農業女子のプロジェクト

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

農業女子フェア in 香港プロジェクト 
ディレクター 貫井香織さん

【プロフィール】
1978年埼玉県生まれ。成蹊大学経済学部卒業。卒業後は採用コンサルティング会社、PR会社を経て2008年就農。原木しいたけ・緑茶の生産から販売まで携わる。日本グローバルファーマー連絡協議会を立ち上げ会長就任し「農業女子フェアin香港」の企画・運営を実行する。

——「農業女子のプロジェクト」とはどんなものなのでしょうか。

 農水省が新事業として2013年に発足させたものです。当初はおよそ30名でスタートしましたが、現在は600名を超えるまでに成長しました。主に日本各地で農業を事業にしている女性たちが日々の生活や仕事などで関わった知恵や提案から企業の技術、ノウハウ、アイディアなどと結び付けて新たな商品つくりを作りだすことです。こうした活動を通して農業をより身近に感じてもらうのと同時に、農業で活躍する女性を知っていただく取り組みです。

——これまでどのような商品をつくられたのでしょうか。

 例えばダイハツ工業とは農業女子の軽トラックの使用実態やニーズの明確化に基づいた新型ハイゼットトラックを実現させました。井関農機とはトラクター「しろプチ」を開発。これは15・8馬力と小型で低価格のトラクターです。シャープとは泥汚れの悩みを解消する洗濯機の開発、丸山製作所とは女性に優しい草刈り機「かる〜の」の開発など様々です。こうした商品はすべて企業と農業女子のコラボレーションで生まれました。私たちは常に新しい取り組みと挑戦をしており、女性が農業と関わることが「楽しい」と思えるような提案をしています。その延長線として海外でも活動をするようになり、私たちが生産加工したものを販売していこうと集まったのが「農業女子プロジェクトin香港」です。今年1月に初めて開催して以来、9〜10月に再び開催できました。参加メンバーは北は仙台から南は屋久島まで17名が香港のイベントに参加しました。

——在香港日本総領事館主催の「日本秋祭りin香港」の一環として開催されましたが大盛況でしたね。

 無事に終わってほっとしました。海外では現在は香港のみですが、日本から一歩出ることで農業女子同士の連帯感や積極性も高まったと感じています。さらに今回のイベントでは改めて「継続していくことの重要性」をとても感じました。初回の時は私自身も初めてのことだったので何かと不安要素も多かったのですが、2回目は気持ちに余裕がでてきたのか、もっとこうしようという改善点や新たな目標がしっかりと立てられたのが良かったです。改善した点というのは売り方を工夫したことですね。前回は手探りのなか個々の商品を売っていくという感じでしたが、今回はメンバーそれぞれの農産物を組み合わせて新たな商品を作りました。例えば複数のぶどう生産農家のブランドをミックスした「ぶどうのバラエティセット」は、一度に様々な味と食感を楽しんでいただきたいと作ったものです。また高知県産のサツマイモを生産しているメンバーは、香港でも人気の日本のサツマイモを、ちょっと違う形で楽しんでもらいたいと「サツマイモのディップ」を作りました。

——日本と香港では売れ方は違うものですか?

 温かくして食べる料理をメーンにサツマイモ、かぼちゃ、ごぼうなど特に根菜類が人気です。また「和食を自分で作りたい」という声が前回多かったので、今回は生産地と生産農家の紹介とともに和食レシピをリーフレットにして配布し、作り手がしっかり見える形にしました。農産物が身近になり、その土地に行ってみたいという人が増え観光誘致に繋がればいいと思います。

——香港市場での今後の取り組みについて教えてください

 今回、初めての取り組みとして、香港内のレストランで農業女子プロジェクトで取り扱っている農産物を使用した「期間限定の特別メニュー」を提供しました。これが予想以上に大好評で次回もぜひやってほしいという声が多く寄せられました。今後はデパートやスーパーで販売するだけでなく、レストランへの出荷量を増やしていきたいですね。今は(10月の秋のイベントが)終わったばかりですが、すでに次のイベントに向けて着々と進めていきます。日本の魅力をどう発信していくか、やりたいことは沢山あり、とても楽しみです。私たちの取り組みを世界に伝えていくことで、つながりの輪を広げていきたいですね。(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログ http://nararisa.blog.jp/

 

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