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最新号の内容 -20170101 No:1470
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《106》 糖尿病で捨てられた子犬

キンバーに愛情を注ぐクリフトさん(筆者撮影) 

 キンバーのママはアニマルナース

 小さくて真っ白、それに加えて黒豆のようなクリッとした目。そんな犬にじーっと見られたら、思わず赤ちゃんに話しかけるように「どなたでちゅか?」などと言ってしまう。いつものように湾仔にある動物病院に出かけると、受付カウンターの後ろからこちらを見てニコニコ笑う犬がいる。そのクリニックにはスタッフが自宅で世話している動物が頻繁に遊びに来ているのだ。

 この白き小さな犬は、キンバー。飼い主は美人でベテランナースのクリフトさん。キンバーは飼い主(クリニックの客)が「具合が悪い」と診察に連れて来て、なんと糖尿病と診断された。まだ数カ月のパピーだというのに。クリフトさん曰く、診察に来た日はすごく毛つやも悪く、みすぼらしくて、自信がなさそうに怯えていたそうだ。診断結果は重症の糖尿病で1日2回、かなりの量のインスリンを打たなければならない。しかし、心なき飼い主はキンバーの面倒を見られないという。では、飼い主の責任として安楽死させるか、飼い主の権利を放棄しろ! と主任医師のポール獣医師は怒って飼い主に言い放ち、結局飼い主はキンバーを手放すことに——。

 早速、飼い主を探し始めたが、病気、怯えた性格、汚い、といったマイナス要因から誰も引き取ってくれない。仕方ない、とクリフトさんが13歳の先住犬に許可を得て、キンバーを家に連れて帰ったのだった。

 一見キンバーは、ペットショップにいるような高価な犬に見える。「違うのよ、まったく。引き取ったときは汚いし、今でこそこんなになったけど」というクリフトさん。彼女の手厚い看護とお世話はすでに3、4カ月になる。見事にBefore/Afterを遂げてお姫さまに早変わりしたキンバー。キンバーはよく遊ぶし、とにかくみんなに話しかけたり、自分が注目されたいタイプ。家では、姉犬のブビーにちょっかいを出して嫌がられ、クリフトさんは頭が痛いのだとか。「本当に面倒くさいのよ、キンバーが来てからもう大変。ブビーはおばあちゃんだしさ、遊びたくないの」と顔をしかめる。でも、キンバーを抱っこすると、顔がデレデレになっている。

 彼女は小さなころから動物が大好きで、公園で捨てられていた猫や犬を家に連れ帰っては親にしかられ、泣く泣く保護団体に連れて行っていた。動物が大好きだからナースになったのだ。ナースをやっていて一番辛いことは? と聞くと、やはり不治の病の宣告なのだそう。ナースをやって楽しいかと聞くと、周りの同僚に聞き直し、「楽しいに決まっているわ。だって動物が大好きなんだもん」と美人スマイルで答えてくれた。キンバーは本当にラッキーな犬だ。