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最新号の内容 -20110506 No:1332
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 山と海を抱え、客家や漁村の文化・風習を持ち、中国と西洋が溶け合う街、西貢。今回は「西貢外海国家地質区」にある主な離島を紹介。この夏の週末は西貢から船に乗ってふらっと海へ。自然の偉大さを感じながら、ゆるやかに流れる時間を満喫しよう。(編集部)

西貢中心部から最も近い地質公園のビーチ
①橋咀洲(Sharp Island)

圧倒的な存在感を見せつける地層群

 西貢中心部から南東部に約2キロ、乗船時間約15分と利便性が高いのが魅力。海水浴客向けの施設を備えるほか、散歩コースとしても最適。火成岩から成る全長約700メートルの砂州を渡れば、小島「橋頭」から清水湾半島を一望できるほか、1億数千年前に火山爆発で形成された表情豊かな地層群を目にすることができる。何もせず海風にあたり、周囲の島々を眺めているだけでも満足できるスポット。ただ季節によって引き潮・満ち潮時間が異なるので注意したい。

   
砂州では数種類の火成岩観察ができる 普段は海によって隔てられている陸と島が干潮時につながる「トンボロ(陸繋島)」現象

伝統的な客家文化とキリスト教信仰がつくった村
②塩田仔(Yim Tim Tsai)

セント・ジョセフ教会は1890年に建立、2004年に改修。周辺に神父の住居などが残る

 「塩田梓」もしくは「塩田仔」とも呼ばれるこの村は、300年以上前に中国の宝安県(現・広東省深圳市)塩田村から陳夫妻が移住してきたのが始まり。「梓」には故郷の意味が込められている。全盛期には1200人以上が住んでいたが、農業などが困難だったため、村民は外国や市街地に移り住んだ。今は住んでいる人がいないが、残された客家(はっか)の伝統家屋や塩田の跡地、村の玄関口に構えるカトリック教会などから、厚い信仰の下で厳しい環境に負けず知恵を絞った当時の人々の暮らしぶりがうかがえる。

客家式建築の家屋

漁村の民間信仰と生活文化を垣間見る
③滘西洲(Kau Sai Chau)

 滘西洲は香港で4番目に大きな島。北部はゴルフ場として整備されているが、南部は豊かな自然を残す。南部の漁村、滘西村には土地神を祭る「洪聖古廟」があり、今でも村人の熱心な信仰対象となっている。廟の正門には清朝光緒9年(1889年)の文字が刻まれており、少なくとも1889年までに建立されたとされる。年に一度の「洪聖爺誕」は西貢住民を挙げての祭りとなり、普段の静かな島が一転、にぎやかな雰囲気に包まれる。

東屋から望む海 2002年11月に「法定古跡」に認定された洪聖古廟

かつて「島」だった漁村 今は隠れリゾートに
④糧船湾(High Island)

ビーチでも1日過ごせそう

 西貢地区東部の糧船湾海に位置し、沿岸部一帯では約1億4000年前に形成されたとされる六角柱形の火山岩群が壁画のごとくその表面をさらしている。「香港十景」のトップに何度も選出されたことのある名勝のひとつ。かつて香港で4番目に大きな島と呼ばれたが「万宜水庫」の建設で両端に堤防がつながり、西貢半島と一体化された経緯がある。ふ頭近くの漁業・航海者の守護神「媽祖」を祭った天后廟は村のシンボルで、村民の信仰を集めている。また、香港で最初にできたというウニの養殖場があることが有名で、採れたての生ウニを現地で食べられる。夏場は周囲の海一面にクルーザーが停泊し、海水浴客でにぎわう。 

生ウニは1個33ドル。3月初旬から6月までが旬。 ウニチャーハンも試したい

通称「クロコダイル」 自然の妙に言葉を失う瞬間
⑤吊鐘洲(Jin Island)

波で岸壁が侵食された洞穴。アーチになった場所もある

 「クロコダイル」。地元の人がそう呼ぶのは、全体の形状がそう見えるという理由から。基本的に上陸はできないので、船上から眺めるだけだが、侵食されてできたいくつもの洞穴は気の遠くなるような時間の経過と、人間の手には負えない自然の偉大さをひしひしと感じさせてくれる。乗船する船によっては、ぎりぎりまで近寄ってくれたり、長く停留してくれたりする。普段はなかなか撮れない絶景撮影スポット。


インフォメーション

■交通アクセス
⑴MTR彩虹駅もしくはMTR坑口駅からミニバス
⑵乗船方法と注意事項
・ボート乗り場周辺で各業者が販売している往復チケットを購入する。西貢に戻ってくる時間をあらかじめ確認すること。
・複数の離島に行きたい場合や団体の場合は、先に船業者に問い合わせし、値段交渉したほうがよい。
・西貢から近い橋咀洲や塩田仔などは1人から乗船でき、本数も多い。ただし、週末・祝日しか運航していない場合があるので注意を。

■西貢について
 「西貢」という名称が最も早くに登場したのは明代初めという。東南アジアや中東沿海の国々に明への朝貢を求めた時、西貢の港湾にはそのための船が停泊した。「西貢」とは「西からの朝貢」という意味がある。

■香港国家地質区について
 「香港国家地質公園」は地質遺産の保護などを目的に政府漁農自然護理署やその他の政府部門、環境保護団体や学校や地域団体などの協力の下で設立され、2009年11月に開園した。香港国家地質公園は北部の「新界東北堆積岩園区」と南部の「西貢火山岩園区」に分類され、さらに特別地区や海岸公園などに分かれている。詳細はホームページ(http://www.geopark.gov.hk/)参照。
◇地質ガイドを依頼する場合は「西貢地質文化インフォメーションセンター」に問い合わせを。西貢地質文化資訊中心 http://www.ecotoursaikung.com/
◇西貢エリアについてもっと知りたい場合は、西貢区議会が作成したホームページが便利。西貢東西遊 http://www.travelinsaikung.org.hk/chinese/sea/
◇ボートの手配
 海逸活動策劃有限公司(Go Coasts Limited)  
 www.gocoasts.com
 猫記(Kitty's Boat)  9033-1083 /9357-5698
 ※主に橋咀州方面
 塩田梓村街渡服務(Yim Tin Ferry Service)
 www.yimtintsai.com  2791-6226 
 ※主に塩田梓方面