中国プラス1で変わる位置付け 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)
——香港での主な事業は何ですか。
わが社は30年前にM&Aで進出し、佐川グローバルロジスティックス株式会社の海外現地法人となっています。日本の佐川急便は荷物を運ぶ宅配ですが、香港では海外より輸入された商品の保管、検品、仕分け、配送や華南、アセアン地域からの搬入される貨物の積載、CFSサービスや倉庫サービス業務、輸出入など多岐にわたっています。いわゆる総合物流企業です。 ——事業を展開する上での基本的な考えは何でしょうか。
佐川急便グループは長きにわたり国内物流事業の一翼を担っており、そこで養われた豊富な経験と実績が当社最大の財産です。香港では世界の主要な物流業者が市場を競い合っていますが、当社は日本人の我々にしかできない5Sと最新システムを構築することで佐川グループならではの物流サービスをお客さまに提供することを基本としております。
——香港の位置づけをどう見ていますか。
華南地域が世界の工場と言われ出したのが約30年前。実際に香港を利用した運送開始は20年前。当時は中国本土は安かろう悪かろうという時代でした。そこに技術や材料、部品、部材を海外から輸入して、安い人件費で作り海外に輸出するため企業が進出してきました。しかし今、中国の人件費は高くなりつつあります。ですので中国での生産の一部をタイ、ベトナムなどで作るチャイナプラスワンの傾向になっています。そういう意味ではハブとしての香港の取り扱い形態も変わってきています。
——香港の良さは何ですか。
アジアの金融都市だけあってコントロールオフィスとしてビジネス展開が可能なことです。香港をアジアの情報発信地としてますます力を入れていこうと思っています。 ——新たなサービスも開始されるようですね。
ワイン、電子部品などを扱う空調倉庫のサービスです。3年ほど前からワイン貿易が緩和されて中国の消費量も上がってきました。海外のワインを中国に入れたり、香港域内で消費される物に対する要求も上がっています。そこから空調倉庫をつくる計画が立ち上がったんです。4000平方メートルの倉庫から始めます。
——香港と中国本土でビジネスをする上での相違点は何ですか。
本土はすべてにおいてライセンス制です。お客さんのビジネススピードも速く、マネジメントする立場としてもスピーディーな決断が必要です。それに加えて政府、役所に対しての申請も必要になるので社内で決断したあとも時間がかかります。一方で香港は外資系企業慣れしているからか、そこが緩和されています。
——ということは本土ではなかなか踏み出せないこともあるのでは?
あります。チャイナリスクとしてお客さんの動向が見えづらいというのもあります。円高の問題もありますし、正直に言うと今は動きづらいですね。
——物流業界の現状はどうでしょうか。
中国からの荷物が減少しアセアンに移行しているのが現状ですが、まだ不安定とみている人も多くいます。欧州危機などの問題は荷物量にも大きく影響しています。一方で香港の人件費は上がって、不動産も高騰しています。倉庫業務にかかわっている立場としては打撃を受けます。こういう時代の流れの中で香港の立ち位置をどうするかは決断が難しいところです。
——今後のビジョンを教えてください。
今できることはお客さまに最適な物流構築をしていける提案力をつけることです。アジアの拠点に対して香港から情報を発信していくことに注力したいです。一方で華南地域は製造拠点ですが、すべて取り込めていません。このエリアにおいても総合物流企業としてお客さんが推奨するような企業になりたいですね。
——ビジネスが成功するためにトップに必要な要素とは?
コミュニケーション力、スピーディーな決断力、さらにお客さまが望む以上のことを把握してサービスを提供する。案外お客さまは自分で気づいていないことがあります。そういうのをサポートして改善策を打ち出していくことですね。(この連載は月1回掲載)
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。 |
|
|