英ティクトゥムが優勝
2017マカオGP
最終周でクラッシュという波乱の展開
第64回マカオ・グランプリ(以下マカオGP)が11月16〜19日、公道を閉鎖して作られたギア・サーキットで開催された。優勝したのはダニエル・ティクトゥム(英国)だったが、最終ラップの最終コーナーでのクラッシュが影響するなど、大波乱のレースとなった。日本人は牧野任祐の9位が最高位だった。
(取材と文・武田信晃)
日本人は7人。シューマッハとピケの息子も参戦
2017年は26人がエントリーし、日本人は、牧野のほか、宮田莉朋、坪井翔、関口雄飛、山下健太、Dragon(組田龍司)、佐藤万璃音の7人で、国別では最大の人数が参加した。また、ミハエル・シューマッハの息子、ミックとネルソン・ピケの息子、ペドロというF1チャンピオンの子息2人も参戦し話題となった。
ポールポジションを獲得したのは、土曜日の予選レースを勝ったカラム・アイロット(英国)で、ジョエル・エリクソン(スウェーデン)が2位。エリクソンと同じチームで参戦するセルジオ・セッテ・カマラ(ブラジル)が続いた。なお、同じ土曜日に開催されたモーターサイクルのレースでは、英国のライダー、ダニエル・ハガーティがフィッシャーマンズ・ベンドでハイサイドというオートバイで頻繁に見られる現象を起こしてクラッシュ。死亡する悲しい出来事があった。
レース当日は、朝から小雨が降り、路面がぬれていたが、幸いにもF3が走行するころには路面が乾いた状態になった。レーススタート後の事実上の第1コーナーであるリスボア・ベンドに最初に進入したのは好スタートを切ったエリクソンで、アイロットは2番手に落ちた。ただし、1周目に佐藤がクラッシュし、今年から導入されたフルコースイエロー(FCY。全区間追い越し禁止)になる。3周目のFCYが解除されるが、リスボアでトップ2台が接触。エリクソンとアイロットのマシンは両方ともダメージを受け、リタイア。これで先頭の2台がレースから消えた。
代わりにトップになったのがカマラで、2位にマキシミリアン・ギュンター(ドイツ)、3番手はフェルディナンド・ハプスブルク(オーストリア。欧州の名家、ハプスブルク=ロートリンゲンの出身)となる。その後、関口が止まっているところに山下が突っ込むというアクシデントがあるなど波乱続きだったが、7週目からは大きなクラッシュもなく順調に周回を重ねていく。
シューマッハ対ハッキネン以来の劇的なレース
11周目、ハプスブルクが2番手に上がり、14周目になると3番手には8番スタートから順位を上げてきたティクトゥムがつく。最終周はハプスブルクとカマラがリスボアまで並走するが、コースの内側を守っていたカマラがトップをキープ。しかし、ハプスブルクはメルコヘアピンを抜けるとカマラの後ろにぴたりとつき、最終コーナー手前でアウト側からついにオーバーテイク。しかし、2台はバトルでブレーキを遅らせすぎたため最終コーナーを曲がり切れず両者とも壁にクラッシュ。その横をすり抜けたティクトゥムがマカオを制した。これは1990年に最後のラップで後のF1王者になるハッキネンとシューマッハの語り草となっているクラッシュを思い起こさせた。
ティクトゥムは「表彰台を狙っていたから、勝ててうれしい。みんなラッキーというだろうけど、最終コーナーまでに順位を上げていたからこそだと思う」と勝利について恥じることなく堂々としていた。ハプスブルクは「クラッシュしたとき、すべてを失ったと思って泣いたけど、2位でチェッカーを受ける気は100%なかった。あのケースは勝つかクラッシュだったけど、クラッシュの方が出てしまった。でも、この週末のことは誇りに思っているよ」と語った。