加している。
香港で加工・中継して様々な国・地域へ輸出されていくかと思うが、北海道の新鮮でおいしい食材を有効活用して、香港の流通の方々、加工、小売り関係者の皆さんと提携してさらなる相互におけるビジネスチャンスが広がればと思う。
——セミナーでは「北海道と香港の経済交流は成熟段階にある」と話していたが、観光業がさらに事業を拡大していくためにどのようなことが必要か。
現在、訪日外国人来道者数は5年で4倍に増え、 2016年度には230万人を数えている。今後はさらに2020年度までに訪日外国人来道者数を年間500万人に倍増させることを目標に掲げている。
国際線の路線は拡大しており、現在8カ国・地域の17都市とつながっている。また国際線が就航しているのは道内3空港だが、それ以外にも国際線対応可能な空港があり、道内の各地域に直接航空機で乗り入れることも可能だ。今回の訪問中にはキャセイパシフィック航空を訪問し、就航の提案をさせていただいた。キャセイパシフィック航空は現在、札幌/千歳〜香港線を1日2便運航しているが、千歳だけでなく旭川空港でのチャーター便乗り入れを計画している。旭川が位置する道北エリアには様々な観光資源がある。たとえば、ラベンダー、美瑛の広大な花畑は間近でみるととても迫力がある光景だ。香港の方に人気のニセコ、札幌などの観光地以外の北海道の魅力を知っていただき、視野を広げていただければと思う。北海道ブランドは他に、酪農、スイーツも自信をもっている。この分野でもさらに幅を広げて、道産品の輸出を拡大していきたい。
——現在、香港は年間200万人を超える人々が訪日しているが、今後の観光客数の伸びは鈍化して日本のなかでも競争がより激しくなると推測される。今後どのように観光客を伸ばしていくか。
香港の皆さんが北海道に行くとき、直行便で行く人もいるが、羽田、成田で乗り継いで北海道に来られる人も多い。わざわざ飛行機を乗り継いで行くということは、ついでに、ではなく「北海道に行く」という強い目的意識をもってこられる人が多いと思う。
2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催時に北海道はサッカーの会場となり、2026年の札幌冬季オリンピック・パラリンピック開催に向けて招致活動を行っている。また今後は東京と道南の函館を結ぶ北海道新幹線が札幌に延伸されるなど、より北海道へ旅行することが円滑になる。こうしたなか、北海道は多様な観光資源が全土に広がっていることを反復継続的に香港の方々に伝えていくことが大事。北海道の魅力が他にもあるという売り込みをしていくことで、お客様を増やす可能性、潜在力はどの地域よりも大きいと思っている。札幌、旭川、函館ブランドを重視しながら、北海道全体としてのブランドイメージを世界に発信することに今後さらに力をいれていきたい。
(このシリーズは月1回掲載します)
【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/