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最新号の内容 -20160311 No:1450
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2016/17年度財政予算案

生活・経済支援拡大

 曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官は2月24日、2016/17年度財政予算案を発表した。潤沢な財政を背景に市民の生活負担を軽減する措置として個人所得税の還付や各種控除引き上げ、不動産税の免除、生活保護の追加支給などが盛り込まれた。引き続き経済の低迷が予想される中、企業向けには法人税の減免、商業登録費免除、旅行社、ホテル・旅館、飲食店、小売店などのライセンス費免除など、観光・小売業界を中心に支援措置が打ち出された。これら生活・経済支援措置の規模は前年度より多い388億ドルに上る。(編集部・江藤和輝)

 

 15/16年度の財政収支は305億ドルの黒字、財政備蓄は3月末で8600億ドル(2年分の歳出に相当)の見込み。公有地売却が予定通り進まなかったため土地関連収入は予測より11・6%(80億ドル)少なかったが、印紙税収入は28%、法人・個人所得税収入は8・9%、それぞれ予測を上回った。16/17年度は歳入4983億ドル、歳出4869億ドルで、114億ドルの黒字を見込んでいる。

 曽長官は予算案とともに15年の経済統計と16年の経済見通しを発表。15年通年の域内総生産(GDP)伸び率は前年比2・4%で、昨年11月に発表した予測と同じ。4年連続で過去10年の平均である3・4%を下回った。輸出伸び率はマイナス1・7%で、09年以降で初めての通年マイナス成長。消費者物価指数(CPI)伸び率は3・0%、政府の一過性の措置による影響を除いたCPI伸び率(基本物価上昇率)は2・5%で、4年連続の鈍化となった。曽長官は16年の経済動向について「香港は米国の利上げと世界経済の先行き不透明で引き続き貿易は低迷、観光客の減少が消費・投資意欲に影響し、雇用市場と企業経営に圧力がかかる」と述べ、輸出の鈍化と観光客の減少はさらに悪化する可能性もあると指摘。16年通年のGDP伸び率は1・0〜2・0%、CPI伸び率は2・3%、基本物価上昇率は2・0%と予測している。

 予算案では市民の生活負担を軽減する一過性の措置として、個人所得税は2万ドルを上限に75%還付、控除は基本・ひとり親・既婚者とも10%引き上げ、父母・祖父母の扶養控除は15%引き上げ、不動産税は1軒1四半期1000ドルを上限に4四半期免除、生活保護、高齢者手当、高齢者向け生活保護、障害者手当の受給者には1カ月分を追加支給。ただし前年度まで行われてきた公共住宅の家賃免除は盛り込まれなかった。

 今後1年の経済状況には多くのリスクが存在することを考慮し、経済対策として中小企業経営の負担軽減や観光業てこ入れなどの短中期的な支援措置が打ち出された。内容は①中小企業融資担保計画の延長・改善②15/16年度の法人税は2万ドルを上限に75%減免③16/17年度の商業登録費を免除④旅行社1800社とホテル・旅館2000軒は1年のライセンス費を免除⑤飲食店、小売店、食品販売許可証による制限を受ける店舗の計2万7000軒は1年のライセンス費を免除⑥観光客誘致のためのプロモーション活動に2億4000万ドルを充てる——など。これら生活・経済支援措置の規模は前年度の約340億ドルから388億ドルに拡大。16年のGDPを1・1%押し上げる効果があるとみている。

 

立法会選挙が不安定要素に

 

 予算案では、「新経済秩序」と銘打ち香港の競争力を維持・強化するための措置を網羅した。新経済秩序とは世界経済の重心の東へのシフトや新興市場の重要性と影響力の拡大、またIT革命などを指す。予算案では新経済秩序への対応として、研究開発の応用、フィンテック、新興企業、クリエーティブ産業を柱とするイノベーション推進と、「一帯一路」、貿易・物流、金融サービスを柱とする新市場の開拓を提唱。

 具体的には①香港科技園は将軍澳の工業団地に82億ドルを投じ先進的製造業を集積させるスマート工業ビルを建設②科学技術を応用し市民生活を改善する「イノベーション科学技術生活基金」の設立に5億ドル確保③国際的なファッション展示会「CENTRESTAGE」開催④電影発展基金に2000万ドル注入し広東語映画の中国本土での配給支援⑤5月に「一帯一路サミット」開催——などが盛り込まれた。

 金融サービスでは初めて高齢者限定のシルバーボンドも打ち出された。対象は65歳以上の市民で、2年にわたって試験的に発行。第1弾は償還期限3年、最低2%の利率が保証されるもようだ。安定的なリターンのある投資商品という高齢者の需要に対応し、政府は業界にシルバー市場の開拓を奨励している。

 今回の予算案は、経済への言及だけでなく先の旺角暴動にも触れている。曽長官は予算案の冒頭で「旺角で発生した深刻な違法事件はごく一部の理性を失った者が警官や記者に深刻な暴力行為をはたらき、大規模な暴動を引き起こして数十人の負傷者を出した」「多くの人たちは私と同じく事件に心痛と怒りを覚えるとともに、なぜ知らず知らずの間に暴力の種が育ったのかを知りたく、核心的価値が暴力と憎悪に蚕食されるのを憂慮している」と述べ、厳しい経済環境の中、社会問題がさらなる不安定要素になっていると指摘。今年は立法会議員選挙があることから政治的対立が激化し、経済への影響は免れないと懸念を示した。

 2月28日に行われた立法会新界東選挙区の補欠選挙では旺角暴動を主導した本土民主前線の候補が15%に当たる約6万6000票を獲得したことが注目された。過激な政治勢力は一定の支持を得たとみなし行動をエスカレートさせる可能性があり、曽長官の懸念する社会不安と経済低迷の連鎖は現実味を帯びてきた。

 

 

財政予算案発表後に記者会見を行った曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官ら