加價
上昇する一方の香港の物価。今年も「加價(値上げ)」の嵐が止むことはなく、庶民には厳しい年になりそうだ。
香港では1月に入って郵便料金、光熱費、私鉄の運賃やテーマパークの入場料、ファストフードなどが一斉に値上げに踏み切った。近年、香港の物価は上がることはあっても下がることはなく、不動産価格の高騰と相まって、天井知らずのインフレが市民生活を圧迫している。
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1月1日、郵便料金の価格が改訂された。実質的な値上げは2013年10月以来。新料金では香港域内の郵便物は、30グラムまでの定型封筒が現行の1・7ドルから17・6%増の2・0ドルとなった。さらに国際郵便は20グラムまでのエアメールの場合、上げ幅は97・3%で、これまでの2倍となる。
光熱費では、中華電力(中電)と香港電灯(港灯)の2社が1月1日からそろって電力料金を値上げした。基本料金のほか特別控除も合算した上げ幅は2社ともに1キロワット当たり1・9%。値上げは中電で2年ぶり、港灯では4年ぶりだ。特区政府環境局は、特別控除に支えられ電力料金の上げ幅は2%未満に抑えられているが、将来的には大幅な値上げもありうるとの認識を示している。
水道料金も今年初めから値上げする。香港の飲用水は広東省の東江から供給されており、3年に1度の契約更新が2017年末に満了を迎えた。新契約の購入額は旧契約(2015〜2017年)の134億9000万ドルから、3年契約で144億2000万ドル、上げ幅は6・88%となる。過去3年間の人民元の上昇と広東省・香港両地の物価上昇率を考慮するとこの上げ幅は妥当だという。
ガス料金はすでに昨年の8月1日に値上げが行われており、標準料金の上げ幅は4・6%だが、燃料価格の下方修正後の実質的な上げ幅は4・3%となっている。
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交通各社も1月から値上げを行う。トラムは1日から価格改訂を実施しており、乗車賃は大人初乗り2・3ドルが30セント上昇の2・6ドル。子供と高齢者はそれぞれ10セント上昇、子供(3〜11歳)は1・2ドルから1・3ドルに、高齢者はそれぞれ1・1ドルから1・2ドルとなった。
さらに、NWSホールディングス(新創建集団)傘下の新世界第一バス(新巴)とシティバス(城巴)の2社も今年始めに約10年ぶりの運賃改定を行う。新運賃の上げ幅は約12%、香港島内の路線の85%は1ドル以下、海越えの路線の70%は2ドル以下に抑えられる見込みだ。
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オーシャンパーク(海洋公園)は2016/17年度の決算で昨年に続き赤字となり、さらに運営コストの上昇や拡張工事に伴った債務償還の名目で1月1日から入場料の価格を成人料金は438ドルから480ドル、子供料金は219ドルから240ドルに改訂する。上げ幅は9・6%となる。
テーマパークでは、香港ディズニーランドが入場料を5年連続値上げしており、昨年は12月15日から入場券(ワンデーパスポート)が値上げされている。上げ幅は平均5・8%、一般(成人)が589ドルから619ドル、12歳未満が419ドルから458ドルとなっている。
香港ディズニーランドは2005年の開園当時こそ295ドル(一般・平日)と、世界のディズニーランドの中でも最も安い価格を設定していたが、今では入場料がその倍以上に跳ね上がっている。面積では「世界最狭」のディズニーランドだが、料金では東京(約510ドル)、上海(約470ドル)を大きく上回り、パリ(約637ドル)と肩を並べる。仮に今年も値上げすれば6年連続となり、入場者への影響が懸念される。
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1月2日にはファストフードチェーン大手マクドナルドが値上げに踏み切った。『香港経済日報』によるとマクドナルドの価格改定は同日午前4時から実施となり、対象は単品メニューとドリンク、一部のセットメニューで、上げ幅が最も大きい単品のビッグマックは旧価格の17・5ドルから改訂後は19ドルとなった。
香港マクドナルドは、上げ幅は平均2%であり、最新の消費者物価指数(CPI)で食品が前年比2・3%上昇していることと比べると値上げは緩やかだとコメントしているが、『香港経済日報』の調査によると、一部店舗では上げ幅が3%から8・6%に達するものもあった。
ファストフードでは大快活(フェアウッド)や美心(マキシムズ)が昨年、値上げしており、商品によっては上げ幅が物価上昇率を上回っているものもある。
値上げの主な理由は各社とも不動産、食材、人件費などの運営資金の上昇によるもので、交通各社はこれに加え、広告収入の減少、MTR南港島線開通による乗客の減少なども挙げている。
(この連載は月1回掲載)