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最新号の内容 -20120713 No:1362
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Francfranc 香港が海外初

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。(インタビュー・楢橋里彩)

 


株式会社バルス       
代表取締役社長 髙島郁夫さん
【プロフィール】
 1979年、関西大学経済学部を卒業後マルイチセーリングに入社。90年に株式会社バルスを設立。96年MBOによって独立。2002年にジャスダック上場、06年に東証一部上場、12年にMBOにより上場廃止。02年にBALS HONG KONG LIMITED設立、10年には中国本土、12年にはシンガポールにも進出。

 
——雑貨店フランフランのメーンターゲットは25歳だそうですね。

 20年前に最初に出店した天王洲アイルはベイエリア開発の真っ最中でした。ここに女性がおよそ4000人就業すると聞いていたので、だったら25歳をターゲットにしようと。
 
 
——店内の内装は毎月変えるそうですが、そのこだわりは?

 お客さまの8割がリピーターなんです。しかも無目的で来られる人が大半です。単純計算で月に一度の来店と考えると、前に来たときと同じだったらつまらなく感じますよね。お店に入ったときのワクワクする感覚を大切にしています。
 

——常に飽きないための工夫ですね。

 お客さまが期待しているのが分かるから確実に応えたいんです。まずは楽しい空間を作るのが一番。無目的のお客さんの来店でも心地よい空気を作れば自然と購入につながるものです。

 
——カラフルな商品が多いですよね。
 色のトレンドもありますが、人気があるのは明るい色。特にビタミンカラーやアースカラーなどは売れます。しかし、モノトーンの商品もあえて出すことで、どちらの商品も引き立たせる効果もあります。フランフランの空間演出を考えるとどの色も必要なんですよね。
 
 
——海外進出の最初を香港にしたのは?

 アジアの中で消費者の生活が日本に一番近いと感じていたので、出すならまず香港と決めていました。こちらでの収益が安定してからは、商品調達チームを香港に移すことで全体の流れが円滑になりました。工場のほとんどが広東省にあるので連携も良くなり品質向上につながっています。
 
 
——日本の店舗との違いは?

 住宅事情もありますが既存商品より小さなサイズを求める人が多いことです。日本のシングルベッドは最低90センチですが香港では70センチをほしがる人もいますので。
 
 
——毎月1000点の新商品を出すのは海外支店も同じ?

 もちろんです。空間を楽しむ気持ちはどの国も同じです。500円のマグカップ1つでも、いつもと違う朝が迎えられたり、キッチンからの景色が少し違って見えたり。お客さまの心を豊かにするお手伝いをもっとしていきたいですね。
 
 
——香港に進出して9年、振り返ってみるといかがですか。

 利益が出始めたのが5年目でしたから最初はきつかったです。苦戦しましたが地道にやってきたからこそ6店舗にまで広がっていったのだと思います。
 
 
——出店場所の決め手は?

 人がたくさんいるから出すのでなく、どこに出したらうちの店が素敵に見えるかがポイントです。従来の繁華街じゃできない新しいインパクトを与えられるような空間を考えています。例えば香港は開放感のある場所が多くないので、郊外で海を見ながら、お茶も楽しんで買い物ができるような広いスペースとか。
 
 
——新たな可能性への挑戦ですね。

 中心街は撤退していく企業もますます増えていつしか高級ブランド品ばかりの街になってしまう。それじゃ面白くない。この状況を逆手にとった新たな香港の魅力をつくりたいんです。

 
——海外で展開するときに心がけていることは?

 自分が行きたくなるところに出店すること。そう感じる街には文化があるんです。おいしい食べ物、楽しいナイトライフ、行きたい施設があるとか。つまりその地域の人々のレベルが高いことを意味します。行く先々のこうした空気感を大切にしながら、世界レベルを目指していきます。
 
 
——これまで大きな決断をしたことは?

 しょっちゅうです。進出の時もブランドを進化させていくこともそうです。ブランドは常に進化させないと陳腐化してしまう。日本ではいろいろと試みをしていますが香港はこれから。現状に満足せずどう成長していくか今後の課題です
 
 
——まさにグローバルブランド化ですね。
 でも今のままではだめです。かわいい、きれい、美しいといった表層的な表現でできない部分も培っていかないといけない。サービス、品質もそうだし、素材のこだわりもそうです。より一層執着していきます。
 
(この連載は月1回掲載)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。