経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。 海外就職ブームの仕掛人
パソナアジア 顧問 戸﨑悦子さん ——パソナアジアは香港に設立されて27年たつのですね。
1984年に海外第一拠点として前身のテンポラリーセンター香港が設立されました。当初から海外進出した日系企業の皆さまへ人材総合サービスを提供しています。特に香港では、人材紹介と人事労務管理のサポートをするパソナアジアと、語学教育と社員教育サービスを提供するパソナエデュケーションが姉妹会社としてあります。
——香港でビジネスを展開する上での「強み」は何ですか?
この27年間、香港の激しい社会変化の中を生きている香港の人々への深い理解とそれを活用するアイデアを構築してきた会社であるということです。また彼らが日本に好意的な点も大きいですね。特に若い世代は日本の影響を受けていますし日系企業で働く香港人は会社に育ててもらったと感じる人が多いんですよ。
——人材サービス業界の現状はどうですか?
昨年から香港では日系企業の新規参入、かつて撤退された会社の返り咲きのお話などで、競争がさらに厳しくなっています。また今後は日系企業と香港人人材の互いの希望にいかにマッチさせるかということも課題ですね。
——といいますのは?
香港では不景気から脱出していると感じている人が多いんです。一方で日本の企業はコスト管理をしっかりして確実に一歩を踏み出したい。そこにさまざまなギャップが生まれることがあるので双方が納得できるサポートをしていくのが課題ですね。
——返還から14年たちますが、来港する日本人人材に変化はありますか?
実は90年代に香港とシンガポールへの海外就職ブームをつくった仕掛け人の一人が私でした。(笑)
——覚えています! 女性誌などで香港就職の特集記事を見たことが…。
あのころは全国を飛び回ってセミナーを開いてました。当時は語学力があっても日本では生かせない時代だったので多くの方が香港やシンガポールに就職しました。今は日本は外資系企業は増え、国際化もかなり進みましたし時代は大きく変わりましたね。
——人材紹介のほかはどんなビジネスをしていますか?
人事労務のサポートをするHRMアドバイザリーサービスやバイリンガルサポートサービスなど、多様性と専門性を高めています。特に、ペイロールサービスは、給与支給の全行程お手伝いしますから、小規模の組織が多い香港では、手間とトラブルを防ぐことにつながり、本来のお仕事に集中していただけると大変喜ばれています。
——常に時代を読みとるということですね。
そうです。まずニーズをキャッチする、言い換えたら社会の問題点かもしれません。人が何を求めているのかというものをサービスという形で提供していく、それが私たちのビジネスだと思っています。
——これまで大変だったことはありますか?
08年のリーマンショックの後、採用停止の時期がしばらく続いた時です。業界そのものが大変でした。私自身、あらためて自分の働き方、自分が与えられていることは何なのかと振り返る一つの機会になったと思います。
——ビジネスの成功、達成のために不可欠な要素は何ですか?
「とらわれず・こだわらず・惑わされず」。これは明代の学者、崔後渠の「六然」の一部ですが、自分の判断力を信じることが大切です。何か失敗した時自分を責めがちですがそれではいけない。自分を責めず、やるだけやったと、肯定的にとらえて新たにスタートを切る、これが大事です。
——初来港した80年代の香港はどうでしたか? 女性は皆ノーメーク! ストッキングもはかない。スリッパで出勤していた人もいました。コーヒーさえ買えず簡単に飲めなかった。それでも生活が楽しく、日本が恋しいとは思わなかったですね。 ——ご家族とよく行く場所があるそうですが。
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
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