第34回
服のリフォーム職人
ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。
デザインの知識を生かした技術
流行が変わったり、体形の変化などで着られなくなる服がある。そんなときに頼りになるのが、ジェニファー・ウォンさんと杜家慶さん夫妻が経営するリフォームショップ「T&F(創意改衣)」だ。 「オープンは1997年。母がファッションに関心があったせいか、私も小さいころからファッションに興味がありました」とジェニファーさん。デザインの学校に進みデザインや服の縫製の仕方のイロハをきっちりと学んだ。そして同じファッション業界にいた杜さんと知り合い、2人で起業した。
裾上げ(70ドル~)やウエストの寸法直し(150ドル~)などを確かな腕で仕上げて評判を呼び、どんどん固定客が増えた。香港人が中心だが、西洋人や日本人の常連客もいる。客層は20代~90代と幅広く、スーツを持ちこむ男性客もいて、男女比は半々という。 「忘れられないのは、レザーの服を直してほしいという依頼。親から譲り受けたという50年モノでした。非常に古いので慎重の上に慎重を重ねて作業し、裏地を取り替えたりしました」。ジーンズを購入して丈を短くしたら短すぎてしまったという人が来店して「どうにかして」と泣きつかれたこともあるそう。ジェニファーさんは深水埗の生地問屋に行って素材を探し、布を足すことで対応。その時の写真を見せてもらったが、仕上がり具合は別の生地を足したとはとても思えないものだった。
ジェニファーさんの店の強みは、それだけではない。デザイン学校を卒業したことを生かし、既存の服をお客の意見を取り入れながら新しい形の服に作り変えてくれる点だ(600ドル~ )。「どんな服に変えたいのかじっくりと話を聞きます。もし、お客さんにアイデアがなかったら私からいろいろ提案もします」。注文票を見せてもらうと、サイズやデザインの詳細が何枚にもわたって書かれていた。
カレンダーにはスケジュールがびっちり。これをこなしていくのは見るからに大変だ。裾上げなどはタイトなスケジュールの中でも2週間くらいで仕上げるという。 「大変ですけど、楽しいから大丈夫です。芸能人のお客? 昔はいたのですが、急ぎの依頼が多いのです。それでほかのお客さまのスケジュールがずれるようなことはしたくないので、今は芸能人の方からの依頼は受けていません」と、特別扱いしない姿勢もさらに評価をあげている要因といえよう。 簡単な構造のバッグや靴、ぬいぐるみなどの修理、補修もしてきたというジェニファーさん。生地という生地は彼女の手にかかると新しく生まれ変わることは間違いない。
【T&F(創意改衣)】 |
|
|