経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)
株式会社明治
菓子商品開発部部長 伊田覚さん
——チョコレートなど菓子類市場が白熱している香港をどうご覧になっていますか。
様々な国籍の人がいる香港での弊社のチョコレートのマーケティング展開ができるのは大変嬉しいことです。欧米からの輸入商品も多く入ってきているので、大変グレードの高い人が多いと感じています。市場のポテンシャルは高く、日本よりハイクラスの商品がある店舗も多いですよね。
——今回、香港で販売する新商品はどのようなものなのでしょうか。
これは非常に品質が高く高価な豆を使用したブランドになります。その豆の特徴を生かすためにほとんどの商品は無香料、豆本来の味だけで楽しんでいただけるものです。製造する時の条件や特徴を引き出すためのローストをどうするか、などを緻密な試験を行った上で作っています。実はこの生産手法はハイエンドのチョコと作り方はほぼ同じなんですよ。これを量産化したのが今回発売するThe Chocolateになります。
——製造過程にどんなこだわりがあるのですか。
カカオ香料やミルク香料を一切使用せず、厳選したカカオ豆を使用して明治指定の発酵を行い、焙煎から調合、成形までチョコレート製造の全工程を自社で行い、こだわり素材の味を表現しました。今回香港ではダークチョコレート2種、ダークミルク2種、抹茶の計5種類販売となります。ダークチョコレートの2種はいずれもカカオ粉70%で、残りが砂糖、香料は使用していません。抹茶チョコレートはホワイト、ミルク系のチョコレートに合わせて作るのが一般的なのですが今回弊社がチャレンジしているのは、カカオの苦み、旨みと抹茶の苦み、旨みというのが混ざりあってこれまでにない味を作るためにあえて「ダーク系のチョコレート」と混ぜていることです。より本格的な深みと渋みを感じられる味を実現しました。さらに板チョコの形態を進化させ、1枚のチョコレートそれぞれ異なる模様をつけることで割り方、舌触りが違うことで味わいの変化を楽しめるようにデザインしました。トレンドを知り、チョコレートを食べ慣れている特に30〜40代の女性をターゲットにしています。
——進出されたのが17年11月ですが、ちょっと冷え込む時期はチョコレートの売り上げが影響されるのでしょうか。
年末と年明けにはクリスマス、バレンタインデーというイベントなどがあるなかで、気温が低くなるエリアではこれからがチョコレートのハイシーズンなんですよ。
——寒い時期のほうがチョコレートは売れるんですね。
そうですね。秋から2月までが1年のなかで最も売れる季節になりますね。ちなみに世界で一番チョコレートを食べられているエリアはどこかわかりますか。北欧あたりは年間一人当たり8キロのチョコレートを消費するんですよ。一方で日本は2キロ、香港はさらに落ちて1キロほどなんです。寒さが短い南国地域ではありますが、多くの人に愛される商品に育ってほしいと思います。今後は長期間かけてじっくりと定着させていきたいです。
——商品をより知っていただくための「カカオ体験ブース」を今後設置するそうですね。
今回の香港への本格的な進出に伴い、本商品のコンセプトである「Bean to Bar(製造工程の全てを自社で一貫して行うこと)」を学べるワークショップイベント「明治ザ・チョコレートpresents カカオスクール」を定期的に開催していきます。カカオ豆からチョコレートになるまでの一連の過程をプレゼンテーション形式でご紹介し、普段見られない貴重なカカオポットを実際に手にしていただきます。こうすることで、チョコレートについて深く知る機会になりますし、商品をより楽しめるように工夫しています。すでに台湾で開催していますが、工程が見えることでチョコレートがもっと身近に感じられる、という声が多かったですね。チョコレートは実はシンプルな原料で作られており、安心安全の下で製造されています。アジア圏でのさらなる販売拡大にむけ、長時間かけてじっくりと商品を育てていきたいですね。
(この連載は月1回掲載します)
【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/