課文231 「やけどの応急処置」

常備したい漢方オイル

班中八和堂救急華陀‬油(定価は50ミリリットルが68ドル、25ミリリットルが48ドル。編集部調べ)

 この間、大阪の実家に戻った時のこと、お茶を飲むためのお湯を沸かしていた母が、やかんをこぼして手にやけどした。最近ひざや歯の調子が悪いという母のために、飲むのも塗るのもたくさん常備するようにしてるんやけど、やけど用の薬はない! どないしよう? と思いながら、家にある薬の効果効能を見直した。

 その中で、「跌打舊患散瘀祛風、刀傷燙火止血除痛」(打ち身、古傷、しびれ・まひ・筋肉痛・発熱・頭痛など、刀の傷、やけど、止血、痛みを除く)と、効能の一つに「燙火(やけど)」とあるのを見つけた。それが、今回ご紹介する「班中八和堂救急華陀油」。

 実はもともとこれは、母のひざの痛みのために準備したもののひとつ。母的には「ひざの痛いのには、スグに効かない」と、お蔵入りしていた。ゆえに、これをやけどに使おう! と言ったときは、めちゃくちゃ嫌そうやった。でも、ほかにやけどの薬もないし、やけどってスグに対処せなあとしんどいというのもあり、とにかく塗った。

 すると、多分痛かったせいでしかめっ面やった母の顔が、ほころんだ。「塗っただけで、痛くなくなりました」と、母。今までの、やけど経験からして、熱湯を浴びた皮膚は、薬を塗っても時間を置いたら水ぶくれになり、しばらくしんどい。それが、痛みがすっと消え、水ぶくれになることもなく、赤くなってた部分も半日過ぎたころには、それがどこだったかわからないようになっていた。

すごいやん!

 この「班中八和堂救急華陀油」。成分はもちろん漢方。三七(田七)、烏薬、黄柏、独活、蘇木、當帰、乳香、没薬、肉桂、製川鳥、氷片、樟脳。ベースになっているのは椿油。色はこれらの生薬から出た色で赤。塗った後はベタつきがなく、スグに浸透してしっとり。樟脳のにおいがある。

 そして、母は「やけど薬」と認定してしまったが、商品名に「救急」とあるように、虫刺され、かゆみ、打ち身、ケガ(止血)に、効く。すなわち、「すぐになんとかしたいこと」に、効く。古傷やリュウマチなどの慢性の痛みにも効果はあるが、それは、一回でなく、毎日使い続けることによって効果を感じる。

 すなわち、スグの痛みには塗ってスグに、ずっと続く痛みにはじっくり使って効く! 家庭の常備薬としてふさわしい薬。お財布にも優しいお値段なので、スグに使う事情がなくても、買っておくのが良いと思いました!

(このコーナーは月1回掲載)



筆者・楊さちこ
1961年大阪生まれ(国籍:日本)
南京中医薬大学・中医美容学教授・中医学博士
日本と香港・中国のアジアンコスメブームに火をつけた第一人者。大学では「高木祐子奨学金基金」を設立し、中医学の社会的地位の向上に尽力。「いつまでも美しく」 をモットーに美に関する商品開発をはじめとするトータルプロデュースを手がけている。著書は『肌がつるんと若返る「ガーゼ洗顔」』(マキノ出版)、『綺麗なひとは、やめている。』(幻冬舎文庫)、『昨日よりも綺麗になる魔法の習慣』(光文社知恵の森文庫)、『72時間で自分を変える旅 香港』(幻冬舎)のほか、2016年には香港の健康長寿に着目した『世界一の養生ごはん』(小学館)、『香港美人が教えてくれた美しさが永遠に続く6つの法則』(光文社)を上梓。郵便局だけで買える、おいしい家庭料理の本『dancyuクッキング』(プレジデント社)=写真=に長寿世界一「香港」の、おいしい養生ごはんを連載中。

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