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最新号の内容 -20170324 No:1475
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 香港の仕事人

 

第41回

サービスアパートメント経営

香港の仕事人

出張も多いが週末には香港に戻るようにしているという黎副総裁

快適に過ごせる空間を追求

 ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。

(取材・武田信晃/月1回掲載)

 

 住宅価格の高さは世界一とも言える香港。アジアの地域本部を構える大企業もたくさんあり、住居の需要は非常に高い。サービスアパートメントは選択肢の1つだが、その中でも有名な「Shama」を経営するONYXの黎志才(Tommy Lai)北亜区副総裁に話を聞いた。

 

香港の仕事人

好立地に建つShamaの外観

 「元々、私は金融関係の仕事をしていました。ホテルのようなホスピタリティー業界の人間ではなかったのです。投資ファンドで働き、日本、香港、インドネシアなど各地で不動産開発などに携わって仕事も楽しんでいました。しかし、2008年のリーマンショック時にいろいろなことを目の当たりにして、もっと直接的に人のライフスタイルに役立てる仕事をしたいと思ったのです」と話す。

 そして12年にONYXに入社した。「香港を拠点に北アジア地区のビジネスを統括しています。当社はタイ企業で、バンコク、プーケット、ドーハなどでホテルやサービスアパートを経営し、Shama10年に買収しました」

 Shamaは中環、尖沙咀などにあるが、「昔なら滞在期間は6カ月から1年くらいが多かったのですが、今は3カ月から6カ月ほどと短くなりました。家族連れがカップルや単身者になるなど滞在者の構成も変わってきています。1部屋あたりの予算も低くなりました」と厳しい経営環境であると打ち明ける。

香港の仕事人

室内の様子(同社提供)

 香港人の客の中には高過ぎる家の購入を諦めたという家族もいるという。また、グローバル化が進んで中間層が減ってきたと感じている。「新規の物件では1部屋あたりのサイズを小さくしました。また、北角にはサービスアパートとホテルをミックスしたものを建設しました」と滞在者が状況に合わせてどちらかを選べるようにもした。加えて、中華料理などを作ってもらおうとShama独自で製作した料理のレシピ本を各部屋に配布するなどきめ細かな対応で、部屋の稼働率は最低でも85%という高い数字を維持している。

 レベルの高いサービスが求められるため社員教育は重要だ。「社員教育は地元のやり方が基本。そこに国際的なやり方を取り入れています。私たちは国際企業ですが、言葉1つにしても広東語で伝えた方が私たちが意図するところをより理解してくれるからです」

 外国企業は従業員の仕事の範囲が契約書に明記されていて、それを超える仕事はしないケースがしばしばあるが、ONYXではそうならないように努力している。「これは私が日本のおもてなしの精神から学んだことの1つです。日本の旅館の従業員は1人で何役もこなしますよね。私たちのスタッフも1人ひとりが複数の案件に対応できるようにして、サービス向上を図っています」と、ホスピタリティーの会社として滞在者がより快適に過ごせる空間をこれからも追求していく考えだ。 

 

香港の仕事人

レシピ本。パスタ、スープ、海鮮など多彩な料理を紹介(同社提供)