光陰矢のごとし。7月1日に香港特別行政区成立20周年を迎えるが、1997年に香港でその日を迎えた筆者にとってこの20年はあっという間だった。そう感じるのは仕事で忙殺された毎日のせいもあるけれど、香港返還当時の記憶が鮮明過ぎて、今でも昨日のことのように思い出されるからなのかもしれない▼祖国への回帰とはいっても、当時は周囲におめでたいムードは皆無。香港の友人たちは皆、中国本土の人を差別して「大陸人」と呼んで田舎者扱いしていたし、共産党や返還後の香港の変化を恐れて海外へ移住する人も多かった。返還直前にはBNO(英国海外領民)パスポートの申請に長蛇の列ができたこともニュースになった▼返還当日は大雨警報の最高レベルである黒雨警報が発令される豪雨に見舞われ、「この雨は英国から中国への主権交替を悲しむ香港人の涙だ」と言う人もいた。返還の年に生まれた子供たちが20歳になる今年、香港の人たちはどんな気持ちで7月1日を迎えるのだろうか。 (本)