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最新号の内容 -20140620 No:1409
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 ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人た ちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。(取材・武田信晃/月1回掲載)

  

第10回 乳母(ナニー)
一番求められるのは忍耐力


 香港では月に4000ドルもあれば家政婦を雇えるので乳母は必要なの? と感じる人もいることだろう。ところが、裕福層を中心に需要は意外に高い。尹素心(Rami Wan)さんは自らがナニーでありエージェント会社を経営している。

赤ちゃんを抱いての撮影だが、安心して寝てしまった 

   「以前は保険会社で働いていましたが、2007年に資格を取得しました」。乳母になるには試験に合格しなければならない。ペーパーテストのほか、赤ちゃんを適切にお風呂に入れられるか、ミルクをちゃんと作れるかなどの実技試験がある。「1発で合格する確率は5割くらい」と難しい試験のようだ。なぜ金融の世界から畑違いの世界に? 「自宅の改築でいとこの家に間借りした時、そこには2歳の子どもと生まれたばかりの赤ちゃんがいました。お世話は楽しかったですし、私が抱くと泣いていた赤ちゃんが静かになったので自分に向いているかも・・・と思ったのです」
 

哺乳瓶。子どもにも教えることもあるそう

 

講演会なども積極的に行っている
 

 ナニーを生業とする前に市場調査を実施。すると需要が高いことがわかった。会社を設立し、資格を取り、ウェブサイトを立ち上げてビジネスを始めた。外国人家政婦にも子育て経験者はいるが、あくまで家事が中心。ナニーは赤ちゃんの体、安全などの専門知識と技術を持つプロ。仕事が100%子育てというのは大きな違いだ。

 基本は26日で1ターム。1日8時間、10時間および住み込みの24時間コースがある。料金は8時間の場合は1ターム2万2000ドル、24時間の場合は4万から4万2000ドル。「契約にもよりますが、年間11人くらいの赤ちゃんを見ます。これまでに75人くらいの赤ちゃんをケアしてきました。住み込みは約1カ月、家を空けることになります。でも、数千平方フィートの大きく立派な家に住む顧客が多いので、それはそれでいいですね」と冗談めかして話す。

 そうはいっても聞けば聞くほど大変な職業ということがわかる。ラミーさんは抱っこのし過ぎでひじが曲がらなくなることがあり、週2回針に通っている・・・職業病といっても過言ではない。面接に来た新人ナニーについてはまず腕の太さをチェックするという。それよりも大変なのは、子どもがかわいいがゆえの周囲の「おせっかい」だ。両親、祖父母、兄弟、いとこ・・・それぞれがああしろ、こうしろとナニーに言ってくるそうだ。「ナニーに一番求められるのは忍耐力です。全員の言うことを聞いていてはきりがありません。聞く耳を持ちつつ、赤ちゃんにベストなことをしなければなりません」

数種類の漢方薬を常備。こちらは路路通と言い、これを使ったスープを母に飲ませることで母乳がより出るようにする

 それぞれの家族に独自のやり方がある上、宗教によってもしきたりは異なる。他人の赤ちゃんの世話とは、母親本人が育てるよりもずっと難しいのだ。ラミーさんのエージェントでは常に20人が香港のどこかで赤ちゃんのお世話をしている。自身はナニー業務のほか、トレーニング、ナニーの手配と忙しい日々を送る。9割の顧客のほとんどが香港人。10%が外国人だがそのうちの8割がオーストラリア人だそうだ。「なぜこれほど偏るのか私も不思議なんですよね(笑)」

 ★ナニーについて詳しくは智宝宝陪月服務站www.zhi-net.comまで