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最新号の内容 -20170210 No:1472
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《96》
中国のドローン産業と日系参入の可能性

 ドローン産業は近年、「空の産業革命」として注目を集め、世界中でビジネス用途での利用が広まってきている。中でも中国は世界の民用ドローン市場シェアの70%以上を占める大手ドローンメーカーを生み出すなど、急速に成長・発展している。この飛躍的成長を支えたのは、技術の研究開発のみならず、国策による後押しや企業間における戦略的提携だと言えよう。本稿では、中国の民用ドローン市場における成長の背景を紹介し、日系企業参入のヒントを探りたい。
(みずほ銀行 香港営業第一部 中国アセアン・リサーチアドバイザリー課 モニカ・エン)
 

 ドローン市場の成長

 軍事利用目的から始まった中国でのドローン運用は、1990年代から民用化に向けた研究が本格的に始まったことで、ローエンド・ドローンが出現した。2007年には、民間企業が民用領域に進出したのを機に、企業の参入が増加し、近年は将来的な経済効果を見据え、ドローンを安全に飛ばし、産業利用につなげようとする官民挙げての取り組みが活発化している。

 中国における民間ドローン市場の規模は、15年時点で3・73億米ドル(23・3億元)規模となっている。14年から20年にかけての年平均成長率は61・5%と、世界市場を上回る急速な成長が予想され、20年時点では40・4億米ドル(261億元)と、世界市場のおよそ1/5を占めると見込まれている。ドローンの利用が期待される産業としては、空撮、農林、治安、電力のほか、物流、医療、インフラ管理などの分野での利用も模索中という。

 中国におけるドローン関連の研究開発動向を知的財産権取得の状況から見ると、2000年代後半以降に申請件数が急増し、10年には84件、5年後の15年には1908件へと飛躍的に増加していることが分かる。特許の類型としては発明と実用新案がその大部分を占めており、ビジネス用途を見越した研究開発が戦略的に進められているといえよう。


中国ドローン業界の規範化

 中国におけるドローン産業の急成長は、政府の後押し無くして成し遂げられないものでもある。この点、中国政府は15年5月に公布した製造業の新たな振興策「中国製造2025」において、航空・宇宙設備産業を次世代情報技術やハイエンド設備、新材料、バイオ医薬などとともに戦略的な重点分野と位置づけ、ドローン産業の成長推進を明記している。また、「2016年全国標準化作業要点」においても、航空・宇宙設備業界の規範化を戦略的に推進することを「規範化への戦略行動」の実践手段の一つとしている。こうした国の政策方針を受け、ドローン産業の業界基準や、管理部門および法の整備が着々と行われている。

 具体的には、まず中国民航局が13年までに、ドローンの操縦免許に関する規定を公布し、16年に改定。重量7キロ超のドローン操縦に免許取得を義務付けた。操縦免許は無人マルチコプター、無人ヘリコプター、無人固定翼機の三種類に分けられ、それぞれ操縦員、機長、教官の3分類の試験が設けられている。

 次に、ドローン飛行の安全性を確保すべく、昨年末に「軽小型無人機運行規定(試行)』が公布された。諸外国と比べ、目視範囲外での飛行や住宅密集地での飛行を可能とするなど、飛行範囲が比較的広く定められているのが特徴で、これはクラウドデータを用いての報告や操縦免許を義務付けたためと言える。一方で、耐空証明や保険購入を義務付けていないため、安全性の確保が次なる課題といえよう。


ドローン企業動向にかかる3つのキーワード

 さて、急速に成長する中国ドローン企業の動向をみるにあたり、3つのキーワードが挙げられる。珠江デルタ、戦略的パートナーシップ、そして外資の導入だ。
 

珠江デルタ

 ここ数年の中国ドローン企業の顕著な動きの一つとして、珠江デルタ、特に広東省深圳市への集積が挙げられる。15年末時点で、本部を深圳 市に置くドローン企業は300社以上に達し、全国の約75%を占めた。世界のドローン市場における中国企業の存在感を鑑みれば、もはや深圳 市は中国のみならず、世界の「ドローンの都」と言えるだろう。

 深圳市がドローン企業の集積地となった要因は、基盤となる技術を有する企業があったこと、すなわち既存資源の活用である。ドローン市場においては、演算処理や画像処理など、主にスマートフォン向けに開発されてきた技術が応用可能だ。この点、「世界の工場」と呼ばれた時代から電子部品製造に強い深圳 であれば、ドローンに必要不可欠なチップや加速センサー、GPSなど小型の高性能センサーをはじめ、モーターや電池などが大量に安く調達可能である。また、制御ソフトなどの高度な開発技術や、金属切削加工にかかる高い技術を有する中小企業が集積していることも原因の一つであろう。今では、スマートフォン関連企業の多くが、ドローン産業にも参入している。スマートフォン大手Xiaomi(小米科技)がMi Droneを発売したのがその代表的な一例だ。他のXiaomi製品と同じく、自社の製造ではないものの、既存の調達ネットワークや開発資源を活用しようとする思惑が透けて見える。


戦略的パートナーシップ

 また、技術革新のスピードを加速させた背景として、国や業界の垣根を越えた企業間の戦略的パートナーシップが実を結んでいることも大きい。例えば、世界のドローン市場の約70%以上を占める深圳 市のドローンメーカー、DJIは、他社との業務提携を積極的に進めている。提携先はドイツ、日本、米国、欧州企業と幅広く、その内容もシステムの開発からサービス・プラットホームの利用、動画の中継、販売、プロモーションまで多岐にわたる。同様の提携は中国以外の国・地域の企業間でも行われているが、上述の通り、これまで珠江デルタの企業が加工貿易などで培ってきた世界各国企業とのネットワークと、これにより蓄積された技術力、また技術革新のスピードに対応し得るサプライチェーンが、ドローン関連企業間の技術提携を支え、うまくかみ合った好例といえよう。


外資の導入

 技術的提携のほか、外資との資本提携もドローン業界の各分野において活発化している。上海に本部を置くYuneecは米Intelから6000万米ドルの投資を受けた。Intelから製品開発における技術面での協力を得ることで、自社製品に高い付加価値をつける方針だ。前出のDJIも米ベンチャーキャピタルAccel Partnersから7500万米ドルの投資を受け、共同開発を進める予定となっている。また、空撮ドローンを得意とするZEROTECH は、米国通信技術および半導体開発大手Qualcomm傘下の投資部門、Qualcomm Venturesなどの投資家より合計1・5億元の投資を受けた。ZEROTECHQualcommは以前から、中国共産党系のニュースサイト、人民網と共同でドローンを利用した報道を推進しており、今回の資本導入を機にメディア産業におけるドローン応用の可能性を広げる計画である。


日系参入の可能性

 かかる動向を受け、日系企業参入のチャンスを探っていきたい。

 ドローン企業が集中する広東省には多くの日系企業が製造拠点を設置しており、地理的に有利というだけでなく、新たなビジネスの方向性を見出すチャンスと言える。ドローン専門メディア DRONE II.COMの統計によると、16年第3四半期の世界民用ドローン企業トップ20のうち、中国企業は6社だが、いずれもプラットホームの製造に重きを置いている。従って、それ以外の部分、例えばドローンに搭載する部品をはじめとした高度な技術製品への需要が高いのは言うまでもない。広東省に製造拠点を置く日系企業にとっては、飛躍するドローン産業に対し既存事業をどのように転用できるかが、次なる事業展開の方向性を見出す重要なヒントになるだろう。

 さらに中国では機体そのものの開発や技術革新が重点的に進められているのに対し、日本ではドローンの運用サービスが国内市場の3分の2以上を占めるとされる。ドローンを利用した農薬散布や物流運送サービスの提供などがその代表例で、18年にはサービスと周辺サービス分野の割合が全体の80%近くまで増加する見込みだ。中国のハードウェアに日本のソフト・サービスを導入できれば、さらなる市場規模の拡大が期待できるだけに、特に農業や物流など、これから中国市場で成長が期待される分野においては、業務提携や資本提携等さまざまな手段を用い、日本ならではのノウハウとサービスを提供することでWin-Winの関係を構築し戦略的パートナーシップにつなげていくことは十分に可能だろう。
 

(このシリーズは月1回掲載します)

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