いよいよ北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が米国領グアム島に飛来しそうになってきた。グアム周辺に着弾する弾道ミサイル発射計画はいつでも行動に移すことが出来、北朝鮮の対米カードとなった。米国は北朝鮮の後ろ盾である中国に北朝鮮の核開発を断念させるように協力を要請してきたが、トランプ政権はその協力をあてにしていない。
(ICGインベストメント・マネジメント代表・沢井智裕)
北朝鮮は中国にとってこれまで「便利な国」であった。北朝鮮が社会主義体制を維持し、同類項として韓国の米軍の前線に立っていてくれれば中国が駐留米軍と国境を接することはない。だから北朝鮮の貿易の約85%は中国が相手であったし、北朝鮮絡みのビジネスをしている中国企業は5000以上に上ると言われている。
しかし北朝鮮が瓦解して韓国に吸収されるようなことになれば、韓国に駐留する米軍が歩を進め、北朝鮮と中国の国境付近に駐留する。米国は国境付近で中国に睨みを利かせることが出来るようになる。中国としてはこのような状況はなんとしても避けたかった。だが北朝鮮が核開発を断念せずに、米国本土まで大陸間弾道ミサイルに核を搭載して発射できるようになれば、米国本土はもとより、最近では経済制裁に対する報復措置として在日米軍もターゲットにし始めている。つまり北朝鮮は「日本本土をターゲット」にしているのだ。日本が戦争に巻き込まれる可能性は非常に大きくなっている。
中国にとって最も警戒すべき事は「日本国内で核保有」議論が高まることである。日本が核武装してしまったら、中国の軍事力は日本に対抗できなくなる。中国にとっては悪夢なのだ。もし北朝鮮がミサイル発射を行い、間違って日本に着弾するような事があったとしたら、日本でも核武装を議論する環境が整ってしまう。日本の閣僚経験者から聞いた話では「一般的に日本が核開発を計画してから完成まで約1カ月程度」だそうだ。企業名を公表する事は出来ないが、重厚長大産業の上場企業は一瞬にして軍需企業に様変わりする。「日本は約1カ月で核保有国に変わる」と言われている。そんな訳で中国にとって、北朝鮮は今やお荷物になってきている。北朝鮮のよりグレードアップした核開発を断念させることは、中国の国益でもあるという複雑な状況となった。
北朝鮮どころではない
中国も出来る事ならば、北朝鮮には穏便に振る舞って欲しいに違いない。昨年初の中国株安、人民元安をようやく沈静化させた。国内では金融緩和政策で資金をばら撒き、資本鎖国政策を遂行して国際通貨基金(IMF)による批判を受けながらも、資金を海外に流出させない努力もしてきた。しかし国内では新たな火種が発生している。これまで優遇され、利権を大いに活用してきた国有企業である大手金融機関とソーシャルネットワーク系のペイメント会社の軋轢である。2016年に中国建設銀行で解雇された行員は3万人、中国工商銀行は1万4000人、中国農業銀行は1万1000人に上る。4大国有銀行にはまだ160万人程度の人員がいるが、本格的な人員削減はこれからである。銀行業務を奪っているのはアリババの支付宝とテンセントが運営する微信支付である。ユーザーは支付宝が8億人、微信支付で4億人と推定される。昨年のスマホなどのタブレットを利用した支付宝、微信支付の決済総額は157兆5500億元となり、中国の経済規模の2倍を上回った。
しかしこれらの親会社のSNS企業に対しては、中国政府が検閲を強化しており、政治や思想に関するこれまで通りの自由闊達な議論が妨げられたり、時には収益機会の損失を招く事態にまで発展している。そこでSNS企業が中国政府にモノを申した。それが例の人口知能(AI)問題であった。ある投稿者が「中国人の夢は何ですか?」と尋ねたところAIは「米国に移住すること」と答えたアレである。優遇される大手国有企業を尻目にSNS企業の小さな復讐ではあったが「一矢報いた」という感覚がSNS企業の幹部にはあったのではないだろうか。
差別大国・米国も内乱
実は米国も本当は北朝鮮問題どころではない。トランプ問題の方が余程、厄介な問題である。先日もバージニア州で白人至上主義派と反対派の間で小競り合いが発生し、1人が死亡する事件が起きた。米国の「白人至上主義」は今に始まった事ではないが、ようやく表面化したというのが実際のところだろう。もともと米国は差別国家で、古くは黒人差別、最近では雇用を奪っているとしてアジア人差別が顕在化していた。
経済格差問題が深刻化し、一時はIT起業家や金融機関の幹部に富が集中したが、ブッシュ政権以来、資産格差は縮小するどころか拡大の一途となり、その他の中堅所得層や低所得者層の生活が困窮し、妬みや恨みはこれら富裕層に集中することになった。しかしマスメディアや米政治家の意図的な情報操作によって、いつしかその批判の矛先は移民や非白人に向けられるようになった。その総仕上げがトランプ大統領の誕生と言ってもいいだろう。トランプ大統領が「白人至上主義」を容認する姿勢をブラウン管で見せたのも驚きはしなかった。米国国民が彼を選択した最大の理由が「白人至上主義」なのだから。移民排除、中国製品への45%課税など、有色人種に対する厳しい政策は裏を返せば有色人種蔑視であった訳だ。
米国の一般社会でさえ差別は根強い。資産格差のない時代は白人も寛大になれた。重要な事は世界から差別は絶対に無くなる事は無いと理解する事と、少なくとも自分達は差別行為を行わないプライドを持つ事である。北朝鮮のミサイル問題、中国のSNS企業と国有企業の内戦、米国における民族対立の深刻化。そんな中、現代を象徴するかのようにビットコインが史上最高値を更新した。8月14日、1ビットコイン=4000米ドルの大台を突破した。仮想通貨はもともと無政府主義による現代金融システムに対抗するために創造されたものである。マーケットにおける数字は人間の行動を表している。数字は常に本音を語っている。
トム:最近のテレビは「不倫ネタ」が多いよなあ。SPEEDの今井恵理子に始まって、雨上がりの宮迫博之。不況産業の代表格であるメディアもそらあ飛びつくよなあ。
ジェリー:だってネタ無いもん。ワイドショーなんてちっとも面白くないでしょ?
トム:でも、なんでテレビでは上原多香子の不倫報道はやらないんだよ?
ジェリー:元旦那が亡くなっているから報道規制が敷かれているのよ。ユーチューブ上では「真実」がたくさん暴かれているから、もう上原さんの芸能界復帰はないでしょう。
トム:不倫相手の阿部力(つよし)、わしは最初はプロレスラーかと思ってたよ。
ジェリー:それは長州力でしょ。「リキ」って書いて、「つよし」って読むのよ。それから彼は元々中国人で、帰化する前の名前は「李冬冬(リー・ドンドン)」よ。
トム:な〜んだ、プロレスラーじゃなかったのか。しかしトントン拍子に不倫問題が解決するかと思ったら、なかなか早く解決できないよな。
ジェリー:いいえ、阿部さんからもう演出家のコウカズヤさんに乗り換えたそうよ。さすがにスピード感あるでしょ?
トム:コウカズヤが在日韓国人って噂が立っていたけど、全然違うみたいだよ。
ジェリー:その言い方って差別でしょ? 白人至上主義を批判出来ないわよ。
トム:でも一つだけ「白人至上主義」を解決できる方法があるぞ。欧米と戦争して「勝つ」ことだ。本当は中国と日本がタッグを組むことが、欧米(白)にとっては悪夢のはずだが、意図的に欧米の策略で対立を余儀なくされている日中(黄)の近代史とは、日中とも馬鹿だよな。トホホホ…。
【白人至上主義】
白人至上主義とは人種差別的思想の一つで、肌の色で分けると英国や米国在住のアングロサクソンのような白色人種が、中国人や日本人のような黄色人種やアフリカ在住の黒色人種よりも優れているという間違った考え方である。アングロサクソン社会で見られる現象である。米国も建国時にはアメリカンインディアンの土地を奪ったし、豪州のアングロサクソンも原住民のアボリジニやメラネシア先住民への迫害を通じて国を開拓していった。奴隷制度を合法として実際に採用していたのは世界で米国と英国の2カ国のみであり、これらの奴隷制度が民族間の「主人と労働者」という関係を構築し、現代の差別として根強く残っていると見る向きもある。
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)
ICGインベストメントマネジメント(アジア)代表取締役
ユダヤ人パートナーと資産運用会社、ICGインベストメントマネジメントを共同経営。ユダヤ系を含め約2億米ドルの資産を運用する。
2012年に中国本土でイスラエルのハイテク企業と共同出資で
マルチメディア会社を設立。ユダヤ人コミュニティと緊密な
関係を構築。著書に「世界金融危機でも本当のお金持ちが損を
しなかった理由」等多数。 (URL: http://www.icg-advi sor.net/)
※このシリーズは月1回掲載します