⑴一地両検問題と不幸せな香港人
昨年12月10日の日曜日、私の友人で運動とカメラの撮影が好きな53歳の法廷弁護士、潘英賢(アルバート・プーン)さんが、ハイキングした後、郊外で水泳中に溺れて亡くなりました。追悼の意を表し、今回はアルバートさんにきれに撮ってもらった私ケリー・ラムの写真を載せます。
彼の突然の事故のように、人生はいつどうなるか分かりません。誰も明日のことを予言できません。だからハッピーな毎日を送るべきなのに、現実世界ではいつも争い事が起きています。妖怪都市に変貌してしまった香港(本紙1488号参照)で生活している人たちは毎日お互いに一歩も譲らないようにけんかしています。例えば最近では、今年末に開通予定の中国深&`・広州・香港を結ぶ高速鉄道に採用される「一地両検」について論争が起きています。
「一地両検」とは2つの地域の通関・検疫・出入境管理を1カ所で行うこと。西九龍駅内につくられる入境フロアと出境フロアの両方に香港側と中国本土側の税関・出入境管理所エリアが設置され、双方各自の法律に基づき手続きを行うことが決まりました。しかし、この一地両検に関する決定は香港の普通法か中国本土の大陸法のどちらの法理で理解すべきか、議論となっているのです。
今年1月8日に行われた2018年法律年度開始式典でも、香港法廷弁護士協会の林定国(ポール・ラム)会長が「一地両検は基本法に違反する」というような発言をしました。簡単に言えば、「基本法付属文書3に列記された以外の全国的法律は実施できない」と明記された基本法18条に反しますから、一地両検を施行するのは基本法に違反する大問題なのです。「一地両検」の問題は、1997年の返還以降の香港最大の問題になると思います。
「一地両検」をきっかけに論争激化
さらに事態が悪化するような状況も見えます。1月18日に行われる弁護士協会の会長選挙を控え、ラム会長は続投を表明。実は伝統と慣習によって会長は2年連任することになっていますが、強力なライバルが出現しました。人権に関する案件ばかり処理して数えられないほどの実績を持ち、いつも人権と民主の主張をするPhilip Dykes(フィリップ・ダイス)氏が出馬を表明しました。この人権弁護士は、香港で1400人ぐらいいる弁護士たち(投票者)に弁護士協会のスローガンをアピールしています。結局、人権弁護士のダイス氏が620票獲得し、現職のラム氏に109票の差をつけて当選。1月19日から会長になりました。弁護士協会は今後「一地両検」に関して中央政府と香港特区政府を相手に強硬な姿勢をとることは間違いないと思います。
頻繁に民主の主張や人権を応援する弁護士たちはすでに長年、メディアを味方につけて、法律に関する意見を発表してきました。中央政府や香港特区政府の決定がどのように基本法に違反するかなどを強く発言してきました。「一地両検」をきっかけにして、もっとこういう弁論は激しくなるでしょう。政治、法律、メディア、裁判も互いに絡み合ってメチャクチャになるに違いありません。
皆が巻き込まれる法律戦争
弁護士はメディアを利用して、メディアも弁護士を利用して毎日、法律戦争をしています。今では立法会、学校、教育界、メディア業界にも完全に政治、人権、民主の戦争が介入していて、まるで戦場のようになってきました。裁判も政治・法律戦争に当然巻き込まれると思います。最近も極一部の市民を激怒させる裁判がありました。2014年のセントラル占拠運動のさなかに7人の警官がひとりの参加者に暴行した事件では、全員が有罪となり2年間刑務所に入るという判決が出ました。これには警察を応援する団体、市民が大変不満を持ち、反対しました。また旺角で市民を現場から追い出すために警棒で打った警司が17年12月に裁判で有罪判決を受け、今年1月に禁固3カ月が言い渡されました。
警察を応援する団体、市民は激怒して裁判と裁判官をひどく厳しい言葉で非難しています。どうして今までセントラル占拠運動の首謀者30余人が起訴されてないの? 起訴された3人のリーダー格の裁判をなぜまだやってないの? 香港大学で法律を教えている戴耀廷(Benny Tai)教授は違法行為である占拠運動を扇動したのになぜ現在まだ大学で堂々と法律を教えているの? と疑問を感じているのです。
大変残念ですけれど、今年も言うまでもなく、法律業界もこの戦争に巻き込まれることになるでしょう。
香港は不幸せランキング上位に
香港はいまやアンハッピーな国・地域の世界第7位になってしまいました! 世論調査とコンサルティングを行う米ギャラップ社による調査で、世界55カ国・地域のうち一番ハッピーじゃないのはイラン、第2位はイラク、香港は第7位でした! この結果にとても驚く人もいると思いますが、私は当たり前の結果だと思います。なぜなら1960〜90年の香港は世界で一番平和的で、一番繁盛している場所であり、香港人は一番ハッピーな人間でした。それなのに90年以降は段々とアンハッピーな人間になってきたことを、私自身が目撃し体験してきました。中国に返還されてからもう20年、あと30年続く一国二制度ですが、今後の30年間で、必ずいっぱい前代未聞の政治、人権、民主、法律の争いがどんどん発生するはずです。香港は必ず次回の調査で第7位よりもっと上になるでしょう。4位か5位に上がる条件、潜在能力がありますから。アンハッピーの世界一になるのは、もはや時間の問題です。
自分を信じてハッピーに
前置きが長かったですが、「ハッピーになる」「妖怪都市で成功する秘訣」、実はこれこそ今回のコラムのテーマなのです。どうやって一番アンハッピーな場所でハッピーな人になるか、これこそ一番知恵が必要とされることでしょう。私が最も簡単に証明できることは、ハッピーな人間になりたければ自分自身を信じるということ。がっかりしても、失敗しても、失望、絶望しても絶対倒れないような回復力を持ち、自信たっぷりに自分を信じなければいけません! 争いになっても必ず自分で生きていける、重い病気にかかっても自分で必ず克服できる、大失敗しても次回必ず優勝する、という気持ちや決意、根気を持たなければいけません。ある程度、ミラクルを信じなければいけない。ミラクルを信じなければ、ミラクルはなかなか実現できません。しっかり全身全霊で信じていればミラクルは最終的に実現できるのです。
ミラクルを信じるパワーを持っているならどんなに周りで毎日けんかが起きて、悩みが生まれても、大丈夫。ミラクルを信じれば、私の人生はきっとこれから自分で期待するミラクルが順番に実現できると思うのです。信じられないことかもしれませんが、私はずっとそう考えてきて、そして実現しました! 1995年に香港で行われたある我慢大会で私は優勝し、優勝賞品として日本車をもらいました。50人の参加者のうち外国人もけっこういましたし、周囲には優勝候補だとは思われていなかったけれど、3日間睡眠なしで頑張って、片手で車を触ったまま、立ったままで、私は自分が優勝すると信じ続けました。優勝の秘訣は自分を信じて優勝する決心を持ったことです。
いろんな信じられない似たような経験で「信じるパワー」を確信しましたが、最近もあるミラクルな出来事がありました。私が失くした携帯電話が無事手元に戻って来たという幸せなミラクルについては次回お話しすることにしましょう。
ケリーのこれも言いたい
われわれはきっとアンハッピーな人間のチャンピオンになれると思う。たいへん皮肉な話だけれど、香港人全員に頑張ってくださいと言いたい。そうなる運命から逃れられないのだから、しっかり頑張るしかないでしょう!