香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20160916 No:1463
バックナンバー



 

第35回 
不動産業者

 ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。
(取材と撮影・武田信晃/月1回掲載)


在住邦人をサポート

 世界一値段が高い、香港の不動産。引っ越しは日本国内でも大変だが、それが海外、さらには香港での引っ越しとなるとハードルは上がる。「和光不動産」を経営する劉達偉(Louis Lau)マネジング・ディレクターは、堪能な日本語を生かして大勢の香港在住日本人に物件を紹介してきた。

 不動産業に就く前は日系の老舗旅行代理店の添乗員として日本人相手にガイドをしていた。「ある時、知人から日系の不動産会社が日本語の堪能な人を探しているけどどう? と勧められたんです。当時、私自身も添乗員の仕事に対して思うところがあり、経験のない違う世界でしたが転職を決めました」とルイスさん。しかし、数カ月後には日本人の同僚より良い成績をだすなど日本人支店長から褒められるほどになる。

 その後、1994年に独立して不動産会社を1人で始めたが、常連客がいない実質ゼロからのスタート。客を開拓するところから始めた。「はがきサイズのチラシを日本語で作って、それを各家庭に配っていきました」。ルイスさんがすごいのはマンションに入ってビルの最上階に行き、そこから下の階に階段で降りながら、1軒1軒、地道に配ったことだ。

起業当初に配ったはがき型のチラシ。これを1軒1軒ドアに配布した 

 「日本人が多く住んでいた太古を中心に1万枚は配ったかな。郵便受けに入れると捨てられる可能性があるので、マンションの中にできるだけ入って部屋のドアに挟むようにしたのです」と当時を振り返ったが、そのころはインターネットはまだ発達しておらず、このようにアナログなやり方が普通だった。「どうなることかと思っていましたが、毎日必死に配り続けた結果、電話がかかってくるようになりました」。努力は実を結んだ。

 「忘れられない物件ですか?いろいろありますが、天井からベッドが降りてくる物件ですね。家が狭い香港でスペースの有効利用の仕方が上手だと思いました。あの物件は私も初めて見たときはさすがに驚きましたよ(笑)」

今でこそ他の日系不動産会社もこうした冊子を出しているが和光不動産が元祖という

日本人の好みを知り尽くしているルイスさん(下のチラシと右下の冊子の写真はルイスさん提供)

 日本人を対象とした不動産ビジネスは97年以降、徐々に風向きが悪くなってきた。「97年の中国への返還、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)で大勢の日本人が去りましたし、日系企業の多くが経費削減により駐在員を妻帯者=家族連れから単身者にシフトしました。特にここ1、2年は急激に香港の日本人向け不動産マーケットが悪くなった印象です。もちろん、予算も徐々に下がっていきました」

 ここでただ指をくわえて待っていないのがルイスさんだ。西湾河に日本食品などを扱う「道の駅」という小売店を始めた。7月16日にグランドオープンしたが、6月30日のプレオープン時から高い品質の品ぞろえが口コミを中心に評判を呼んでいるのだ。不動産会社経営の経験から抜群の立地を探し出し、ルイスさんの営業力を生かして業者を説得し、海外初という商品も店に置いている。

 「経済というのはサイクルがありますからね。長年、日本の経済は良くないですけど、また良くなるときが来ると信じています」と日本の復活を信じているルイスさんだった。

オープンさせた小売店「道の駅」 
(所在地:Shop GB17, G/F., 45 Tai Hong Street, Lei King Wan, Soho East, Sai Wan Ho, Hong Kong 
電話:2569-8388 和光不動産WEBサイト:www.wakoproperty.com.hk
道の駅FBページ:www.facebook.com/michinoekiHK/