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歴史的建築物の保護・再開発プロジェクトが進む香港。その中でも第1陣の大型プロジェクトとして注目を集めてきたのが、一級歴史建築に認定されている「雷生春(Lui Seng Chun)」だ。同ビルは大規模な修復工事を経て今年4月、「香港浸会大学中医薬学院ー雷生春堂」として生まれ変わった。館内には漢方医が常駐する診療所があり、ギャラリーでは同ビルや漢方の歴史を展示している。
交差点で一際目立つ「雷生春」の外観
茘枝角道と塘尾道の交差点に位置する「雷生春」はもともと広東省出身の貿易商、故・雷亮氏の邸宅だった。雷亮氏は「九龍巴士(九龍バス)」創業者の1人としても知られる。1931年に建てられた4階建てのビルは総床面積600平方メートル。バルコニーが印象的だ。かつて上階に雷氏ファミリーが居住し、G/Fには薬局と接骨院が置かれていたという。しかし60年代になると家族が増えたことから一族は相次いで転出し、70年代には住居として使われることはなくなった。
その後、ビルの老朽化が進み、2000年に一級歴史建築に認定されたのをきっかけに雷亮氏の子孫である所有者が香港特区政府に寄贈した。04年から修復作業は始まったものの、まだ再利用の用途は決まらず。08年になって再開発プロジェクトの1つに組み込まれ、翌年、香港浸会大学によって漢方診療所として再開発されることが決定。改装を経て今年4月、「香港浸会大学中医薬学院ー雷生春堂」として正式にオープンした。
中庭には古代の医師が患者の脈を取る様子を再現した銅像が置かれている
ビルの内部は随所に昔の名残が見られる。改装はビルの本来の特色を残すことを意識して進められ、大きな玄関や窓、床板の数は当時と変わらない。昔あった接骨院の看板も同じ場所に掲げられている。
治療室はスパのマッサージルームのような雰囲気で清潔感がある
各フロアにはギャラリーがあり、G/Fでは雷氏ファミリーの歴史について、1/Fでは涼茶(漢方茶)、2/Fでは漢方薬に関する資料を展示。3/Fではビルの建築構造の特徴や再開発の過程について解説している。古来から伝わる医学書や生薬の標本など、非常に興味深い(参観は要予約)。
現在は2種類の涼茶が用意されている
生薬はこの引き出しから出して計量する
G/Fのロビーには「涼茶」コーナーがあり、香港浸会大学中医薬学院が処方した涼茶を販売している。また、館内の漢方診療所では内科(腎臓科、腫瘍科、老人科、婦人科、心血管科など)、鍼灸、接骨の専門医が診療を行っている(要予約)。
薬棚に漢方薬のボトルがずらりと並ぶ
雷生春や漢方の歴史が学べるギャラリー
香港浸会大学中医薬学院ー雷生春堂
Hong Kong Baptist University School of Chinese Medicine - Lui Seng Chun
[所在地]九龍旺角茘枝角道119号
[交通]MTR太子駅C2出口から徒歩約5分
[電話]3411-0628
[公式サイト]http://scm.hkbu.edu.hk/lsc/tc/index.html
※ギャラリーの参観、漢方医の診察ともに要予約。詳細は公式サイトおよびパンフレットを参照