現職女優ゆえの卓越した表現力
2017年はTVB(無線廣播)が地上波放送を開始して50年目。そのTVBが1973年に始めた香港小姐(ミス香港)は同局の看板番組となって今年で45回目を迎えた。
今年の選考は新機軸ずくめだった。總決選に残った10人の美女たちは二人ずつ組まされ歌唱、ダンス、器楽演奏、料理などの才芸(特技)で競い合い、まず10人から8人に絞られた。8人はビキニ姿の泳装(水着)を披露したのち、培訓(育成)を担当してきた「教授」と称する評判団(審査員)との口頭試問に臨み、さらに5人に絞り込まれた。この5人から2人が振るい落とされ、残った3人で冠軍(優勝)・亞軍・季軍(准ミス1~2位)を分けあう仕組み。
三輪(3次)にわたって下位から失格させていく末尾淘汰制は湖南衛視の人気番組「超級女声」がひな型にある。中国でさまざまな視聴者参加番組に採用され、香港小姐にも逆輸入された。そして、これらの淘汰には数十万の視聴者の手機(携帯)投票も反映されている。
冠軍を射止めた雷莊兒(ジュリエット・ロイ)さんは、170センチを超える長身で最上鏡小姐(ミス・フォトジェニック)とのダブル受賞。現職の女優さんだけあって、卓越した表現力で点数を稼ぎ、下馬評の高かった伍樂怡さん、何依婷さんを押しのけての栄冠となった。
だが、地元メディアは平穏ではない。カナダで3年付き合っていたという年の離れた「元カレ」と歯科医の「今カレ」がいると、早くも写真入りで丑聞(醜聞)報道が始まっている。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者・和仁廉夫(わに・ゆきお)
1956年東京生まれ。香港で第2次大戦期の日本占領史跡などを扱った『歳月無聲』(花千樹出版・中文)を出版。中国ミスコンに関しては、「広州『姿』本主義〜香港返還もう一つの意味」(霞山会『東亜』2009年9月号)がある。