富裕層向けにオンライン事業
経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
——御社の事業について教えてください。
康本 2003年からコーズウェイベイにあるホテル・サービスアパート「コーズウェイコーナー」とセントラルにあるビジネスセンター「ワールドエグゼクティブセンター」を運営しています。香港にきたのは1987年、まさにバブル期に入ったころでした。日本でも不動産の投資、開発の仕事をしていたのですが、これからの日本では厳しいとみて海外に目を向けました。 ——コーズウェイコーナーはリピート率が高いそうですね。
梁 立地条件が最大要因でしょうね。不動産は場所と建物をいかに有効に使っていくかだと思います。いかに差別化を図れるかが大事だと思います。 ——その差別化のひとつが環境保護を徹底している部分ですね。
梁 仕事をやっているのは自分のためでなく社会のためという感覚があれば自然と向き合えるものだと思います。環境保護活動に貢献したとして2度表彰されていますが、これは意外と簡単ではありません。大手ホテルでさえまだ表彰されていないので。私たちスタッフのチームワークの良さも表彰に反映されていると思っています。 ——どういうことですか。
梁 どうしたら環境に優しいビジネスになるかスタッフ皆で常に案を出し合って考えます。たとえばハウスクリーニング。通常は掃除依頼のプレートをドアノブにつけるだけのところが多いでしょう。でもうちはプレートの中に項目があり、どこをきれいにしてほしいかお客さんにチェックしてもらいます。すべての清掃が必要でないこともありますし、こうした些細なことが環境を考える一歩だと思います。 ——慈善事業にも積極的ですよね。
康本 サンタクロースプロジェクトというもので複数の組織と協力して3年前から始めました。クリスマスにフィンランドにあるサンタクロース村からサンタクロースを招いて貧困層の子供たちが通う幼稚園や小学校や、重病を患う子どもたちがいる病院など毎年1000人近い子供たちを訪問するイベントです。集まる子どもたちの中には重病で最後のクリスマスになるかもしれないという子たち、体が動かずやっと見られるという子供たちもいます。それでも皆心から楽しんでいます。複雑な想いが交錯しながらも、このイベントはスタッフにとっても仕事を超えたものを学んでいると実感しています。 ——4月からは新たな事業が始まったそうですね。
康本 富裕層や法人向けオンラインビジネス「セレブレート」を4月から展開しています。商品提供元は現時点でシティスーパー、フランフラン、MOL、富士ゼロックス、ダイオーズなどが決まっています。一般的なオンラインショッピングとはちょっと違うんですね。 ——どのように? 梁 消費者だけでなく企業ユーザーも対象とするのでオフィス機器や設備なども扱います。香港でのブランドイメージ確立や中国本土市場への進出を目指す日本企業の参加を求めており、ジェトロとも協力しています。店舗展開や営業活動に多大なコストを費やせない中小企業にとっては絶好のプラットフォームとなるでしょう。
康本 特に宣伝面では不動産総合サービスのジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)との提携という強みがあります。JLLの管理する住宅やオフィスビルでパンフレットを配布したり展示コーナーを設けて随時商品を紹介することも始めました。JLLは香港で約400カ所の高級住宅や高級オフィスビルを管理しており、ターゲットにマッチした宣伝活動ができます。多くの日系企業が参入することで日本の商品の素晴らしさをより知ってもらうきっかけになるとうれしいですね。 ——事業の成功に必要な要素とは。 康本 周りにいかに助けられているか、「ラッキー」の一言に尽きます。香港にきたのも偶然。信頼できるパートナーのサムソンと出会ったのもそうです。普段からチャンスをつかめるようにアンテナを張り巡らしていると自ずと道は開かれるものです。 (この連載は月1回掲載します)
【楢橋里彩】 |
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